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【検証コロナ禍】まん防ドミノ ステージ2での適用は基本的対処方針と矛盾

 政府が来週から埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に特措法に基づく「まん延防止等重点措置」を適用する方針を決めた。しかし、首都圏の指標の大半は政府分科会の指標でステージ2以下だ。特に重要な重症病床使用率は2割以下でほとんど悪化していない。
 政府の基本的対処方針で、重点措置の適用は感染者が急増し、ステージ3相当になった場合を想定していたことから、今回の追加適用は従来の方針と矛盾する。関西圏での変異ウイルスの拡大を受け、前倒しで適用することになったようだが、
出口戦略も示されていない。

(冒頭写真は、NHKニュース4月16日放送より)

「重点措置はステージ3で」が政府の基本方針

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内閣官房の新型コロナ特設サイトより。欄外は筆者)

 上の表は、内閣官房のサイトに掲載されている主要都市の指標(4月14日現在)だ。
 最初に適用となった大阪府、兵庫県は、3月下旬から一部の指標がステージ4相当となり、どの指標をみても、感染拡大、医療提供体制ともに悪化が顕在化していた3月31日の指標)。
 4月12日から適用になった東京都、京都府は、感染拡大傾向は見られたが、医療体制が逼迫するほど悪化はしていない(詳しくは後述)。

 来週から適用対象になるとみられる埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に至っては、やや拡大傾向にはあるものの、陽性率や新規陽性者数、病床の逼迫具合はほとんどステージ2相当だ

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 もともと、政府の基本的対処方針(閣議決定)では、重点措置の適用はステージ3相当としていた。内閣官房の発表資料(2月12日)にも「一部地域における感染の急拡大を封じ込めることが目的であり、ステージⅢ相当である他、感染拡大の状況を勘案して適用」と明記されていた。

 重点措置も、緊急事態措置と同様の罰則を伴う権利制限(営業時間短縮など)が可能となり、社会経済活動への影響は小さくない。
 そのため、「感染者の漸増及び医療提供体制への負荷が蓄積する段階」(ステージ2相当)では一般的な要請(罰則なし)で対応し、「感染者の急増及び医療提供体制における大きな支障の発生を避けるための対応が必要な段階」(ステージ3相当)でまん延防止等重点措置(罰則あり)で対応する、というのが基本方針であった。
 改正特措法の施行直後の2月上旬に示されたばかりだ。
 だが今回、ステージ2相当の首都圏にまん延防止等重点措置が適用されようとしている。従来の政府の基本方針と矛盾しているのではないか。

埼玉・千葉・神奈川の状況

〜3県とも横ばいか漸増 重症者は増えず、病床使用率2割以下〜

 追加適用対象となる各県の状況をもう少し詳しく確認してみる。
 まず埼玉、千葉、神奈川の陽性者の推移だ。現時点では「横ばい」ないし「漸増」(ステージ2)の傾向にあり、決して「急増」(ステージ3)と言える状況にはない。

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(東洋経済オンライン特設サイトより)

  入院中の重症患者数はやや減少。死者も3月より減り、各県とも1日平均2人前後で推移している。
 重症病床使用率は、埼玉20%、千葉16%、神奈川14%だ(4月14日時点)。

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(東洋経済オンライン特設サイトより)

 以下は、神奈川県のサイトに掲載されているモニタリング指標(4月15日現在)だ。緑色はステージ2以下、黄色がステージ3相当。病床全体の使用率、新規陽性者数(前週比)が黄色だが、それ以外は緑色である。

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東京都の状況

〜緊急事態宣言解除前から漸増傾向に変化なし 重症者は低水準〜

 ここで、4月12日から適用となった東京都の状況も再確認しておきたい。まず陽性者数だが、1日500人超(7日間移動平均)となった。ただ、(緊急事態宣言中の)2月下旬から漸増に転じて以来、増加ペースはほとんど変わっていない。
 緊急事態宣言発令中も、解除後も、まん延防止等重点措置適用後も、実効再生産数が1.1前後(漸増)という状況に目に変化はないのだ

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東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト

 メディアは日々の陽性者数の推移にばかり注目するが、その中には相当数の軽症・無症状者も含まれている。
 重要なのは、加療を要する患者(中等症・重症)が増えているかどうか、医療機関の逼迫の可能性が顕在化しているかどうかだ。
 東京都は中等症以上の患者を集計していないが、軽症以下を含む入院患者数全体でみても、重症患者数でみても、陽性者が漸増しているこの1ヶ月あまりの間、ほとんど増えていない。

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 1日平均死者(発表日ベース)は今月に入って10人以下で、死亡日ベースで見ると1日平均2人である。

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 人工呼吸器装着の重症者(都基準)の病床使用率は11%(37人/332床、4月15日)。都独自で集計している発熱相談件数、救急医療の東京ルール適用件数もほぼ変化がない。

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愛知県の状況

〜増加傾向だが、大半が軽症以下 重症病床使用率8%〜

 追加適用の対象となる愛知県も見ておく。
 愛知県は、3月下旬から陽性者が増えている。実効再生産数は継続的に1.3前後なので、漸増レベルではない増え方といえようと言えるだろう。
 入院患者も約3週間で約100人増えた。

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愛知県の新型コロナウイルス感染症対策サイト(非公式)

 病床使用率はまもなく25%を超えようとしているが(確保病床は1215床)、実は入院患者の過半が軽症・無症状である

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 重症患者もほぼ横ばいで、死者は1日平均2人程度で推移している。

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 重症病床の使用率は8%(10人/126床)で、愛知県の指標ではグリーンゾーン(15%未満)なのである。

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