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大きな絵とアールブリュット

僕は自分の絵をアウトサイダーアートだと定義している。同じように使われる言葉としてアールブリュットがある。

アール・ブリュット(Art Brut)は、フランス語で「生の芸術」を意味し、特に正規の美術教育を受けていない人々や、社会の主流の文化から隔絶された人々によって制作された芸術作品を指します。主に、精神疾患を持つ人々や、障害を持つ人々、または独学で創作を行う人々が手掛ける作品がこのジャンルに含まれます。アール・ブリュットは、技術的な制約や美術史に囚われることなく、純粋で本能的な創作を特徴としています。

この概念は、フランスの画家ジャン・デュビュッフェ(Jean Dubuffet)によって1940年代に提唱されました。彼は、主流のアートが形式や伝統に縛られていると感じ、そうした枠にとらわれない「純粋な表現」にこそ、真の芸術の価値があると考えました。デュビュッフェは、精神病院の患者や孤立した生活を送る人々の作品に興味を持ち、その独創性や強い表現力を評価しました。

アール・ブリュットの作品は、一般的に非常に個性的で、しばしば奇抜なイメージや独特の素材が用いられます。

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新しく大規模なアールブリュットのコンクールが行われていたことを最近知った。審査員の一人のインタビュー記事を見つけて興味深いと思った。

今回設けた審査基準をどう定義するのか、アール・ブリュットとメインストリームアート(現代アート)の境界線をどこに定めるのか、そして我々が行っていることの本質的な意味とは何か。

アール・ブリュットと現代アートの境界線は、曖昧なんです。誰かが「これはアール・ブリュット、これは現代アート」と教えてくれない限り、きっと区別がつかないでしょう。一方で「アール・ブリュットはいまアート史に組み込まれている、まさにその瞬間にある」という点では全員の意見が一致しました。

つまり、アート史には、欠落している章があるのです。それは、メインストリームから外れた、周縁にいる人々によるアートのことです。20世紀初頭のパリではアフリカ美術や世界各地の美術がキュビズム、アーティストに影響を与えましたが、同時に「精神病患者の芸術」と呼ばれていたものも影響を与えていました。

しかしアート史ではこの後者の事実が触れられて来なかった。ようやくいま、新しい章として加わろうとしているのです。私たち審査員は、その新しい章に関わっているのだと強く確信しました。

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僕は絵を描きたいから描いている。その姿勢はアールブリュットの精神に通じていると思う。
描きたいから描くのは当たり前のことのように思われるかもしれないが、そうとも言えるし、そうとも言いきれない部分があることも事実だ。
自分がやりたいようにやるということは、常識的な観点から見たりそれを社会のシステムの中でやろうとすると、頭がおかしいと思われることだってある。
アールブリュットが芸術のメインストリームになるということは、ただそうなるだけではなく、描きたいから描くという姿勢がより尊重される価値観へと社会が変化していくことなんだと思う。
描きたい絵を描く行為とは、つまり心を表現することなのかもしれない。心を表現すれば、それは心と繋がることになる。それによって、時には自分と向き合える機会を得たり、お金では計れないような喜びを感じられることもあるだろう。
アールブリュットがアート史の新しい章に加わるということは、今までよりも心の制約が無くなっていく世界になるということ。障害という言葉の意味も変わっていくのかもしれない。
リアルタイムで心を表現し発信する世界で、安心を感じながらあらゆる人間性、個性を出して遊ぶ。
そこに共時性が生まれ、それ自体が芸術の価値となっていく。
それを後押しするように、今後テクノロジーが指数関数的に進化していく。心の制約が極限にまで無くなっていく未来は、一体どんなものになるのだろう。

そんな空想を巡らした後で現実的な視点に戻った。アールブリュットのコンクールに応募しようと思った。まだ来年に開催されるかわからないけど、気持ちの問題だ。
早速大きい紙をネットで注文した。コンクールだから大きい絵を描こうと瞬時に考える所が自分らしさを表している。本当は最大サイズの120号キャンバスにしようと思ったが、数万円することと部屋に入らない可能性が高いから断念した(脚立などを使ってベランダから入れることや様々なことを空想した上で)。
絵を描くスペースを作る為にホームセンターで180×90cmのプラダンを二枚買って、騒音対策として壁との間に挟むスポンジも買った。取り付け作業は一人では苦手過ぎてできないので手伝ってもらった。

制約に囚われることのない自由なアールブリュットのコンクールに応募するために、一つだけ必要なものがある。それは精神障害者手帳だ。たぶん取得できると思うけど、精神科の先生とのコミュニケーションが消極的だったので一応自分の作品についての簡単な資料をスマホで作成した。あとはセブンイレブンでプリントすれば良いだけ。

いつも通りどんな絵が出来上がるかはわからない。どれくらいの期間で完成するかもわからない。

涼しくなってきたら散歩の量を増やす。体力をつける。写真を撮る。たぶん小さい絵も描く。そんな感じがする。自分の人間性を紙にぶつける遊びをする。

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