連載小説『ヒゲとナプキン』 #14
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玄関のドアに鍵を差し込み、できるだけ音を立てないようにそっと回した。心の中で、「一、二の三」と唱えながら、静かに開けたドア。廊下はもちろん、リビングの電気も消えている。
深夜とも早朝ともつかない午前四時。忍び足で廊下を進み、リビングへと続くドアのガラス窓から中の様子を窺う。サトカがいる様子はない。体を反転させ、寝室のドアを開ける。トイレにも、浴室にも、その姿は見つからなかった。
どこかで胸を撫で下ろしている自分がいた。怒りと悲しみ。申し訳なさと愛