【資料】日本ファクトチェックセンター編集長の質疑(総務省デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会、5月24日) ※更新あり
以下は、総務省が2024年5月24日に開催した「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」の第20回会合において、ヒアリングに招かれた日本ファクトチェックセンター(JFC)・古田大輔編集長による活動報告後の質疑応答の内容である。発言内容に関係するとみられるウェブサイトもしくはオープンソースのリンクを、適宜挿入した。
なお、この検討会は、偽・誤情報対策や「ファクトチェック機関」の役割などが議論されている。座長の宍戸常寿東京大教授はJFC監査委員長、セーファーインターネット協会(SIA)アドバイザリーボード委員長を兼ねている。また、検討会ワーキンググループ主査代理の曽我部真裕京都大教授はJFC運営委員長 とSIAアドバイザリーボード委員を兼ね、ワーキンググループ主査の山本龍彦慶應大教授はJFC運営副委員長を兼ねている。
会合は公開(オンライン会議方式)で開催され、発表資料は総務省のサイトで公開されている。議事概要は追って総務省のサイトで公表される。
(追記)6月27日に議事概要が公表された。
(古田大輔・日本ファクトチェックセンター編集長の発表の後)
宍戸常寿(東京大学教授) 検討会座長
それではまた時間が押しておりますので、お一人、お二人に限らせていただきたいと思いますが、ご質問、コメントがあればお願いいたします。奥村構成員。
奥村信幸(武蔵大学教授) 検討会構成員
お時間をいただき、ありがとうございます。
日本ではなかなかファクトチェックが根付かない中で、ファクトチェックのさまざまな側面に目配りをした取り組みをいろいろなさっていることに敬意を表します。
日本では数少ないIFCN、国際ファクトチェッキングネットワークのシグナトリでもありますので、承認の根拠としても非常に大切な問題についてもう一度確認をさせていただきます。
日本ファクトチェックセンターは日本のフロントランナーだと思っていますから、正しいモデルを示していただくという期待も責任もあると思うからです。
日本ファクトチェックセンターの成り立ち、特にセーファーインターネット協会が最初の表紙のところにもあったわけですけれども、関係がすごく特別であるということです。
それによって、資金の透明性とか、利益相反とか、権力からの独立というようなことが、もしかして一般のユーザーにわかりにくい部分もあるんじゃないかと思いますので、お聞きしたいと思います。
資金の透明性に関してまず申し上げます。
設置規程を見ますと、セーファーインターネット協会は、日本ファクトチェックセンターの運営団体で、活動経費はセーファーインターネット協会が支弁し、予算も決算もセーファーインターネット協会の理事会が承認するとなっています。
口座が別々になっていることより重要な事項であると認識しています。
日本ファクトチェックセンターが主な活動資金に挙げているグーグルからの助成金ですけれども、これもグーグルの総務省への報告資料を見ますと、セーファーインターネット協会に支払われています。
しかし、セーファーインターネット協会のホームページには貸借対照表しか公表されていません。法人の収益情報はまったく公表されていない。
IFCNの基準は収入の5%以上を占める資金源を詳しく公開することを求めています。インファクトがやっている通りです。
それがなされていないまま一年も以上放置し、一年近く放置されているということになります。
ファクトチェック団体は、とにかく信用が第一だと思いますけれども、将来、別法人に分けるような仕組みをお考えなのかどうかということが一つお聞きしたいことです。
もう一つは、独立性の問題に関してです。
セーファーインターネット協会はこれまで、警察庁のお仕事を請け負ったり、総務省と協力しての仕事もおやりになっています。
これらの事業とファクトチェックはコンフリクトを起こさないのかという危惧です。
ファクトチェックの信頼を守る仕組みとしては、日本ファクトチェックセンターが親組織からどれだけ独立しているかということが問われると思いますけれども、設置規程を見ますと、編集長、スタッフの任命、採用、業務委託契約も全てSIA、セーファーインターネット協会が行うことになっています。
