血液型あれこれ

※このノートは私が見聞したことに基づいて書いてはいますが、明確な文献を示すことはしていません。あくまで参考程度、または詳しいことを調べる足がかりにされることを推奨いたします。

この文章では、血液型についてあれこれ雑多に書いていきたいと思います。

早速、本題に入ります。
まずは血液型とはなんぞやという話です。
とりあえずwikipediaの定義を見てみると、
『広義の血液型とは、血液にみられる遺伝形質の個体差によって、さまざまに区別される遺伝的多型、あるいはその分類様式をいう』
とのことです。
・・・で、どゆこと?
どうやら、血液の成分には個人差があり、いくつかのパターンに分けられるということらしいです。

血液には中々いろんなものが入ってます。
例えば、赤血球(酸素を運ぶ、血を赤に染めるやつ)、白血球(細菌を攻撃するやつ)、血漿(血液の水分担当、水に溶けるものを運ぶ)などです。
色々種類がありますが、最も一般的なのはABO式血液型でしょう。

ABO式血液型は、赤血球の特徴で分類する方法です。
赤血球は袋の中にヘモグロビンというタンパク質が詰まったもので、丸くて真ん中がへこんだ、焼く前のハンバーグみたいな形をしています。

ちょっと脱線。
酸素を運ぶ機能にとってはヘモグロビンが大事なわけですが、ヘモグロビンは真ん中にヘムという鉄の原子を中心にした固まりをもち、ヘムの周りをグロビンというヒモ状のタンパク質がごちゃっと取り巻いています(ヘム+グロビン=ヘモグロビンとは直球なネーミングセンスですね)。
また、赤血球は意外と大きいので、そのままでは毛細血管に入れません。そこで、折りたたんだ状態になって入っていきます。このとき、真ん中がへこんでいることで変形しやすくなっているのです。


さて、血液型に関係するのは赤血球の外側です。赤血球の外側には、A型、B型と呼ばれる、アミノ酸と糖でできた長い鎖がついています。
そして、細菌やウイルスを攻撃するための抗体は、その持ち主の型以外を攻撃するようにできています。
よって、A型の人はB型に対する抗体を持っているし、O型の人はA型・B型の両方に対する抗体があります。

もし、A型の血液をB型の人に輸血すると大変なことになります。
B型の人が持つ抗体がA型の赤血球に反応して取り巻きます。更に、抗体は2つ以上の赤血球にくっつくことができます。その結果、
aーAーaーAーa・・・(A=A型赤血球、a=A型に対する抗体)
のように赤血球がつながって凝固してしまいます。すると、それが血栓となって血管を塞いでしまい、酸素も栄養も届かなくなるという訳です。

こういうことが起こらないようにするには
A型→A型、AB型
B型→B型、AB型
AB型→AB型
O型→O型、A型、B型、AB型
という組み合わせでしか輸血できないことになります(現在は、原則として同じ血液型で輸血します)。

なお、日本ではA型:40%、B型:20%、O型:30%、AB型:10%くらいの比率となっています(兵庫県赤十字血液センターのHPより)。
が、世界的にはかなり偏った分布をしており、ネイティブアメリカンでは70%がO型だったり、インドでは40%がB型だったりします。

また、Rh+、Rh-という名前が付いているはずです。こちらも赤血球の特徴を示します。もし、Rh+の血をRh-の人に輸血すると凝固や溶血(赤血球が壊れること)を起こします。
日本人のほとんどはRh+ですから、Rh-の人は輸血を受けるのが難しいことになりますね。
一方、いわゆる白人ではRh-が10%以上もいるのでRhはとても重要になります。

しかし、もっとレアな血液型もあります。
ボンベイ型という血液型はO型に近いのですが、通常どの血液型にもあるH物質というものに反応してしまいます。
よってO型の血液を輸血することはできず、同じボンベイ型でしか輸血できません。
しかし、ボンベイ型の人は約30万人に1人という珍しさです。
血液の確保が非常に難しいと言えるでしょう。
ちなみにボンベイ(現ムンバイ)はインドの街で、ここで初めて発見されたので名前がついています。

