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Happiness Engineerになって1年が過ぎた

Happiness EngineerとしてAutomatticに入社してから、あっという間に1年と数ヶ月。Hiringされるまでの道のりも含め、まとめようと思いつつ、中々筆が進まずにいました。が、英語ではこのサイトのように、Happiness Engineerという仕事を知ってもらえるような記事がいくつかありますが、日本語で書くことで日本人の多くの方にもこの仕事について知ってもらえる機会になるんじゃないかと、そろそろと思い、この記事を書いています。

Automattic? Happiness Engineer?

Automatticは、WordPress.comJetpackWooCommerceなどを運営する米企業で、世界中に住む868人(2019年4月5日時点)が各地からリモートワークで働いています。

社内にはもちろん多種多様な職種がありますが、その中でも、俗に言うカスタマーサポートにあたる職種がHappiness Engineerです。

ユニークな働き方、福利厚生

各社員は前述の通り、世界各地に散らばっています。つまり、インターネットが繋がるところであればどこででも働くことができるのです。また、ポジションや部門によって多少異なりますが、働く時間帯も自分が好きなようにコントロールが可能です。例えば、朝早くに数時間働いて、途中かなりの時間をおいて、また夜遅くに数時間働くということも可能です。

また、ユニークな福利厚生としては、無制限の有給休暇、5年に1度の約3ヶ月のサバティカル休暇、ホームオフィス機器(デスクやチェア、コンピューター)の提供などがあります。

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Happiness Engineerの仕事

Happiness Engineerが提供するカスタマーサポートは主に前述のWordPress.com、Jetpack、WooCommerceについてで、私はWordPress.comの有料プランのユーザーの方々のサポートを主にしています。

WordPress.comは、インターネット上のすべてのサイトの3分の1以上のサイトで使用されていると言われるオープンソースソフトウェアWordPressを使用したレンタルブログサービスで、WordPress.comを使うことで、簡単にブログのみならず、多種多様なウェブサイトを作成し、公開・運営することができます。

私は、Happiness Engineerとして、1日の大半をライブチャット、Eメールでのサポートに費やしますが、時にスクリーン共有をしながらのビデオセッションを行うこともあります。ライブチャットとEメールが主ということで、自ずと書くという作業が1日の大半を占めるので、カスタマーサポート=テレフォンサポートと思われがちですが、それとは少しイメージが異なります。

また、ユーザーからどんな質問があるかと言えば、サイト作成に関わるということで、多種多様な質問がよせられます。ドメインについて、サイトのカスタマイズについて、サイト内の不具合についてなどなど。そういったカバー範囲の広さから、1日を通して新しいことを学ばない日はほぼないと言っても過言ではありません。

勤務体系は、基本的に1日8時間×週5日。Happiness Engineerは基本的にシフト制なので、朝起きてから自由に1日のスケジュールを組むといったことはできませんが、あらかじめ1日の中でその8時間をどこに設定するか、また、週の中でどの日を休みにするかは自分で自由に決めることができます。ですので、ライフスタイルやステージに合わせて働くことが可能です。それでも現在、WordPress.comではライブチャットならびにEメールサポートにおいて、24/7サポートを実現することができています。それは、Happiness Engineerである各社員が世界の色々なタイムゾーンから仕事をしているので24時間をカバーできること、また、独自のスケジューリングシステムによるところが大きいと思います。昨年、社内で使用され始めたHappiness Engineer向けのスケジューリングシステムは最近、プロダクトとしてHappy Toolsという名前で一般公開がされました。

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求められるスキル

英語 – 社内でのコミュニケーションは常に英語で行われます。情報共有はSlackや無数の社内ブログを通したテキストベースなので、会話力というよりも、英語で読み書きができることが必須となります。また、Happiness Engineerとしてカスタマーサポートで使用する言語も、基本的に英語(+ スペイン語、ポルトガル語)となるので、やはり1番大きなポイントは英語です。後述しますが、私も入社する上で英語が1番のネックになりました。今でもまだまだ苦労する場面が多々あります。

