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【検証コロナ禍】東京都の重症病床使用率、大幅な下方修正 気づかず再び誤報のメディアも

 厚労省が2月26日、東京都内の重症者病床使用率を大幅に下方修正したことがわかった。
 2月16日時点では「86.2%」としていたが、23日時点で「32.7%」と発表。従来は分母と分子が整合しておらず、事実上不正確なデータだったことを認める記述が追加された。
 ただ、この大幅な修正について、厚労省や東京都は特段の発表をしておらず、メディアも指摘していない。それどころか修正に気づかず、誤報を繰り返しているメディアもある。
(冒頭写真:緊急事態宣言解除に慎重な姿勢を示す東京都の小池百合子知事。2月26日NHK放送「ニュース7」より)

重症者病床使用率 86%→33%に修正 病床確保数は500床→1000床に

 重症者の定義が国(厚労省)と東京都で異なるため、重症者病床使用率に関するデータは、双方の発表でかなりのズレがある。ただ、厚労省の発表も、東京都から報告された数値に基づくものであり、どちらも都が出しているデータだ。
 都内の重症者病床の使用状況は、2月23日時点で、国基準では重症者327人/1000床(33%)と報告された前週時点では、重症者431人/500床(86%)と報告されていたが、分母の病床数が大幅に上方修正されたのだ。その結果、病床使用率が一気に低下し、いわゆる「ステージ3」になった。
 都基準でみると、重症者69人/330床(23%)=24日時点となっており、「ステージ2」以下となっている。
 他方、全入院患者ベースで見た場合は、1894人/5000床(38%)=23日時点で、「ステージ3」に相当する。
 いずれにしても、東京都の6つの指標は全て、緊急事態宣言のレベルである「ステージ4」を下回ったことになる

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 厚労省の資料(2月26日発表)には、次のような注釈が入った(元資料に誤字があるが、ママ)。

注:従来、入院者数(分子)は国基準(集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)等での管理、人工呼吸器又は体外式心配補助(ECMO)による管理が必要な患者)、病床数(分母)は人工呼吸器又は体外式心配補助(ECMO)による管理が必要な患者用の病床による報告であったが、分母、分子とも国基準での報告による。
(参考:東京都基準は、人工呼吸器又は体外式心配補助(ECMO)による管理が必要な患者用の病床)。

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厚労省の2月26日発表資料より一部抜粋、赤の丸印は筆者)

 非常にわかりにくい説明だが、要するに、従来は「国基準の重症者数/都基準の病床確保数」での(都からの)報告に基づき発表していたが、今回から「国基準の重症者数/国基準の病床確保数」での報告に基づく発表に修正した、という意味だ。
 これにより、分母の病床確保数が「500床」から「1000床」に修正されたのである2月26日発表資料)。

都の修正報告には未解明部分がある

 先日報告したように、私は、都の報告に基づき厚労省が発表していた重症病床確保数に疑問を持ち、2月17日、都福祉保健局感染症対策部の担当課長に対し、厚労省に報告している「500 床」は何を意味するのか、なぜ全く変化していないのか、などをFAXで質問したが、「都議会で忙しい」ことなどを理由に具体的な返答は得られなかった。
 22日に厚労省への取材で、以前から都に修正報告を求めているが、都がなかなか修正しようとしないことが判明翌日Yahoo!ニュース個人で記事化した。これが契機になったのかはわからないが、その4日後、(都からの修正報告を受け)厚労省が「1000床」と修正発表したことになる。
 その結果、国基準と都基準の重症者病床使用率の差は(もともと50〜70%もの開きがあったが)、10%に縮まった。

 ただ、この修正発表も、そのまま鵜呑みにはできない。

 第一に、東京都の報告値は、他の道府県の報告値と比べるかなり大雑把な数字に見える。例えば、大阪府は408床、北海道は161床、福岡県は111床だ。それに対して東京都はピッタリ1000床(以前はピッタリ500床)と報告してきたが本当なのか。都は本当は国基準での重症病床確保数を正確に把握しておらず、アバウトに報告したのではないかという疑問も残る

