赤ちゃんの香りはもはやアロマテラピー
友人2人が3ヶ月違いで出産をしたので赤ちゃんに会いに行った。
決して若くないわたしたちの年齢。
母子ともに元気でいてくれて本当によかったし、何より2人の子に会えるのがとても楽しみだった。
でも正直な気持ちを言ってしまうと、結婚をして母親になった友人たちと会う時間は、決して楽しいだけではなくなっている。
結婚をして自分の家族を持つ彼女たちと、独身であるわたしには共通の話題がほとんどなくなってしまった。
妊娠中の大変さや旦那さんの愚痴、結婚生活のあれこれや親戚づきあいのあるある話。
話を聞いているのは楽しい。
だけど、「最近仕事はどう?」「いい人できた?」と自分に話題を振られると途端にうまく話せなくなるのだ。
どうってことのない仕事や生活の話をしながら、代り映えのしない自分が嫌になってくる。
独身で自分のことだけをしていれば良いわたしの「今」は、彼女たちにとっては過ぎ去った「過去」だ。
もうとっくに過ぎ去った時代の話が拡がるわけがなかった。
彼女たちにとってわたしの話は時代遅れなのだ。
それでも3人の会話のバランスをとるために定期的にわたしが話すターンがやってくる。
その度に拡がらない話をせめて自分で終着させようとオチをつけて話す。
それぞれが少しずつ気付かれないよう細心の注意を払って、何らかの気遣いをしている。
楽しいはずの時間に何とも言えない居心地の悪さを感じるようになった。
だけど、そんなことを感じる間もなく新生児は尊さでいっぱいだった。
こちらの世界に来てまだ3ヶ月と少し。首がすわっていないふにゃふにゃのほやほや状態の赤ちゃん。
見ているだけで涙が出そうになる。
抱っこをさせてもらった時は温かくてやわらかくて産まれたてのいのちをそのまま抱っこしているみたいだった。
ぎこちない抱っこはまた自分をチクリと惨めな気持ちにさせたけど、そんなことは気にしてないという風に静かに眠っている。
甘くて穏やかな赤ちゃんの香り。
この香りの主成分は花や果実の香りのする「ノナナール」というものだそう。
赤ちゃんの香りに癒しとリラックス効果があるのはとてもうなずける。
どうやら赤ちゃんは五感のすべてに働きかけて大人を癒してくれるみたいだ。
あっという間のランチをした帰り道、自然のアロマテラピーを受けたわたしのこころは何だか穏やかだった。
人と比べたり焦ったり、自分を疑ったり責めたり。どうしても心がささくれ立ってしまう日はある。
そんな日もあるしそんな自分もいる。だけど大丈夫、と思わせてくれたほやほやのいのちに感謝のきもちでいっぱいになった日だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?