【元サッカー選手 早坂良太の自伝:北海道コンサドーレ札幌】
【目標修正】
プロになる際に立てた30歳までの目標ですが、J1での戦いの充実度が高く、〔昇格2年後に海外移籍する〕という目標は修正していました。
しかし、前回述べたように、現状に違和感を感じ出してる自分がいたので、30歳を過ぎて、やはり新たな挑戦をしてみたい、という気持ちが徐々に復活してきました。
代理人にお願いをし、海外移籍を模索しだします。
しかし、上手く話がまとまらず海外移籍は実現しません。
そんな中、J1昇格を決めた北海道コンサドーレ札幌からオファーが届きます。
チームとして戦って、今度こそはJ1残留を果たしたい、というミッションに心動かされたのと、母方の故郷というのも自分の中で縁を感じ、移籍を決断しました。
1年目は四方田監督の元でチーム一丸で戦い、残留することができました。
【ミシャとの出会い】
2年目には、広島、浦和と非常に魅了的なサッカーをしていたミハイロ・ペトロビッチさんが監督として就任しました。
あの攻撃的なサッカーを、コンサドーレにどう落とし込むのかが、とても楽しみだったのを覚えています。
そして、現役最後にミシャの元でサッカーができて、本当に良かったと改めて振り返っても思います。
サッカーの楽しさ、得点をとるというサッカーの本来の目的に、価値の高さを持つことを思い出させてもらいました。
とても情熱家で、愛情のある父親のような存在で選手に接してくれる、人間味がある人です。
勝負の世界では、その人間味が邪魔になってしまうことがあるかもしれませんが、どこかドライな契約社会になってしまいがちなプロの世界で、貴重な存在だと思います。
現役最後の2年間はFWからDFまでGK以外の全てのポジションをやらせてもらいました。
試合当日にポジションが決まることも何回もありましたし、試合中の変更も多くありました。
でも、とても楽しかったです。
その理由として、どのポジションであれ、目的は得点を取りにいくということを最優先にしているからです。
DFであってもチャンスがあればドリブルで前に運ぶ、ゴール前に飛び込むといった、以前の私のサッカー感では選択しなかったことをさせてもらいました。
それでもやはり染み付いたサッカーはなかなか抜けず、リスクを意識してしまうところもあります。
でも、その自分自身を、この年齢になっても変えれる挑戦を楽しんでいました。
監督に抜擢してもらった若手の選手が伸び伸びと挑戦し、挑戦することを肯定してもらうことで、さらに自信を持ち結果を残す。
ミシャが最初に来たときは、このメンバーであの攻撃的なサッカーができるのか少し懐疑的に見ているところもありました。
でも、ミシャはミーティングのたびに「お前たちはできる!」「責任は俺がとる!」ということを一貫して言っていましたし、ビルドアップでミスして失点しても「チャレンジのミスは問題無い!」とずっと言っていました。
環境で、言葉で、人が変化すること。
これも引退後の自身のテーマの1つになっています。
温かみのある人のもとで、「サッカーはやっぱり楽しい」ということを思い出させてもらい、現役生活を終われたことにとても感謝しています。
引退の報告に行った際も来年も共に戦ってもらうつもりだったと、声を掛けていただいたことは私の誇りですし、出場機会を求めてミシャ以外のチームで現役生活を続けるという選択肢が全くなかった、自分の生き方を肯定していただいた気がしました。
【Key word】
目標修正、楽しむ、環境設定、言霊
【あとがき】
楽しむということは、常に意識しています。
ミシャもサッカーは楽しむものだと常に言っていました。
私はどちらかというと、性格的に思考しすぎて、動きが鈍くなることが多いです。
サッカーでも同じように自分のプレーが上手くいってない時や、状況が良くない時に悪循環に陥ることもありました。
サッカーは「思考」よりも「感覚」が優位です。
なんかここにボールがくると思った。とか、危ない気がした。思考して言語化していたら、起きている現象に間に合いません。
なので、若手にアドバイスを求められた時は、本来持ってる感覚が狂わないような言葉選びに気をつけていました。
プロになれる人はこの感覚がもともと強い人たちです。
ただ、感覚だけで戦っていけるほど、プロの世界は甘くもありません。
自分より感覚の鋭い人たちの集まりだからです。
ただこの感覚は、練習や試合の蓄積による経験と認知で伸ばすこともできます。
思考⇄感覚、言語⇄イメージを何回も何回も繰り返し行き来することが大切です。
その繰り返しの中で、心理学者のチクセン・トミハイのフロー理論にように、ゾーンに入る瞬間が生まれます。
このゾーンに入るためには、心のそこから楽しむことが大切なので、心の底から楽しめる環境を作れるように、今後も自分自身も色々とチャレンジしていきたいと思います。
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