『実話怪談～無理心中～』

或る男性が吊橋から転落し
首の骨を折り即死した。

警察は単なる事故死で処理、
事は公になる事は無かった。

だが悲劇は之では終わらなった。

其から毎年夏になると同じ場所で
同じ様に転落事故死する者が続出、
吊橋管轄区域の市も自体を重く見て
吊橋周辺に鉄柵を施す対策を講じるも
効果薄く転落事故死は後を絶たなかった。

噂を聞きつけた或る僧侶がやってきた、
橋の中ほど迄歩を進めそこに鎮座し、
いきなり読経を始めたのである。

すると吊橋は激しく前後左右に揺れ始め
その僧侶を奈落の底へ突き落とそうとした。

僧侶は足を踏ん張り尚も読経を繰り返す、
更に激しく橋は激しく前後左右に揺れ、
何とか僧侶を振り落とさんと必死である。

成り行きを見守っていた町の住民方々も、
事の重大さを理解したのか一人一人と橋へ
近づき両端から縄梯子を支え僧侶が落ちぬ様
住民総出で懸命に橋を支えるようになった。

すると絶叫に近い女の声が橋獣に響き渡り、
その後ピタッと橋の揺れは収まったという。

後から解った話だが随分昔にこの橋を渡る
一組のカップルが強風に煽られ彼女は落下、
彼氏は懸命に手を伸ばすも届かず転落死した

彼は失意のどん底に突き落とされ
何度も自殺未遂を図るも失敗に終り、
程無くして新たな出会いを経て結婚、
二度と吊橋に近づかなくなったという。

悲恋話を聞いた心霊マニアの何人かが
この橋を訪れ彼女の心にシンクロした為に
彼女はその人達と『無理心中』を図っていた

だが僧侶の読経により彼女は昇華され、
自縛地から解放され天界へ召されたという。

謎の転落事故が多発する地域にはこういう
特異な無理心中事件も起こっているという。

くれぐれも面白半分に訪れたり
死者とシンクロせぬ様御用心。