【元サッカー選手 早坂良太の自伝:サガン鳥栖①】
【プロ選手】
念願のプロになることができました。
しかし、ここでまたもや新たな課題にぶち当たります。
それは、小学生の時から卒業文集で書いていた「夢」を達成してしまったということです。
夢=サッカー選手
達成してしまった自分は次に何を目指すべきなのかと。
新しい夢や目標が必要でした。
ここでの思考がコーチングをする時に最も重視している、目標設定に繋がっています。
私は自分はメンタルは強くないと思っていて(人前で喋るのも苦手でしたし、選抜に参加する時もとても緊張していました。また失敗したら引きずることもありました。)学生の時からメンタルや心理学の本を読んだりしていましたが、あまり実践的に納得できるものはありませんでした。
ただ徐々に、脳科学からアプローチする研究に関する本なども出始めていて、自分の中で納得いくものになってきました。
そこで、それらを参考に自分自身の経験を当てはめ、自分なりに目標シートを作成しました。
その目標シートを書く際に心掛けたのは、理想の自分と目標設定の具体性とワクワクするかどうか。
具体性では、まず【2年間でJ2で活躍し、J1のチームに移籍し、J1で2年活躍したあとは海外に挑戦し、30歳で引退する】と目標を立てました。
エリートでもなく、すごい能力を持っていない私のような選手は、他の選手と同じようなことをやっていたとしても生き残れません。
日々のこなす量を増やし、質を上げて戦わなければなりません。
そのためには自分が最も成長できるであろう、具体的な期限をもうけ、徹底的にやる必要があると感じていました。
6年間の大まかな目標設定のあとは徐々に短い時間に小さな目標を落とし込み、最終的には1日1日の一瞬にまで、コミットできるようにしていきます。
もちろん人間はそんなに強くないので、全てできるわけではありません。
その事実も受け入れるために、1日の終わりにできていたかを振り返ります。
人にはクセや得意不得意、好き嫌いが必ずあるので、それらをしっかり認知し受け入れて対策します。
このくらい緻密に設定するとやはり、日常に小さな差が生まれます。
そして長い時間軸で見た時に、それは大きな差になっています。
私がプロになった1年目は、サッカー人生において、トレーニングの負荷が一番高い1年でした。
3部練習から始まり、シーズン中でも関係なしに2部練習もしていました。
(チームの方針としては、この年と次の年で土台を作って、3年目で勝負するつもりだったそうです。)
血尿が出たり、オーバーワークになった選手がいたり、移籍する選手もいました。
私は大企業の安定したサラリーマンを辞めて、自分の夢に挑戦しました。
新しい具体的な目標も立てました。
ここで諦めていたら、自分の決断を自分で否定してしまうことになってしまいます。
厳しい道に挑戦した自分を肯定するために、目標を達成する必要がありました。
目標のおかげで、体が限界の時に、もう一歩を出すことができます。
当時、チームは表面的にはJ1昇格を目指していると公言していました。
しかし内部にいた人間としては、まだまだ足りないものが多いと感じていました。
チームのメンバーはJ1で試合に出れなくて、レンタル移籍で加入していたり、毎年半分程メンバーが変わるようなチームでした。
これでは継続的な成長にはつながりません。
選手たちの感覚としてはここで個人的に活躍して、J1のチームに移籍することが優先順位として高かったと思いますし、自分自身も1年目はそう考えていました。
しかし、社長が変わったり、色々な環境が変化することで、チームもこんなに変化するんだということを実感することができました。
色々なことが重なり、2年目には見事にJ1にチームとして昇格することができました。
スポーツの素晴らしさを表現していて私の大好きな写真。
(佐賀新聞社提供 著作物利用許諾申請書https://www.saga-s.co.jp/list/company/copyright)
【Key Word】
大きな目標の抽象度と小さな目標の具体性、言動と行動の一致
【あとがき】
私の経験上、誰かのせいにしていたり、環境のせいにしてばかりいる人はサッカー選手としてキャリアを上手く歩めていない人が、ほとんどだと感じています。
人は自分の状況が良い時には、良い振る舞いができます。
本当の人の本質が現れるのは、状況が悪い時です。(試合に出れない。怪我をしてしまった時など。)
プロ選手になる人は、大体それまでずっと中心選手として試合に出ていました。
しかし、プロの世界になるとそのような選手の集まりで、その中から試合に出れる選手が決まります。
一握りの選手を除き、晩年の名選手にも起こりうるように、試合に出れないという状態が必ず生まれます。
その時に自分と向き合わず、自分以外の外的要因に矢印を向けている人は、監督が変わったり環境が変わると、安定したパフォーマンスが発揮できなくなります。
試合に出れていない時のその選手の振る舞いや言動に注目すると、その人本来の、人間が見れて面白いと思うこともありました。
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