エドワード・ゴーリー作 「うろんな客」

コンバースのような靴をはいた謎の生物が表紙の絵本。エドワード・ゴーリー作 「うろんな客」。うろん、というのは「怪しい、うさんくさい」というような意味だそうで、本作を一言でまとめると「知らない客がいつのまにか家族になっていた話」。以下うろんな客のことを客と略します。

登場人物は客である変な生き物以外は皆人間。ちょっと陰気な雰囲気漂う普通の一家です。ある日とつぜん来た客は、家にかけ込むと鼻先を壁につけたまま直立不動の体勢に。一家は突然降りかかった不条理に抗議しますが、客には馬耳東風の様子。結局その日はあきらめることにします。

けれど次の日もまたその次の日も、客は帰ってはくれません。食卓につきパンと皿を食べいたずらをして回るかと思いきや、鬱々と居間の入り口に寝そべり一家の通行を阻みます。いたずらも客と呼ぶには度を過ぎており、本のページを破いたり懐中時計を湖に投げ込んでみたり……けれど一家は諦念の表情を浮かべながら客の行為に振り回され続けます。そんな毎日を過ごすうち、いつしか十七年の年月が経ってしまった、というのが物語のオチです。

本作はゴーリーの友人に捧げられたものですが、これは子どもをもうけることに対するゴーリーなりの比喩ではないかとその友人は語っていたそうです。そう考えると、不可解ではあるもののどこか愛嬌のある生物であることの説明がつくような気もします。

何度も読んでいるのに、たまに手に開きたくなる薄暗い魅力のある絵本。気になった方はぜひ一度手に取ってみてください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?