さらにレアなのが「黄金の血液型」です。
正式名称は「Rh null」といいます。nullはヌルと読み何もないことを意味します(プログラミングでもよく使いますね)。
何がないかというと、抗体のターゲットとなる抗原をもたないのです。
よって、どの血液型(ABOだけでなく、Rh-やボンベイ型、その他の稀な血液型)にも輸血可能となります。
まさに万能の血液といえるでしょう。
しかし、その人数は世界全体で50人ほどという、ざっくり1億人に1人というレアっぷり。
一方で、この血液型の人に輸血できるのは、やはり黄金の血だけなのです。
ある人は、輸血が必要にならないよう細心の注意を払って生活しているという話を以前に聞いたことがあります。

ここまで科学的に血液型を考えて来ましたが、次はスピリチュアルな方面の話をしたいと思います。
上記のように、血液型の重要性のメインは輸血の可否を調べることにあるわけです。
一方で、エ○バの証人のように命に関わる事態でも輸血を禁じる宗教があったり、「血の伯爵夫人」と呼ばれ美貌のために血を求めたバートリ・エルジェーベトであったり、血に神秘性を求めることも多かったようです。

現代日本において、血に関する最もポピュラーな俗説はいわゆる「血液型占い」「血液型性格診断」と呼ばれるものでしょう。

ABO式血液型は、1900年にオーストリアのラントシュタイナーが発見しました。
発見のきっかけは、先に書いたように二種の血液を混ぜると凝固することを観察したものです。
ところが、白人による有色人種への苛烈な差別があった時代、血液が性格にも影響するのではないかという考えが生まれました。
その結果、白人と有色人種で血液型の違いが研究されました。血液型の分布には地域差があるので、「白人に多い血液型は気質が優れており、少ないものは劣っている」とまことしやかに語られました。
後にナチスのゲルマン民族至上主義の喧伝にも用いられたようです(こういう調べ物するとかなりの高確率でナチスが出てくる気がする)。

一方、日本ではヨーロッパとはまた別に、性格と血液型の関係が調べられました。
初期に血液型と性格の関係を研究し、大きな影響を与えたのは古川竹二という心理学者です。
彼は1920年代に研究論文を発表し、1932年に『血液型と気質』という本を出しました。
当時の日本陸軍においても、血液型によって兵士に適格かどうかを判定していたそうです(ほどなくして中止されたようですが)。
ただし、古川の調査では調査対象の人数が全く足りず(30人以下とも)現在では信頼性はほぼ皆無とされます。
しかし、こうした戦前の血液型性格診断は当時から批判されており、その後廃れていました。

現在の性格診断につながっている大元は、能見正比古という作家です。
彼は1970年代に『血液型でわかる相性 伸ばす相手、こわす相手』など、20冊以上も血液型についての本を出版しました(よくそんなに書けたな)。
これがメディアに取り上げられ、血液型性格診断が広く知られるようになったわけです(50年生き延びるとはかなりしぶとい)。
なぜこんなに生き延びたのか、それはこの本だけでは説明がつかないでしょう。やはり、テレビや音楽、著名人の信奉者が繰り返し発信してきたからでしょうね(wikipediaをみると詳しく挙げられてます)。

血液型性格診断については、現在では大規模な調査で否定されています。
そもそも血液型は、この文章の前半に書いたとおり、赤血球の外側にあるタンパク質の種類を表しているだけです。
まぁ大抵の人は、遊びやコミュニケーションの手段として楽しんでいるだけでしょうから、別に目くじら立てることもないとは思います。

むしろ、ほとんどの人が自分の血液型を知っていることは、緊急時(事故現場で直ぐに輸血が必要な場合など)にスムーズな輸血につながる良いことなのかもしれません(性格診断のないアメリカでは基本的に自分の血液型を知らないのが普通らしいです)。

以上、つらつら書いてきましたが、何か新しいことを知る切っ掛けとなれば幸いです。
拙文にお付き合いいただきましてありがとうございました。


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