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【ニュースチェック】「大阪都構想」住民投票は何が問われているのか

いよいよ大阪市を廃止して4つの特別区に再編する、いわゆる「大阪都構想」の住民投票の日を迎えました。私に投票権はありませんが、大阪市で生まれ育った人間としてその行末に関心がないわけではありません。元市民として考えたことを、書き残しておきます。

最大の焦点は「住民サービス」という報道もみられますが、やや違和感があります。

もちろん「住民サービス」が重要な判断要素の一つであることは否定しませんが、そもそも今回の「自治体再編」の目的は、二重行政を解消して大阪を成長させる「副首都」化であり、「住民サービス向上」それ自体ではないからです。推進側は「住民サービスを向上させるために、大阪都を目指す」という言い方はしてきませんでした。「大阪市という自治体の存在が大阪全体の成長の妨げである」という認識に基づき、東京一極集中を変えるために大阪を「副首都」化していくという国家ビジョンとして、打ち出されてきたのです。

したがって、まず、この「二重行政を解消して大阪を成長させる「副首都」化を目指す」という「目的」に賛同できるかどうか、が問われるべきでした。この目的に賛同できない、二重行政の弊害という現状認識や、副首都化というビジョンに賛成できない、という人は、その時点で反対になります。

そして、次に、仮にこの「目的」には賛成できるとしても、大阪市を廃止して4つの特別区を設置するという「手段」が目的達成のために必要かつ合理的な手段と考えるかどうか、が問われます。「目的」に賛同できるし「手段」も納得できる人は賛成になりますが、「目的」に賛同できるが「手段」には納得できない人は反対、ということになります。

推進派が主張する「目的」が重要かどうかと、「手段」が合理的か、(リスクやコストを)許容できるか、が問われている住民投票だと思います。

「住民サービスの向上」は、この「目的」が達成された場合に付随して出てくる果実として、推進派も「メリット」があると言っていますが、その果実を得ること自体が今回の「目的」とはされていないのです。

終盤で「コスト」の話が大きな論点になりましたが、自治体再編をする以上、現状維持で行くより、移行に伴う一定のコストが発生することは当たり前です。それは推進派も認めています。大阪市も行政コスト増を算出しています。行政コストを算出していない、と一部で言われているのは間違いです。その試算を信頼できるかどうかは別にして、一定の根拠に基づいて算出はされているのです。

維新は、そのコストを将来(大阪を成長させる副首都化)のための「投資」と捉えているのです。投資には失敗のリスクがあります。単純に「大阪市の住民サービス」という次元ではなく、日本全体・関西圏全体を見据えて、リスク・コストをかけるに値する自治体再編プランなのかどうか

大変難しい問いだと思いますが、それが大阪市の有権者に突きつけられているのだと思います。その答えが今夜出ることになります。

(参考)これまでの賛否両説のファクトチェック結果まとめです。
【大阪都構想住民投票】メディア各社のファクトチェックまとめ 賛否両論それぞれの検証結果は

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