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「店が客を選ぶ」のは、アリかナシか。

今週、ひさしぶりに『AbemaPrime』に出演した。特集は、「ラーメン店の“ながら食い”禁止はアリかナシか」というもの。東京・高田馬場にあるラーメン店『でぶちゃん』の店主である甲斐康太さんがTwitterで次のようにつぶやいたのがきっかけだった。

このつぶやきに対して、ネット上では、「マナー悪いし禁止でいいと思う」「待ってる人にも店にも失礼」と賛同する声もあれば、「ラーメンは昔からマンガを読みながら食べる定番」「行列店は店員からの圧が強くて苦手」と否定的な声も。賛否両論が渦巻いた。

番組には、甲斐さんご本人が出演してくださった。

「全面的に禁止ということではなく、状況によりけり。食事の時間を楽しんでいただくのは良いことだが、他の方もいる時は考えていただきたいというのが本音だ」

いわゆるラーメン店の店主にありがちな、「頑固オヤジのこだわり」という感じではなく、いたって理性的で筋の通った話であり、私を含めたスタジオ出演者もほぼ甲斐さんの主張に賛同していた。

そのなかで、甲斐さんから興味深い指摘があった。

「(先日も)低姿勢でお伝えしたのが1件あったが、それでも怒って帰ってしまった。だから伝え方の問題ではないと思う。本質はたぶん、飲食店側がお客さんにNOを提示するのがアリかナシか」

この指摘から、議論は「店が客を選ぶことはアリかナシか」というテーマへと発展した。「客が店を選ぶ」のは当たり前のことだが、「店にだって客を選ぶ権利がある」という考え方はどこまで正当性のあるものなのだろうか。

私は番組でこのように発言した。

「店側が“ながら食べ”禁止を設定するのはアリだと思う。ただ、だからと言って『店が客を選ぶのはアリ』かというと、そこは飛躍しすぎかなと思う」

「この問題を考えるにあたって大事なのは、客側が態度や属性を変えたり、選択したりすることができるのか。たとえば、“ながら食べ”をしている客はそれをやめるという選択肢があるが、たとえば先日もTwitterで話題になった『外国人お断り』『車椅子お断り』といった本人に変えられない属性もある。それによって客を選んだり、排除したりというのはナシだと思う

日頃から“多様性”をメッセージに掲げて活動する私だからこそ伝えなければならない、大切な視点であると思っている。

さらに話題は、『食べログ』などの「グルメサイト」について。一時期、あまりにサクラが多い、不正操作されているといった話題があったことも受けて、ほとんどの出演者が「いまはGoogleのレビューを参考にしている」と返答。

ただ、それでも私はグルメサイトを重宝しているという話をした。というのも、たとえば『食べログ』には「車椅子で入店可」というチェックボックスがあり、そこにチェックを入れると、どの店舗がバリアフリーになっているかを知ることができるからだ。

ただし、そこにチェックを入れると厳しい現実が待ち構えていることも事実だ。たとえばターミナル駅周辺の地図には無数の飲食店が表示されるのだが、ひとたび「車椅子で入店可」とチェックを入れると、たちまち店の数が減ってしまう。肌感覚で言えば、1/10くらいまでに減少してしまうイメージだ。

私のこうした話を目をつぶってじっと聞いてくれていたのは、『でぶちゃん』店主の甲斐さんだった。甲斐さんは特集コーナーが終わると、スタジオを去る際に、私に向かってこんな言葉を伝えてくれた。

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