セーファーインターネット協会からヒアリングをさせていただいた際に、セーファーインターネット協会からの説明は、影響を排除し、編集部を守るために運営委員会というところが重要な役割を果たす、という説明がございました。
日本ファクトチェックセンターの設置規程やガイドラインによりますと、運営委員会の事務局はセーファーインターネット協会が担い、運営委員会が勧告や具体的な指示ができて、ファクトチェックの対象言説も指示ができるというふうになって、かなり重要な権限が付与されていることが認識できます。
この運営委員会について、全く情報公開がないのですけれども、運営委員会は今年、何度開催されて、どのようなことを話し合っていらっしゃるんでしょうか。
それからこの資金の透明性に問題があるかないか、もしくは、一部ほど、昨日スローニュースですけれども、それの記事によりますと、古田さんは対象言説をめぐって運営委員会と意見が異なり、納得していらっしゃらないような様子も伺うわけですけれども、そのようなこともお話し合いになってらっしゃるのか、それから運営委員会というのは、もしかするとファクトチェック団体の透明性にかかわる重要な問題を話し合っているという意味では、内容が公開されてもいいと思いますが、なぜ公開されていないのかということ。
運営委員会にはこの検討会のメンバーでもいらっしゃいます、曽我部先生や山本先生、水谷先生もいらっしゃいますので、お答えいただける方から頂戴したく存じます。
ありがとうございました。
宍戸 座長
ありがとうございます。
それでは今、古田さんからお答えいただけることはお答えいただき、もし曽我部先生とかからお答えいただくことがあれば、お願いしたいと思います。
古田大輔 日本ファクトチェックセンター編集長
ありがとうございます。
今のに全部答えようと思ったら、かなりの時間がかかりますけど、大丈夫でしょうか。
宍戸 座長
できるだけ手短に、後で恐らく正確にお答えいただく必要がある部分っていうのもあると思いますので、場合によっては紙でということでもあると思いますので。
古田 編集長
大体のことについては答えられるんですが、たぶん時間が長くなってしまうので、いま3つという中に、個別の質問がまたかなり小質問がいっぱい含まれていたので、どれから答えようかと思うんですけれども。
そうですね、まず第一に予算についてなんですけれども、SIAに入っているのではないかというのは、これは単純明快に法人格がJFCにないので、銀行口座は作れないんですよね。なので、SIAに入る、という理由です。
そこからですね、ただ、SIAの口座から、そこでちゃんと切り分けて、そこから見ていただいているように、JFCのサイトで見ていただいているような運用の仕方をしている、そこにおいて、JFCで入っているお金、グーグルとLINEヤフーとメタですね、その範囲内で、その全てのJFCの活動の予算が運営されている、というふうなものになっております。
なので、SIAのお金がこっちに入るっていうことは、そもそも意味がない、なぜならメタとグーグルのお金があるので、SIAのお金が入るということの意味はない。
ご指摘通り、いつも透明性に関して課題があるではないかというのはおっしゃるとおりだと思うんですね。
なので我々は今、さらに透明性を上げるための努力をしようと思っていて、一般社団法人は御存じのように、法的には賃借対照表で、それでOKになってしまう。
ただ、それ以上の公開をした方が、SIAという組織にとっても、JFCにとってもファクトチェックにとっててもよいではないかという風な議論は続けておりまして、そういうふうな準備は続けております。
ただ、これもご存知のように、年一回、かつ決算をしおわった後に、それこそ理事会とかで、その決算承認とか、法的な手続きを経ないと、情報公開ってなかなかできないものがある。なのでそのずれがどんどん生じてくるわけですね。
なのでそれをやろうとしても、やっぱり最低でももう数カ月はかかるであろうなということを考えているところです。
で、こういった議論は常に事務局でもされておりますし、その議論の中で私は私の意見を言ってますし、運営委員会でも議論されています。