 第二に、仮に国基準での重症病床確保数「1000床」が現実をほぼ反映した数値だとしても、それがいつからだったのか、という点が明らかになっていない。つまり、厚労省が発表していた重症病床使用率はいつから間違っていたのか、さかのぼって正しい病床使用率に換算するとどうだったのかが、わかっていない

  第三に、それまでの「500床」は国基準ではなく都基準での重症病床確保数を報告していたという説明のようだが、この間、都が独自に発表してきた重症病床確保数(150〜330床)ともかなり乖離がある。可能性としては、都の独自発表は即応病床数、厚労省への報告は都基準での最大で確保可能な病床数だったのかもしれない。
 最大確保数が500床として、これを分母にした重症病床使用率(都基準)は、2月27日現在、68人/500床、13.6%となる。
 この問題は、改めて別稿で分析する。

報ステは再び誤報

 2月19日放送で都内の重症者病床使用率を「100%」と誤報していた報道ステーションは、2月26日放送でも「65%」と報道していた。

 これは分母を従来の「500床」のまま、分子を重症者「327人」として計算した割合(65.4%)に違いない。2週連続の誤報だ。

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(2月26日テレビ朝日放送「報道ステーション」より)

 そもそも、今回の東京都の重症者病床使用率の大幅修正は、資料を読み込んではじめて気づく事実であり、厚労省からも都からも発表されていない。誤報をしてきた大手メディアも、今回の修正の事実を明確に伝えたものは、現時点でなさそうだ

 ただ、NHK特設サイトは、都道府県別の病床使用率の推移グラフを載せており、大幅な下方修正も反映されている。
 このグラフや、厚労省の発表資料を丹念に調べた人だけが、不自然な修正に気づくことができる。

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NHK特設サイト「病床使用率 全都道府県グラフ」より一部抜粋=2月27日現在)

まとめ

 ここで確認された事実を確認しておく。
 厚労省は、1月15日時点の都内の重症病床使用率だけ空欄で発表し、注記した。遅くともこのころまでには、厚労省は都の病床確保数が国基準でなく、分母と分子の整合性がとれていない不正確な数値であることを認識していた
 だが、厚労省は、注釈をつける形で不正確な数値を発表し続け、NHKなど大手メディアは注釈抜きで「86%」だの「113%」だのという誤報を繰り返してきた
 しかし、こうした大幅な下方修正が行われたことは、きちんと報道したり発表したりされていない。
 昨年春の緊急事態宣言下における都内入院患者の大幅な下方修正病床確保数の大幅な上方修正と、全く同じ過ちが繰り返されている

追記(3/3 23:00)

 読売新聞も3月2日付朝刊社会面で、この大幅な加筆修正について報じた(デジタル版記事)。
 日本経済新聞産経新聞も3日付朝刊社会面でこの問題を報じた。

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 加藤勝信官房長官は2日午前の定例記者会見で、この問題について次のように答えた。

Q.緊急事態宣言に関連してお伺いいたします。
 厚生労働省が先月26日に公表した都道府県の医療提供体制等の状況では、これまで86%だった重症病床使用率が32%と大幅に下落しました。
 東京都が重症病床数を500床から1000床に上方修正した結果ですが、これまで東京都は、国に基準の重症者病床数を報告してませんでした。緊急事態宣言の解除を判断する大事な材料になると思うのですが、こうしたデータのずさんな管理について、政府の受け止めをお願いします。
 また、正確なデータを出すように都側に働きかけた事実があるかどうかも併せてお願いします。
A.まず、東京都においては、東京都独自の基準により重症者用病床数が公表されてきたところでありますが、緊急事態宣言の解除等の判断に当たっては、参考となる指標との関係も含めて、医療提供体制の状況を正確に把握していくことが重要であり、厚生労働省から東京都に対し、厚生労働省が提示している基準に従って重症者用病床数を報告するよう、これまでお願いをしてきたところであります。
 これを受けて、東京都において、医療機関に対し改めて調査を行い、先週2月26日の東京都のモニタリング会議において、厚生労働省が示した基準に基づくと、重症者用病床が1000床確保された旨が公表されたところであります。
 こうした状況を踏まえながらですね、引き続き自治体ともよく連携をとりながら、政府として検討を進めていきたいと考えております。


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