WordPressに関する知識 – WordPressを使用したサイト運営をサポートするので、もちろん、WordPressに関する一定程度の知識、また、HTMLやCSSなどの基本的な知識が求められます。ただし、上述の英語に比べれば、これは入社後もどんどん学んでいけることなので、応募時に必ずしもかなりの高い知識レベルが求められるわけではなく、それよりも、後述する採用プロセスを通して、常に新しいことを学ぶことができる姿勢自体が求められるような気がします。また、Automatticのクレド(社訓のようなもの)には、I’ll never stop learningという一句が含まれています。そのことからも、常に学ぶ姿勢が重視されると言えます。

忍耐 – これは他のカスタマーサポート職と共通することですが、ユーザーが抱える問題を理解すること、解決のために様々な調査をすること、また多くのことを説明することには、忍耐が必要となります。

リモートワークって結局どうなの?

Automatticに入社してから、俗に云う、リモートワークという形で仕事をしています。基本的には家で仕事をしているので、通勤フリー。東京に住む自分にとっては、何よりも朝と夕方の満員電車に乗らなくてよくなったのは、一番大きな点です。また、通勤時間がなくなった部分、自由に使える時間が増えたのも大きいです。

あとは、インターネットとパソコンがあれば、どこでも仕事ができるというのはとても大きく、例えば帰省したいとなっても、そのために長期の休みを取る必要がなく、働きながら帰省するといったことができるようになりました。特に、自分の場合は、妻がカナダ人のため、妻の実家がカナダということもあり、今までであれば里帰りに数週間の休みを取らなくてはいけなかったのが、里帰りをしつつ、長期休暇を使うことなく働きながら帰省するといったことができるようになりました。これは私たち夫婦にとって、とても大きな点でした。

とはいえ、もちろん、すべてにおいて、リモートワークが優れているということはなく、もちろんデメリットがないとは言えません。そう、人生はトレードオフ。毎日、同僚と顔をつきあわせて仕事をするということがなくなるので、もちろんそういった意味での寂しさはつきものです。Automatticではほとんどのチームが週一度のビデオ会議をしていますし、年にチームでの合宿と全社合宿で、実際に同僚と会う機会が年に2度あるので、そこでバランスが計られていますが、どうしてもある一定の寂しさ、孤独感はつきものです。また、気をつけないと運動不足になりがちというのは、事前に色々な記事を読んでわかったつもりになっていたものの、実際1年以上働いてみると、やはりそれは間違いなく、かなり意識的に運動を取り入れないとふつうに運動不足になります。

応募までの経緯と採用プロセス

ここでは、Happiness Engineerとして採用されるまでの経緯を紹介しようと思います。このポジションに興味がある方に少しでも役に立つ情報があればいいなと思います。

そもそものWordPressとの出会いは大学4年の頃。幼い頃から音楽を続けてきて、ある拍子に音楽活動を止めた時に、次にエネルギーを注ぎ始めたのがWebデザインで、その時にWordPressと出会いました。それがおよそ6年前ぐらい。そこから、作成したほどんどのサイトにWordPressを使用してきたので、WordPressについてのある程度の知識はありました。ただ、「WordPressという名前だけは聞いたことがある!」という人のほとんどがおそらくそうであるように、しばらくはWordPressの創始者が誰なのかも知らなければ、Automatticという会社の存在自体も知りませんでした。

しばらくして、Automatticの存在を知ってからも、こんな面白い会社があるんだーと思いつつも、その当時、応募してみようとはまったく考えもしませんでした。ちなみに、大学卒業後は出版社にてWebデベロッパーとして1年勤務後、Appleに転職をしました。そんなこんなで2017年に入った頃、ある日妻が、働きながら世界一周をしていたある夫婦の動画を私に見せてきました。そこから、ふとAutomatticの存在を思い出し、1ヶ月後にはすでにHappiness Engineerのポジションに応募をしていたのです。

Automatticの採用プロセスは、ポジションによっても多少異なりますが、基本的には書類選考→数回のテキストベースのインタビュー(インタビューの合間に場合によっては課題)→トライアルの流れで行われます。レジュメを出してから正式に採用されるまでの間、すべてはSlackを使用したテキストベースのやりとりで行われるため、声も聞かれることもなければ、顔を見られることもありません。まず、そんな採用プロセスを経験したことがない自分にとってはまずこの時点で驚きの連続でした。

