ドラマ『恋です!』とD&I
恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜
というドラマが放送されていた。
目がほとんど見えない女子高生ゆきことヤンキーの男子高校生クロカワが出会い、
様々な困難を乗り越えてゆく恋愛ドラマである。
※作中の呼び名に基づく
ヤンキーと言っても、かつてのドラマ『マイボス☆マイヒーロー』的な、ギャグのようなヤンキーなので安心して欲しい。
このドラマの中で、D&Iというのは一つの大きなテーマだったと思うし、しっかりIの観点にも触れられていたので書き綴る
※ドラマのネタバレを含みます
恋です!
目の障害と言っても症状の度合いなどは様々である。
ゆきこさんの持つ弱視は、色と光がぼんやりとわかる程度で、文字は拡大すれば読めるようであった。
もちろんコンタクトなどでも改善しない。
ある日、ヤンキーでかつての喧嘩で顔に傷がある男子高校生クロカワは、ゆきこさんに恋に落ちる。
ゆきこさんは弱視のため、日常生活でも困ることはよくある。例えばメニューが読めないため、必ずありそうなメニュー(映画館のチュロスなど)だけを注文するし、音声ガイドの存在しない最新映画は見ることができない。
それを聞いたクロカワはメニューを全部読み上げたり、ポップコーンを口に入れたり、音声ガイドを自ら行ったりといったことをする。
クロカワは先入観が何もなく、弱視のことを何も特別扱いしない。ただ恋心から、ゆきこさんがしたいことを実現しようとする。
しかしそれだけでなく、知識もないため無邪気さから、細かい字で書いた手紙を渡したり、弱視の人が歩くには危険なハイヒールをプレゼントしたりしてしまう。
ただゆきこは、久々に食べるポップコーンや初めて履くハイヒールに、確実に自分の世界が広がるのを感じていた。
またハイヒールは、弱視にとって大きな情報源である声をより良く伝えるため、2人の身長差を減らそうとクロカワが考えたアイデアであり、その気持ちも嬉しいものであった。
周りが思う「普通」
ゆきこさんには心配性の姉イズミがいる。ゆきこにさんに怪我をしてほしくないあまり、ゆきこが好きな調理なども、私がやるから!と怒ってしまう。
人と違うんだからちゃんと考えなさい、そう言ってゆきこのことを守ろうとする。
クロカワもヤンキーの象徴、顔の傷を煙たがられることも多く、イズミからもゆきこに近づかないように釘を刺される。
結果ゆきこさんに引け目を感じて「ゆきこさんは普通の世界で生きてるから…」と距離をとろうとする。
その言葉にゆきこはハッとする。ゆきこにとっては目の見える人の世界が「普通」で、自分が「普通じゃない」からである。
Diversity & Inclusion
D&IとはDiversity&Inclusionの略である。
世の中には人種、性別、肌の色、趣味趣向、こころや身体の障害など、様々な多様性を持った人々がいる。
D&Iとは、それらのバックグラウンドによらず、全員が活躍できることである。
LGBTや、更に拡張したLGBTTQQIAAPだとか、性的趣向にについても様々である。そもそも人間の感性なんて、きちんと分類できるものでもない。
ゆきこのInclusion
「普通」じゃないという抑圧
ゆきこは以前目が見えないことで、幼馴染に怪我をさせてしまったことがある。
イズミの心配もあり、ゆきこは恋にも行動にも、消極的になっていた。
イズミも多様性の存在は理解している。弱視の人に手を伸ばし、代わりに行うことが助けになることもあると思う。
ただゆきこから、本人の好きな調理を奪うことはInclusionの観点ではよくなかったのかもしれない。
必要なサポートもそれぞれである。
ゆきこにとっては、クロカワの偏見のなさや純粋な恋心がゆきこの世界を広げ、Inclusionに繋がった。
細かい字の書かれた手紙をゆきこに送ったクロカワは、渡してから読めないことを知る。
その後即座に大きな字で手紙を書き直して持っていく。その紙に大きく書いたのがタイトルにもなる「恋です!」である。
クロカワ自身は傷つきながらも成長し、
ゆきこさんも世界が広がり、クロカワのおかげで今までは落としてしまうため食べられなかったポップコーンを食べられ、好きになったり、好きだった飲食のバイトにも挑戦できた。
バイトメンバーの理解
ゆきこのInclusionに貢献したのはクロカワだけではない。
バイト先では、目が見えずポテトをこぼしたりするゆきこを毛嫌いする人も多かった。
しかし努力するゆきこを見てバイトメンバーの意識も変わる。
伝票の文字を大きくしたり、物を定位置に置いたり、メンバーみんなの協力でゆきこがより活躍できるようになった。
もともと目が良いメンバーにとっても、実は文字が読みやすくなってミスも減ったというのも良いエピソードである。
ゆきこのおかげでバイト全体の雰囲気も良くなった。
クロカワのInclusion
クロカワもまた多様性で苦しむ人間の1人である。
ヤンキー、顔の傷を理由に偏見を持たれ、バイトでも尽く断られる。昔母が失踪したのもあり、社会に必要とされてない感覚に苦しんでいる。
しかしゆきこと出会い、母のいなくなった日のトラウマを克服したり、仕事で認められたり、着実に社会での活躍を果たす。
恋です!とD&I
作中では弱視の方の困っていることなどもコラムとして紹介されていた。ゲートのない駅のホームの危険性や、料理の時に手を切らないための道具など、視覚障害の理解につながった。
クロカワにはヤンキーとしてライバル獅子王がいた。実はその人はゲイであり、クロカワに好意を寄せていた。
その他様々D&Iに関するエピソードが散りばめられていた。
またDiversityに触れるだけでなく、上記のようにそれぞれが一番輝けるには、というInclusionの観点もよく描かれていて、とても勉強になった。
もちろんストーリー自体も面白い。
多様な多様性
多様性は俗に言われるLGBTや人種、障害の違いだけではない。精神面や趣味、年齢など、人類皆多様性の1人であり、全く助けがいらない人はいないと思う。
互いに助け合って、それぞれが輝ける世界についてもっと考えたい。
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