次に、SIAにおける警察庁の事業。これは誤解なきように説明させていただきますと、そのJFCの立ち上げがあった2022年9月の段階では、既にこの警察庁の事業というものは終わっております。
なので、JFCの立ち上げと全く関係のなかったんですよね。
このことについて、そもそもIFCNに申請するときも議論がありました。
どういったものについて申請をするのか、かなり申請書は長いんですけれども、その申請書に何の情報を盛り込んだらいいのかっていうのは、IFCN側とももちろん打ち合わせをした上で、書き込んでおります。
すでに前年度に終わってしまっている事業であり、かつ今後復活する可能性がない事業ということで、そこには記載はされておりません。
なおかつ、総務省、それだけではなくて地方自治体から請け負っている事業というものがセーファーインターネット協会には存在します。それはオンラインセーフティに関する教育事業ですね。
ただし、かなり金額が小さいです。ものすごく金額が小さくてですね、それを申請書の中ではありますよというのはもちろん書いておりますが、それが何らかの影響を受けるようなものではないということも明記しており、それによって評価書の方も地方自治体から教育事業を引き受けて、そのオンラインセーフティについてやるようなことっていうのは、NPO、非営利型の組織でよくあることですし、それが影響を与えるということはないだろう、ということで、御了解をいただいているところです。
SIAからの独立性については、いろいろな任命とか予算の措置をするのがSIA事務局側ではないかということに関しては、これまた先ほど冒頭の質問と同じで、法人格を持っていないとできないことがたくさんある、それは当然、SIAでやるということになります。
その上で、そうしてしまうと、JFCの独立性が損なわれるのではないかという懸念に対する答えとして、私たちが設置しているのが、運営委員会と監査委員会、まさに宍戸先生にもご協力いただいている監査委員会の方の話になります。
運営委員会に関しましては、委員の先生方が皆さんものすごくお忙しい方なので、実は毎回時間の調整、2時間とか3時間とかをかけていただく時間の調整で、毎回かなり苦戦をするんですけれども、だいたい毎回時間の調整だけで一カ月以上かかったりするんですけれども、数カ月に一回というペースでしていただいております。
そこにおいては、まず第一に、その期間の間にやったファクトチェックに関して私の方から報告をさせていただいて、例えばこういうな意見も寄せられたので、こういう訂正をしましたというふうな話をしたり、逆にこういうふうな意見も寄せられたけれども、この意見に関してはどう対応したらよいでしょうかというふうに運営委員会の方々に私からアドバイスを求めたりですね、そういうふうなこともしますし、一方でファクトチェック以外のことも我々はやってますので、例えば、先ほども説明したようなその講師養成講座を開きたいと、これについても意見をいただきたいというので、運営委員会の方々の意見をいただいたり、そういった運営全般に関して話をしたりしていただいております。
日々のファクトチェック、ここはちょっと誤解なきようにクリアにしたいなと思うんですけれども、日々の編集部の運営に関しては最高責任者は私です。
なので、私に対して運営委員会から個別にこれをファクトチェックしなさい、みたいなことはありません。
ファクトチェック対象に関して運営委員会が権限を持っているというのは、後から見て、これはファクトチェック対象として問題があるんじゃないかとかですね、こっちをファクトチェックすべきではないか、例えば、能登半島地震のときにですね。私たち最初にコンテンツを出したのが1月3日なんですけれども、運営委員会の方からはやっぱりこの問題に関しては1日に出さなければなられなかったのではないか、というような厳しい御意見、アドバイスをいただいたりですね、それによって、私たちが新しい体制とか対策を編集部の方で考案するみたいな、非常に厳しいけれども参考になる御意見をたくさんいただいて、修正をしているところです。
検証対象について、スローニュースの記事のインタビューの中で、私が不満を持っているような御理解をなされたようですが、今度、私は自分の発言した内容を全部公開しようと思ってるんですけれども、あの質問に対して。
私が申し上げたのは、私は違う意見を持っています、私はメディアも範囲に含めるべきだと、最初からずっと主張しているし、今もそう思っている、と。
