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ハイゼットの思い出

うちの親父様は若い頃、ジャガーに乗っていたが、
建設業ということもあってかハイゼットにも乗っていた。
そして私はとても高級な装備がついているジャガーより、
エンジン音がすごい音を立てる2人乗りのハイゼットのほうが好きだった。

自分が5歳ぐらいの小さい頃なので、はっきりと覚えていないが、
「この車はクーラー無いの?」と聞いた。そうすると親父様は
「あるよ」といってボタンを押すと、パカン!っといって
前側の通風口が開き、そこから冷たい風が送られてくるのだ。
なるほど、これはクーラーがいらない。

都会に来てからは車に乗る機会も減ってしまった。
車を維持するだけのお金を持っていないし、
たまに遠出をしたいときにはタイムズを始めとする
レンタカーに乗ればよかった。

しかしそういうレンタカーは総じてATである。
エンジン音も静かでエコ対策も十分に考えられている。
こういう車に乗ると眠くなる。操作が単調すぎるのだ。
操作することはアクセル、ブレーキとハンドルだけ。
乗り心地は快適なのかもしれないけれど、
どうも「乗せられている」という感じがする。
なんとなくのフィーリングで運転している。
車両全体に気が張られておらず、何かにぶつかったとしても
「あら、ぶつかったわ」みたいな、
上の空みたいな気持ちになってしまっている。
安全安全と言い過ぎた結果、そんな事になってしまった様に感じる。

やっぱりMTによるギア変動であったり、
少々うるさいぐらいのエンジン音があってこそ
「クルマに乗っている」という感じがする。
そういうクルマは「自分がなんとかする」という意思を持てるので
運転も楽しいと思う。

これから車はもっと安全に安全を重ね、
きっと人間が運転することも危険とみなされ、
全て自動制御の時代がくると思う。
多少の制御トラブルで自動運転が裁判沙汰になるかもしれないが、
人間が運転するよりかはずっと事故も少ないだろうし、
駐車場を作らなくていいならお店ももっと広くできるし
いいことずくめだ。

でもいつか、あのハイゼットのパカッと開いた天然クーラーの爽快感を
たまに思い出して、少し悲しい気持ちになるのかもしれない。

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