採用までの道のり

2017年の始めに勢いで応募した私ですが、結果はいかに。書類選考を突破し、インタビューと課題をしたものの、最終段階である賃金が発生してのトライアルまでには至りませんでした。そう簡単にはいきません。落選の理由としては、英語の問題であるとはっきりその当時の担当者に言われました。もちろん、落選理由が伝えられない場合もありますし、それはケースバイケースです。

その後、自分でコツコツと英語を勉強しつつ、毎日1,2時間はWordPress.comの英語版サポートフォーラムでボランティアとしてユーザーからの質問に答える日々を半年ほど続けました。英語版サポートフォーラムはHappiness Engineerを目指す人にとっては、WordPress.comというプロダクト自体を学ぶいい機会になりますし、Happiness Engineerとしての仕事を疑似体験できる場です。そのため、採用ページの中でもフォーラムでの応募前のボランティア活動は推奨されています。

そんなこんなで夏に2度目の応募をしました。書類選考、インタビューと同じプロセスをもう一度進み、トライアルに到達することができました。今振り返ってみると、トライアルに進めるとわかった時の嬉しさは、採用が決まった時のそれよりも大きかったような気がします。

ここでトライアルについて説明しますが、トライアルでは、時給ベースの賃金をもらいつつ、フルタイム社員が実際にしている仕事を実際にすることになります。Happiness Engineerのトライアルでは、実際にEメール、ライブチャットを通して、WordPress.comのユーザーサポートを行います。トライアルがあることで、応募者にとってはその仕事が本当に自分に合ったものかを見分けることができますし、採用側にとっても、応募者の実際の仕事ぶり成長ぶりを直に見ることができるので、採用した後に適性がないことに気づいたなんていうミスマッチも起こりにくくなります。そういう意味では、お互いにとってとても合理的なシステムです。また、もちろん、多くの応募者がフルタイムの仕事をしながらトライアルを受けるので、週に例えば40時間をさかなければいけないといったことはありませんが、一定程度の時間のコミットが求められます。また、内容についても、トライアルの応募者には、フルタイムの社員とほぼ同様の権限が与えられるため、そこにはフォーラムでボランティアをしていた時とは全く異なる責任と緊張が一気にのしかかります。

トライアルはおおよそ最長1ヶ月に及び、私もフルタイムの仕事を続けながらのダブルワークとなりました。また、1ヶ月に及ぶというのも、それはあくまで最後まで到達すればの話なので、いつトライアル終了を告げられるかはわかりません。正直なところ、この1ヶ月は、精神的にも肉体的にもかなりタフなものがありました。肉体的には単純に睡眠不足が重なり、また、精神的にもいつトライアルが終わってしまうかと思いながらの日々だったので、ストレスを感じる日々でした。

こう書いてしまうとトライアルの印象が悪いものになってしまいますが、これはあくまで1つの側面であり、トライアルを通して得られるフルタイム社員からのサポートはとても手厚いものがあります。Automatticでは、全体で常に同僚をサポートするという意識が高く、特にHappiness Engineerは仕事の内容上その意識はさらに強いので、トライアル時にわからないことがあれば、常にその時にオンラインでいるフルタイムのHappiness Engineerからサポートを受けられる環境にありました。そういう意味ではとても恵まれていましたし、厳しいトライアルを乗り越えられたのも多くの同僚のサポートがあったからに他なりません。

こうして、最後までトライアルを無事終えることができ、2017年の冬に入社しました。

Are you interested?

ここまで長々と書いてきてしまいましたが、いかがでしたでしょうか?もし、こんな働き方、そしてAutomatticという会社に興味があれば、ぜひこちらのページを一度チェックしてみてください。Happiness Engineerのみならず、その他多くのポジションで常にHiringをしています。

自分にできるの?と思っている方。私もまさにそう思ってました。また、特に日本に住む私たちにとって、おそらく一番ハードルとなるのは英語だと思います。私自身も留学経験、海外での在住経験もないため、正直ここまでかなり苦労しましたし、今でも現在進行形で苦労しています。それでも、チャレンジすることで失うことは何もありませんし、この記事によって、この仕事やポジションに少しでも興味がある方の精神的なハードルが少なくなればいいなと思います。もちろん、単純に日本人のHappiness Engineer仲間ができたら嬉しいなという勝手な希望も含まれていますが!

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