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僕らはみんな、村本大輔を目指すべきだ。

乙武 洋匡
この記事は、2019年3月に公開されたものです。当時は有料記事でしたが、今回は無料公開させていただきます。

2018年10月から、『AbemaPrime』というニュース番組で月曜コメンテーターを務めさせていただいている(現在は水曜MCを担当)。その月曜でMCを務めているのが、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんだ。

村本さんといえば、すっかり炎上芸人の名を欲しいままにしている。毎日のようにフォロワーと激しい応酬を繰り返すだけでなく、ときには高須克弥さんや百田尚樹さんといった保守思想の方々を挑発してはリプライ欄におびただしい数の批判コメントを書き込まれている。

村本さんとは友人関係にあるが、つねに意見が同じとも限らない。番組でも何度か意見を戦わせることがあった。しかし、そんなことは重要ではない。たとえ異なる意見を持っていようが、私は村本さんから多くを学んでおり、もっといえば、僕らはみんな村本大輔を目指すべきだとも思っている。

す、すごい……。この時点ですでにアンチ村本からのすさまじいまでの圧を感じている。

「あんなやつを目指せとはどういうことだ」
「むしろ、あいつみたいにだけはなりたくない」

もう、彼らのセリフまで脳内で自動再生される始末だ。

たしかに、のべつ幕なしにケンカを売りまくるスタイルはいかがなものかと思うし、よく酒の勢いに任せてツイートするので言葉が必要以上に荒くなるという悪癖もある。それでも私は、もう一度言う。

僕らはみんな、村本大輔を目指すべきだと思っている。

   〜〜ここでCMです〜〜

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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.mu/h_ototake/m/m9d2115c70116



村本さんが政治や社会問題に興味を持つようになったきっかけは、私もよくお世話になっている『ワイドナショー』(フジテレビ)出演だったという。スタジオで何も話せなかったとなれば二度と番組に呼ばれなくなるため、それまで興味を抱いたこともなかったニュースにかじりつき、事前に勉強したのだという。

そこでのコメントが評価されたのか、その後、『AbemaPrime』月曜MCに抜擢。日々のニュースに触れ、ときには現場で取材に当たるなどするうち、「もっと知りたい」「これは放っておけない」という気持ちが芽生えるようになったという。

好奇心という導火線に火がついた村本さんは、誰にも止められらなかった。少しでも時間が空けば現地に足を運び、知りたい分野の本を読み、堀潤や私を捕まえては、知りたいことについて徹底的に質問攻めにした。それが深夜だろうとおかまいなしだった。

当時の村本さんの口グセは「僕は本当にバカだから」だった。とにかく勉強が嫌いで、ずっと学ぶことから逃げてきたのだという。しかし、村本さんのその言葉を聞くたびに、私はある違和感を抱いていた。

「たしかに、いまの村本さんは無知ではあるかもしれない。でも、決してバカなんかじゃない」と。

村本さんが『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)に出演して大炎上したのは、まさにこの頃だった。番組中、東京大学・井上達夫教授から「キミ、(憲法)9条2項を読んだことがあるの?」と問われ、「読んだことないです」と回答。同氏から「少し自分の無知を恥じなさい」と叱責されたのだ。この場面にネット民が激しく反応。「無知な状態でしゃべるなよ」「知ってから討論に出ようね」などと大いに嘲笑や非難を浴びてしまった。

ご存知の通り、『朝まで生テレビ』といえば、卓越した専門知識でガチガチに理論武装した論客たちが長時間かけて殴り合う討論番組だ。そこに、ほぼ丸腰と言っていい村本さんが参加し、「僕は何も知らない。だけど、こんな疑問を抱いている」という姿勢を隠さずに出演したことで、一部の共演者や視聴者の怒りを買ったことは間違いない。

だが、その一方で「村本さんは視聴者の思いを代弁してくれた」という声があったことも否めない。私たち視聴者のほとんどは、出演している論客よりも知識に乏しい。ともすれば、あまりに専門性の高い議論が繰り広げられ、視聴者が置き去りにされてしまうこともある。そんなとき、出演者の中に彼のような存在が一人でもいて、「いまのはわからない」と言ってくれれば、議論が平たく解説されるという効果もあるだろう。

さて、ここでネット民が発した批判の声に戻ろう。

「無知な状態でしゃべるなよ」
「知ってから討論に出ようね」

これらは、一見、正論に見える。でも、と私は思うのだ。

「無知な状態から脱した」とは誰が判断するのか。
「自分は討論できるほど“知る”ことができた」とはどんなレベルなのか。

どちらも答えはないように思う。「知るべきこと」はこの世の中に際限なく広がっており、どんな知の巨人であっても「私はもう十分に知った」などと思い上がることはないはずだ。もっと言えば、知性を高めていけばいくほど自分には知らないことがまだまだあることを思い知らされるのではないか。

村本さんを見ていると、「知」を舞台にしたロールプレイングゲームの主人公のように感じられる。はじめは「ひのきの棒」と「布の服」しか装備しないまま荒野に出て、文字どおり気鋭の論客やネット民というモンスターたちから袋叩きにされる。それでも彼は怯まず、また旅に出る。

彼は本当によく勉強する。いま読んでいるのは、アメリカの哲学者ノーム・チョムスキーの『誰が世界を支配しているのか?』。中を開けば、あちこちに付箋がつけられ、アンダーラインがびっしりと引かれている。以前の村本さんは、たしかに無知だったかもしれない。だが、いまの彼を見て、無遠慮だとは思うけれど、無知だとは思わない。

それでも村本大輔が嫌いだ、という人もいると思う。それは個人の好き嫌いの問題だし、彼もすべての人から好かれることなど望んでもいないだろう。ここで大事なことは、「あいつは無知だ」と嘲笑されていた村本大輔の装備は、瞬く間に「ひのきの棒」や「布の服」ではなくなっているという点だ。短期間で、どんどんその装備をアップグレードさせている。

さて、ここまで他人のことをとやかく言ってきたが、私自身どうだろうか。「ひのきの棒」や「布の服」よりは多少マシな装備かもしれないが、それでもたかが知れている。そして、村本さんほど貪欲に知識のアップグレードを図り、知性を磨こうとしているかと問われれば、答えに窮してしまう。

学んだ結果、どのような思想を持つか。それは各人に委ねられるべきものだ。だが、まず重要になってくるのは学ぶこと。知ろうとすること。この尺度において、村本大輔はある意味、“知の巨人”と言えるのかも知れない。

誰もがみんな、はじめは無知だ。それを認めることには、いささかの勇気がいるし、そこから学び始めることには、もっと勇気と根気がいる。だから、その勇気と根気を携えて知の荒野を突き進む彼を、私は秘かにリスペクトしているのだ。

村本さんは、今月25日で3年間MCを務めたこの番組を卒業した。ご本人は「僕は何を仕事にしたいんだということと、僕は何を伝えたいか……と思うことがある。いったん、ちょっと自分のやるべきこととかを見直したい」とコメントしている。

村本大輔の「次」が気になる。

 いまバズっている村本さんの記事。とても大切なことが書かれているので、こちらもぜひ。

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