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「ポルナレフは結婚して穏やかな家庭を築いて孫に囲まれながら老衰しろ」ジョジョ第三部感想走書

ジョジョ第三部をアニメで観ています。観ている最中です。まだ最後まで観ていません。

具体的にはヴァニラ・アイス戦が終わったとこまで観ました。

ヴァニラ・アイス戦が終わったとこまで観ました。


よろしくお願いします。

1. アヴドゥル~スタンドは口ほどにものを言う

ヴァニラ・アイスの魔の手にかかり、散ったモハメド・アヴドゥル。
かつてクルセイダースで初めての犠牲者と思われながらも復活した男は、ナレーターさんのお墨つきで今度こそ死亡しました。

そのあまりにもあっけない最期。呆然としました。そして思いました。

「いや2回殺すならなんで1回生き返ったんだよ!?!?!?!」

頭ブラックジャック先生になりかけた私の頭ですが、いまでは彼の死を受けいれざるをえません。
なぜなら、ハングドマン戦とヴァニラ・アイス戦におけるアヴドゥルの2回の死は、両方がポルナレフやイギーらクルセイダースの仲間をかばってのものだったからです。

アヴドゥルはDIOの館に突入する直前、ポルナレフとイギーに「私はお前たちを助けない」「お前たちも私を助けないと約束しろ」と告げます。
他人の生死を気にするより自分の命を大事にすべし。すべてはDIOを倒すため……冷徹にすら思えるほど、冷静な言葉です。

私が思うに、アヴドゥルは自分を「冷静な男」あるいは「冷静であるべき男」と戒めていたのではないでしょうか。

たとえばハングドマン戦でポルナレフの単独行動を諫めたのはアヴドゥルでした。状況をしっかり考えたうえで、一歩引いた視点から俯瞰的に物事を語り、ときには戦う。

くせ者揃いのクルセイダースにおいて、アヴドゥルはそんなポジションにいた気がします。実際、私は最初にそんな印象を抱いていました。

件の「私はお前たちを助けない」も、そんな視点からの考えだったのでしょう。しかし、実際は違いました。アヴドゥルは仲間をかばって助けてしまいます。冷静さからもっともかけ離れた、仲間への想いに殉じたのです。

心の奥底に騎士道精神を秘めるポルナレフがシルバーチャリオッツを扱うように、スタンドは使用者の精神に影響を受けるようですね。

ならば、マジシャンズレッドに目覚めたアヴドゥルもやはり、本性は気持ちの熱い男、情に厚い男だったのではないでしょうか。

自分の言葉と命を裏切ってポルナレフとイギーを救い、遺体も遺品も残さず消えてしまったモハメド・アヴドゥル。彼の本質は、炎のように苛烈で激しい勇気だった。

ならば、2回死なれても納得せざるをえません。「まぁアヴドゥルだからしょうがねえか……」と。

でも荒木飛呂彦先生はアヴドゥルの命を使いまわせる茶葉かなにかだと考えておられる?

2. イギー~愚者でいるにはあまりにも高潔だった

イギーの第一印象です。いま振り返ってみると、すっかりイギーの術中にハマっていますね。

エジプトに突入してからクルセイダースの助っ人として参戦したイギーは、ンドゥール戦で無理やり参戦させられて以降、まともに戦おうとしませんでした。
あのアホ面でポルナレフをおちょくったり、散歩したり、オチ要員にちょっと噛んだりするばかり。

「なんでいるんだコイツ?」などと思ったりもしましたが、ペット・ショップ戦において彼の真意が判明します。

「俺は気ままにちょっと贅沢して、いい女と恋をして、なんのトラブルもねえ平和な一生を送りたいだけだ」

そのためなら偶然いっしょになったクルセイダースなんて知らんぷりだし、なんなら馬鹿な犬のフリをしてでも無駄な戦いは避けたい。
「平穏に生きたい」その願いのためにクソ犬を演じる犬だったわけです。愚者のスタンドを発現したのは、こういう部分からきているのかもしれません。

そんな彼もまた、ヴァニラ・アイスとの戦いで壮絶な死を遂げました。興味がなかったはずのクルセイダースの一員、ポルナレフの命を救うという、イギー自身の願いからもっともかけ離れた行動をもって。

イギーはだれに無理強いされたわけでもありません。ポルナレフの命がヴァニラ・アイスによって奪われようとしているその瞬間、彼自身の意思で最後の力を振り絞り、フールの砂の力でポルナレフを助けたのです。
ナレーションはこの時のイギーについて「魂がひとりでに動いていた。動かずにはいられなかった」と説明しています。イギーは彼自身の魂に殉じて自分の願いをなげうった。あの瞬間において、ポルナレフの命は彼のささやかな願いを上回ったのです。その黄金の精神で愚者は無理でしょ。ささやかな夢を、興味がなかったはずの人間のために捨てる。しかもその相手は、自分を「クソ犬」と言いながらなにかと絡んできたポルナレフです。その覚悟や想いはいかほどのものだったのでしょうか。

残念ながらイギーは犬なので、その考えはあまり表に出てきません。最期の時も、言葉を発することなく逝きました。彼は今わになにを思ったのでしょうか。

そして、イギーの魂が優先したのはなんだったのでしょうか。ヴァニラ・アイスに「野良犬に誇り高き魂はない」となじられた意趣返しか、顔によくおならをかましていたポルナレフへの仲間意識か。
はたまた、両方に向けて「俺はお前らの思い通りにならねえぜ」と中指を立てる野良犬の矜持か。

せめて、平穏とは程遠かった自分の一生をあの世で「それでも悪くなかった」と、そう思っていてほしいものです。

3. ポルナレフ~この素晴らしい呪いに祝福を!

