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ヒップホップ専門フェス

国際展示場駅に着くと、キャップ被ってタトゥーしている若いお兄ちゃんや、黒いニットワンピの女性などが、LIVE会場に向かって蟻の行列みたいに向かっている。彼は今日初めてヒップホップのライブにいく。しかしお目当てのアーティスト以外、誰一人知らなかった。まるで不思議の国のアリスのように、知らない世界に堕ちていくのだ。

会場に着くと、すでにライブは始まっていた。彼は指定席に座っると、両脇がカップルだっま。右の男性はグッチの短パンとグッチのサンダルを履いていた。左の男性は六本木の一億円くらいする不動産をネットで観ていた。諭吉と諭吉にサンドイッチされているみたいだ。

LIVEは予想以上の演出だった。大量のビームライトが観客席に発せられて、スクリーン演出も凝っていた。音楽に合わせて火や煙も出ている。

ただ肝心な歌が、彼は初めてだったので何を言ってるかわからなかった。メロディがない分、歌詞がわからないと、ただ叫んでいるようにしか見えない。

そんな彼もいろんなラップを聴くうちに、音楽性も大事だけど、少しずつラッパーの生き様を愉しむものなのかもしれないと思えるようになった。メロディがない分、それがダイレクトに伝わる。

そして生き様が伝わってくると、全く知らなくても伝わってくるものがある。気づけばノっていた。生き様やスタイルは比較するものでもないし、正解不正解もない。人気度はあったとしてもそこにヒエラルキーが存在しない。

ただ好きか嫌いか、カッコいいかダサいかで、モノサシは無限にある。それでいいと思ったし、それがいいと思った。