旅に出るために「学生」を捨てた話


学生という身分が非常に強い力を持っているということは言わずもがな全国民が知っていてしかるべきだろう。小学生は最高だし、中学生になれば異世界転生もできる。高校生になれば軽く世界を救え、大学生はダイビングをしながら酒を飲める。学生であれば四肢が少し吹き飛ぼうが即座に再生し、どんな悪とも拳一つで分かり合える。


そう。学生は全てにおいて特別である。


先日私は新潟大学をめでたく卒業し、めでたく無職になったわけだが、実を言うと大学院の進学は3月上旬時点では決まっていた。まだまだ学生気分でライスのおかわりもタダだった。そんな時に部活の顧問から連絡が来た。


「旅についてお知らせすることがあるので一度研究室の方に来てください。」


そう。私は5/1からパリ—ダカールの間をスーツで旅し、アフリカ大陸をを喜望峰まで自転車で南下する計画立てていた。

何かは知らんが広報室にお願いしていた新潟の新聞やメディアの取材のお知らせかな?そう思い軽い気持ちで研究室へ赴くと、顧問の先生は第一声に、


「君は旅に出るか、学生の身分を捨てなければならない。」


そう言った。



ん?ナンテイッタンデスカ??なぜボクは急に人生の岐路に立たされているんですか???いやその前に学務に旅の計画書提出したときにそんなこと一言も言われなかったろ。出したの一月以上前だし。どういうことや?

というのも新潟大学としては外務省が公表している危険度レベルにおいて、2以上の国に学生が行くことは認可できないとのこと。もし新潟大学生としてどうしても行きたいのであればルートを変更して、安全な地域を通るしかないということであった。


いやいやいや言うの遅いでしょ。


航空券もとってあるしmont-bellからの支援も決まっている。それに第一、この計画は私が一番やりたいことをまとめて出した結論である。それを受理して一月以上経った今、文句つけてくるとは一体何なんだ?


込み上げる反論を押さえつけ、顧問の話を聞く。まぁ学務からの伝言だし部活の顧問に文句を言ったところでなんの解決にもならない。顧問の提案はこれだった。


1.そのまま院進学を止め、無職になり一年後に就活か院の受験をする。


2.世界にはアフリカ以外にも面白いところはあるから今回は別の計画を立てて院に進学し休学して旅に出る。

3.そもそも旅に出るのを止める。


3は論外。2も少し考えたが、今アフリカに旅立てなかったらこれからの人生で一年間も自由に時間を使える機会は果たしてくるのか…?
たぶん普通に社会人をしている間は来ないだろう。そう考え、自分の答えは1になり、学生を捨てることを決意した。これからは麺の大盛も、道端で想い人に愛を叫ぶことも出来ない。無職だから。





自分が所属する研究室の教授に報告に行った。今になってそのような連絡をしてくるのは社会人として考えられない。とのことだった。




学務に報告に行った。そのような計画性の無い人間は社会人として通用しないとのことだった。



短時間で二回も社会人落第の謂れを受けてしまった。





はぁ???????
大学の教授と職員となどという1/3程度しか社会人として呼べないような身分がよく言うな。ちゃんちゃら可笑しいわ笑。まぁそれはそれとして、彼らが言う「社会人」とは一体何なのだろうか。



社会人…社会人とは社会に参加し、その中で自分の役割を担い生きる者の
    ことである。



ということらしい。
ここにおける社会は果たして何を指すのか、個人的にはドラマ「ライフ」ばりの女子高のドロドロの社会に一度所属してみたいところではあるが、学生は除外されるらしく、それは叶わぬ夢に終わった。



社会性について考えてみる。



他人を尊重し、勝ち負けを競い合わない。


他人を傷つけず、分かち合い共感する。


豊かな者が、貧しい者に施しをする。



これが特に当てはまる者は何か。





そう。






ゴリラだ。






つまり私は学生という身分を捨て、ゴリラになるというわずかな希望も閉ざされてしまった。夢も希望もゴリラも何も無い。これからどうやって生きてゆけばよいのだろう。誰に聞けばよいのかも分からない。




こんなときゴリラは優しく答えを教えてくれるだろう。




なんたってゴリラは強いから。

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