以上。おしまい。



わかったよ……もう少し書くよ……。



かつてない強敵ヴァニラ・アイスと戦い、打ち勝ったポルナレフ。
それまでは呪いの人形だの鏡に隠れるド下衆だのトイレにキスさせようとする老婆だの妖刀こち亀だの、搦め手で襲ってくる敵ばかり相手にしていたポルナレフが一転、シンプルに強いヴァニラ・アイスと死闘をくり広げる。

それはまさに手に汗にぎる名勝負。これまで観てきたジョジョシリーズのなかでも、指折りのベストバウトと断言します。

しかし、名勝負の犠牲は大きかった。ポルナレフは勝利と引き換えに、アヴドゥルとイギーを失います。DIOの館に突入した2人と1匹は、気づけばひとりぼっちになってしまいました。

思ってみれば、ポルナレフはいつもそうです。幼い頃に親を亡くし、たったひとりの家族である妹はハングドマンの魔の手にかかり、天涯孤独の身に。
復讐の果てにクルセイダースという仲間を得たと思いきや、自分を救うために死んでいった。

生き残り癖、とでもいえばいいのでしょうか。ポルナレフは大事な人たちにいつも先立たれ、そして自分だけ残される人生を歩みつづけています。
あまりにも残酷で奇妙な運命ですが、さらに最悪なのが、ポルナレフ自身が自分の命に強く執着していない点です。

たとえばカメオ戦で、妹とアヴドゥルの土人形に襲われる最中、

「土人形とはいえ、こいつらにやられるなら悪くねぇ……」

と諦めます。ヴァニラ・アイスとの戦いでも万策尽きたと悟った瞬間、死を受けいれました。ハングドマンへの復讐においては「妹の仇がとれれば死んでもいいと思っていた」とすら語っています。

普段の陽気な態度とは裏腹に、明確な死の運命にはすぐ屈してしまう諦め癖を持つ。その二面性がポルナレフというキャラクターの根っこにあるのではないか。

しかし、運命はポルナレフを生かします。とことん生かします。その代償とでもいわんばかりに、ポルナレフの大切なものがドンドン死んでいく。なんだこの運命の名前は小林靖子か?こいつはここで死んだら楽だから生かしておきますのか?

残されるポルナレフにとって、この運命は呪いのように残酷です。真っ当でまっすぐな精神を持つ彼ならば、いつか生き残り続ける自分の運命に苦悩する日がくるかもしれません。

ですが、ポルナレフを残して死んでいった人々は、彼を呪いも恨みもしていない。少なくともアヴドゥルとイギーは、むしろポルナレフのために死んでいったはずです。

アヴドゥルはヴァニラ・アイスの奇襲を避けず、仲間をかばって犠牲になりました。

イギーはポルナレフの言うとおりじっとしとけばよかったのに、魂の赴くまま生き抜きました。

この1人と1匹は、自分ではなくポルナレフを未来に送るためにその命を燃やしたのです。先ほど出したワード「呪い」に対応させるなら、むしろ想いを継ぐ人間賛歌の歌をもって、ポルナレフを「祝福」したといえます。
少なくとも、私はそう願ってやみません。

DIOとの戦いでポルナレフが生き残るか、それはまだ私にはわかりません。
なのでこれはイフの話になりますが、もしポルナレフがDIOとの戦いに生き残ったなら、今度こそ幸福を掴んでほしいと思っています。

大切な人がだれも死なないフツーの日々を謳歌して「生き残ってよかった」と心から思える最期を迎えてほしい。結婚して穏やかな家庭を築いて孫に囲まれて老衰しろ。そんな人生こそを、あの騎士には送ってほしい。

少なくともありのまま今起こったことを話す役目は残っているので、まぁ大丈夫でしょう。たぶん。きっと。大丈夫だよな?頼むぞ?死ぬしかないなポルナレフとかほざいてるコマ見たことあるけど?信じてるからな!?

つーかヴァニラ・アイス戦でいきなり仲間が死にまくるのペース配分がおかしくないですか!?

最後に. 終わったよ……!

なにはともあれ、ヴァニラ・アイスとの戦いは終わりました。残る敵はDIOのみです。

ところで話は変わりますが、私はジョジョシリーズこそ初見な一方で、いわゆるネットミームはそれなりに知っています。
第三部でも「レロレロレロレロ」とか「花京院の魂を賭けよう」など、有名なネットミームがたくさんありましたね。

そんな第三部のネットミームでも、「ありのまま今起こったことを話すぜ」に匹敵するほど有名なコピペといえば、こちらでしょう。

花京院、イギー、アヴドゥル!

終わったよ……!

うろ覚えですが、だいたいこんな感じだったと思います。
そして44話まででイギーとアヴドゥルが死んだじゃないですか。




花京院死ぬの?

レロレロと気持ち悪くさくらんぼ舐めたりノホホノホーと笑ったり赤ん坊にコロコロコミック食わせたり実は自分の誇りを取り戻すためにDIOと戦う高潔な一面を持ってたりする花京院典明が死ぬの!?

ラバーズ戦で花京院のアシストが当然あるだろうと信じていて相撲の話を花京院に振ったりして断りなく花京院の魂を賭けたりして心の底から花京院を信頼しているのにその本心をひとっっっことも口に出さず花京院が復帰した時も「ん…」の握手だけですませた空条承太郎を遺して花京院典明が死ぬのか!?

スターダストクルセイダースの旅もあとわずかです。

この旅を終えたあと、私はいったいどんな感想を抱くのでしょうか。
もしまたこのような場を設けることがあれば、その時はまたよろしくお願いします。

ではまた。


※備考

https://togetter.com/li/1836407

 ジョジョ三部を観ているナマの反応はこちらから。

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