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「教師のいない学校」は成立するのか。

先日、パリ発のエンジニア養成機関「42」の東京校である「42Tokyo」を見学してきました。

学費完全無料、24時間施設開放など、「42」にはいくつも特徴があるのですが、いちばん驚かされたのは「教師がいない」こと。生徒同士の学び合いで学習を進めていくというのです。全部で9段階あるカリキュラムごとに課題が設定されていて、それを生徒同士が「教える」「教わる」という関係性を築きながらクリアしていくのだとか。

その話を聞いて浮かんだのは、「とはいえ、エンジニアとしての知識やスキルの高い生徒に“教える”需要が殺到してしまい、一方的な関係性になってしまうのではないのか」という疑問。見学時に対応してくれた在校生にその疑問をぶつけてみると、「エンジニアに必要なスキルは多岐にわたり、それぞれどこに強みがあるかは人によって違う。だから、トータルで一方的な関係になるということはないですね」との返答。なるほど、納得。

こうした学び合いは、なんと進学後だけでなく、入学試験でも重視されていると言います。というのも、Piscineと呼ばれる4週間にわたって行われる試験では、出された課題について「同じ受験者に教えを乞いながら取り組む」ことも許されているのです。

つまり、入学時には「プログラミングの知識」より、「他者と関わる意欲やスキル」が問われるため、必然的にコミュニケーション能力が高いエンジニアが養成されていくというのです。なるほど、パリ本校のあるフランスでは名だたる企業のCTO(最高技術責任者)を「42」出身者が総ナメにしつつあるという話も納得です。

ちなみに「42」という名前の由来は、イーロン・マスクも影響を受けたという映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』の終盤に出てくる“ある数字”なのだとか。今度観てみようかな。

この「42」は、「世界で最も革新的な大学 2024」でパリ本校が第6位にランキングされたり、おとなり韓国では政府が全面的に資金をバックアップしていたりと世界的に注目が集まっています。

しかし、日本では大学の基準を満たしていないため、あくまで「民間のエンジニア養成機関」という扱い。そのため、まだまだ進路の選択肢として候補に挙がりにくい現状があるようです。特に進学実績(○○大学に○人合格!)にこだわる高校などは積極的に勧めようとしないかもしれません。

ただ、エンジニアとして日本のみならず世界で通用する人材を目指す人には、とても有力な学びの場だと思うので、まずは多くの人に「42 Tokyo」の存在が知られていくといいなと感じました。

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