見出し画像

【検証コロナ禍】東京・京都・沖縄への「重点措置」適用の根拠は何か 先行1府2県と状況を比較してみた

 政府が東京都、京都府、沖縄県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固め、来週から適用すると報じられた。明日、対策本部で正式決定するという。
 だが、先行して適用された大阪府、兵庫県、宮城県とは明らかに状況が異なる。この1府2県では陽性者数の増え方を示す実効再生産数が「1」を大きく上回り、重症者が急増傾向を示していたが、東京都、京都府、沖縄県は現時点でそうした傾向を示しているとは言えない。
 「重点措置」は名称が違うだけで、本質的に緊急事態宣言とほとんど変わらず、いわば「第三次緊急事態宣言」の発動を意味すると言っても過言ではない。強制力を伴う権利制限措置がとられ、社会生活や経済的影響は甚大である。
 なぜ、今回この1都1府1県が「重点措置」の適用対象に選ばれたのか。法律上の発動・解除基準が極めて不明確なだけに、追加適用する根拠について、明確な説明が求められる。
(冒頭写真はNHKニュース動画より。以下のデータは東洋経済オンライン特設サイト参照)。

先行適用の1府2県は重症者が急増していたが…

 4月5日から「重点措置」が適用された大阪府、兵庫県、宮城県に共通しているのは、重症患者数の増加だった。
 陽性者数の増え方(実効再生産数)も1を大きく上回っていた。いずれも3月中・下旬からその傾向が現れた。

 なお、幸い、死者数は、現時点ではそれほど増えてはいない。
 1日あたり平均死者数は、大阪は2〜3人、京都は1〜2人、宮城は0〜1人で推移している。
 今後、重症者が増加傾向に変化がなければ死者も増える可能性があり、予断は許さないが、現時点で死者数が非常に低水準に推移していることは留意しておいてもいいだろう。

画像1

画像2

画像3

東京・京都・沖縄の重症患者は横ばい推移

 一方で、追加適用の対象とされる東京都、京都府、沖縄県を見ると、重症者数は医療を逼迫するほどでない水準で推移している
 今後の推移はもちろん予断できないが、現時点ではほとんど増えていない。
 1日あたり平均死者数は、東京は減少傾向だし、京都は1人程度、沖縄は1人未満でほとんどいない。

画像4

画像5

画像6

実効再生産数を比較すると…

 実効再生産数(陽性者数の増え方)はどうか。

 京都は3月下旬から1.5を超える水準が続いており、急増の兆しがある
 重症者が急増している大阪・兵庫と同じ関西圏にあり、先ほどみたように重症者数は現時点で低水準だが、早めに「重点措置」を適用することにしたのかもしれない。

 一方で、東京は「1.1」前後を推移している。
 沖縄は一時「1.5」を超えていたが、今は「1.2」以下になり、増え方は減速傾向にある。
 いずれも「1」を超えているので、依然、拡大傾向が続いていることに違いはないが、大阪・兵庫・宮城のように急増しているわけではない。

<先行適用の1府2県>

画像10

画像11

画像12

<追加適用の1都1府1県>

画像7

画像8

画像9

分科会6つの指標でみると…

 ただ、沖縄は、政府分科会の6つの指標のうち2つ(10万人当たり陽性者数、療養者数)がステージ4相当で、病床使用率も含め、先行適用された1府2県と比べても高めの水準である。
 先ほど見たように、沖縄の重症者数、死者数は低水準で推移しているが、こうした指標が適用する理由になった可能性がある。

 東京は6つの指標のうち1つ(10万人当たり療養者数)だけがステージ4相当である。
 東京都は1日あたり陽性者数(絶対数)が多いため、どうしても状況が悪く見えてしまうのだが、入院患者数も重症患者数もほとんど増えていない。
 病床使用率は、病床全体で29.7%、重症病床(都基準)で12.3%にとどまる(東京都モニタリング会議資料)。
 病床が著しく逼迫するほど急増している大阪府、兵庫県などとは、状況が異なると思われる。

 いずれにせよ、「重点措置」は、実質的に緊急事態宣言とほぼ同じ措置がとれる「ミニ緊急事態宣言」とも言えるもので、事実上の「緊急事態宣言の前倒し適用」としての意味を持ち、一定の権利制約を伴うものだ(参照=【検証コロナ禍】新設される「まん延防止等重点措置」の本質は「ミニ緊急事態宣言」 しかも現行法より制限強化)。
 それだけに、なぜこれらの地域に追加適用するのか、明確な判断基準と根拠が示される必要があるのではないか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?