ただし、私の意見が全て通るというのはそれはガバナンスとしておかしい組織である、なので運営委員会の方々の意見、それを受けとめ、それはそれで一理あると、私は何度もその運営委員会でも言ってるので、一理ある、私は納得しないが、ただし運営委員会の方々の総意で、この組織のガバナンスとしてそういう決定が下されるのであれば、私は従います、ということを常に言っているので、最後の一言、かぎかっこの最後に「仕方ない」という言葉がありましたが、あれ、かなり違う文脈で言った「仕方ない」が付け加えられて、間に中略で、長い中略があるんですけれども、なのでそこはちょっと誤解なきように受け止めていただけたらなと思っております。
3つ目の公開についてなんですけれども、これは本当に重要な御指摘で、私たちも実はそういったことについても議論しなければならないなというふうに思っているところです。
ただし、やっぱりですね、記事の検証の内容を具体的に扱うので、何から何までを公開するということは非常に慎重にならざるを得ない、なぜなら、記事には書いていないものもやっぱりあるわけです。もしくは、話を聞いて、これはちょっと記事には書けないから検証自体を取りやめるような事態もあるわけです。
それは権力がかかるとか、そういうわけではなくて、関係者の方々に、想定以上の迷惑がかかる可能性があるとか、そういった場合です。
そういった場合に関しての情報を全て公開するわけにもいきませんので、そこに関してはですね、先ほど奥村さんのご意見入れつつ、公開範囲を議論するということになるのかなというふうに思っております。
僕の方から以上です。
宍戸 座長
ありがとうございます。曽我部先生からもご発言のご希望あるのでお願いいたします。
曽我部真裕(京都大学教授) 構成員
ちょっとどういう立場か、この検討会構成員という意味よりは、JFC運営委員長としてごく簡単に補足をさせていただければと思います。
これは走りながらやっていることですので、ちょっとまだヘビーな点もあるというのは、御指摘の一部は妥当するかなとは思っておりまして、そこは改善していく必要があるのかなと思っているってのは全体的なことですが、開催状況についてはこれも古田さんからありましたが、二、三ヶ月に一回ぐらいということで、ちょうどなかなかスケジュール調整が難しくて、それもご説明あったとおりです。
内容については運営全般についてその時々の重要なイシューを議論しているということで、もちろん古田さんからあったようにですね、編集部の独立性というのがありますので、個別のファクトチェック記事について、とりわけ何か指図をするというようなことは控えているということで、事後的に意見交換をして改善につなげていただくと、そういうのを主体としております。
それから公開について、透明性についてですけれども、まずJFC自体の収支報告もJFCのサイトで公開しております。SIAとは別に収支報告は公開しております。
それから5%ルールの点も、5%以上の寄付者の公開という形では申しておりませんが、実際にJFC収支報告の中で、金額を含めてどなたからいくらもらっているのかで公開しておりますので、5%以上の寄付者はこれですという記載がないということにとどまるのかなと思っております。
それから、その他議事録の公開等についてはですね、そこまではなかなか難しいかと思うんですが、何らかの公開の充実というのは検討しているところということで、そういった形で御指摘は真摯に受けとめさせていただきたいと思います。
以上です。
宍戸 座長
ありがとうございます。
古田 編集長
ひとつだけ、回数を答え漏れていたので、回数は今年2回で、発足以来13回です。
宍戸 座長
ありがとうございます。
奥村先生の方からさらに、更問いなり質問あるかもしれませんけれども。
奥村 構成員
時間の関係もありますので、あとは文書で・・・ありがとうございました。
宍戸 座長
ありがとうございました。
それで渋谷先生の方から・・・後ほどメール等でと言っていただいたので、そのようにさせていただければと思います。
本日もう一社ですね、大変重要なプレーヤーをお招きしていて、そちらを優先させてください。大変申し訳ありません。
(以下、略)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?