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元人事×HSP当事者が考える、敏感な人が上手く職場で要求する方法

周囲のことを考えて動いているのに、職場でなかなか報われません。
「もっと自分を評価してほしい」と職場に要求したいけど、周囲のことが気になって出来ません。
職場に要求すると、自分勝手と評価されるのでは?と考えてしまいます。

敏感な気質のHSPの方は、職場で思っていることがなかなか言えません。
ましてや、
「異動させてほしい」
「仕事が忙しすぎる」
など、職場に対して要求なんて出来ないと思われているのではないでしょうか。

今回は、HSPの方が職場で上手く要求する方法を考えてみます。

今回の記事で得られることは2つです。
①元人事が見た、職場でなされる社員からの要求の現実が分かります。
②HSPの方のための、会社で上手く要求する方法が分かります。

HSPとは「特に敏感な人」のことです。詳細はこちらに書いています。

■職場への要求をめぐる現実

職場には様々な人がいます。
いろいろな人が職場に様々な要求をしています。
人事にはそういった声がたくさん入ってくるのです。

あの上司が嫌いなので、異動させてください。
あの人と一緒にいたいので、同じ部署にさせてください。
あの人は嫌いなので席を変えてください。
何であの人より、自分の方が給料が低いんですか?給料を上げてください。
仕事が忙しすぎるので仕事を減らしてください。

職場の実情とか自分の立ち位置とか、そんなことは全くお構いなしで要求する人はいるのです。
HSPの気質がある私にとっては、「絶対そんなことは言えない!」というようなレベルです。こんなことを言う人がいるのか?と思いました。

でも、なされる要求が全てそのまま通ることはありません。
必要性と職場の実情を確認した上で、判断がなされます。
また、無理な要求を繰り返してそれが度が過ぎると、職場内のトラブルに発展してしまうこともあります。

しかし、ここにもうひとつの側面があります。
無理な要求をし続けていると、実現はしなくても少しずつ要求した方向に現実が引っ張られていくのです。
これは「アンカリング」という状態です。

アンカリングとは認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のことをさす。 係留と呼ばれることもある。(出典:Wikipedia)

最初の要求が交渉の出発点になるのです。
だから、結果として最初の要求に近いところに落ち着いてしまいます。
このアンカリングがあるので、一般的に交渉は最初に難しい要求を突きつけるのです。

また、要求する人としない人との差が大きすぎるのです。
無理な要求をする人はとんでもない要求を躊躇せず言っています。
そんな人がいると、要求するのは悪という雰囲気になってしまいます。
そうすると要求しない人は更にしなくなるので、無理な要求に引っ張られた結果に落ち着くのです。
主張しない人が、無理な要求する人の尻拭いをしている状態です。
更にそんな中で、別の要求がそのまま通ってしまうこともあるのです。

これが現実です。要求しないと不利という状況が生まれています。

■HSPはどうする?

この現実を、自分の思っていることを言うのが苦手なHSPの方はどう理解したらよいでしょうか。
HSPの方のための本、武田友紀さんの「繊細さんの本」では、こう書かれています。

HSPの最大の罠は「相手の”わからない”という感覚が、分からない」ということなのです。
「相手も自分と同じように感じているはず」と思って非・繊細さんに接すると、思わぬすれ違いが生じ、誰も悪くないのに傷ついてしまうことがあるのです。

みんな自分と同じように周囲のことを気にしているはず。
だから周囲に配慮して無理な要求はしないだろうと、HSPの方は考えています。

しかし現実は先ほどのとおり。そんなことはありません。

この現実を知ると、自分がここまで配慮して要求を控えているのに全く報われないと絶望感を感じるかもしれません。

私も人事で仕事をするまでは、常に職場に不満を感じていました。
何で自分がここまで考えているのに分かってくれないのかと。

しかし、人事で仕事をして分かりました。
自分が感じているこの感覚は、他の人にはない。分からないんだ。
だからみんな深く考えずに要求できているのかと。

これは衝撃でした。でも少し気が楽になりました。
悪意ではない。分かっていないんだ。
分かっていないんだから、自分の要求も伝えないと分からないんだと思いました。

このHSPの方とそうでない人の感覚の違い。
これを理解することが、上手く要求するための出発点になるような気がします。

■元人事が考えた、上手く要求する方法

敏感で周囲を気にしてしまうHSPの気質に合った方法で、上手く要求できるようになりましょう。

要求するハードルを下げる

HSPの方が要求する際のハードルは、「自分の都合を言ってわがままと思われないか?」などと、人の感情や思考に敏感に反応してしまうことです。
でも、要求することは悪いことではありません。
要求することは、お互いのことを理解するためです。
HSPの人が「これを言って大丈夫かな」と思うことは、HSPでない人にとって全く問題ないものです。
要求を伝え合って、お互いの希望をすり合わせるのです。
すり合わせの材料を提供すると考えると、ハードルが少し下がるのではないでしょうか。

要求が苦手な人は、相手に会って言葉で伝えるのが難しく感じるかもしれません。
書面で希望を伝える機会があれば、逃さずに書いて提出するようにしましょう。

周囲の人に、日頃から自分の希望を言っておくのも効果的です。
周囲の人が自分の希望を知っていれば、伝わるかもしれません。もし伝わらなくても、実際に伝える時に自分の考えを説明しやすくなります。

「この人は何を望んでいるのか?」と会社は思っているものです。
平素からその人の状況や希望が分かっていれば、会社としても準備もしやすいのです。
だから、自分の希望は出来るだけオープンになっている方がいいのです。

通りやすい要求・通らない要求

どんな要求が通りやすいのでしょうか?具体例をいくつかあげてみます。

要求は具体的にしましょう。「勤務地を○○にしたい」「○○の仕事がしたい」など明確な方がいいです。

要求を一つに絞ることも有効です。2つ以上あっても優先順位を明らかにしましょう。

希望が叶わなくても、何度も伝えましょう。
要求は、受けた方が本人以上に覚えているものです。その時は無理でも、何とか叶えられないかと考えているのです。

本当に困っている時は、率直に「助けてほしい」と言いましょう。
会社としても、率直に助けを求めてくれた方が動きやすいのです。

対決姿勢を見せないことも大切です。
「この要求が通らなければ辞めます!」「訴えます!!」だと会社も身構えます。そして反発されるでしょう。

逆に、どんな要求は通りにくいのでしょうか?
抽象的な内容、単なる不満、過大、頻繁に変わる、突然要求される、感情的に伝えられる。などです。
こういった要求は、会社としてもどうしていいか分かりません。
仮に叶えるとしても、多くの手順を踏まないといけません。
そうなると優先順位が下がり、結果、叶う可能性は低くなります。

自分が何を望むか。何を優先させるのかを考えておく

自分の要求を明確にしておくことは大事です。
日頃考えていなければ、すぐには浮かびません。
今の自分の目標、課題、日頃の生活、家族の状況などを確認して、何を要求するかを日頃から考えておく。その優先順位も考えておきましょう。

■まとめ

HSPの方のための、上手く要求するための方法について考えてきました。

私は、むやみに職場に要求することが良いとは思いません。
職場との関係をどうつくるかが大事です。
これまでの会社に所属して尽くすのではなく、自分の意見を伝えて会社と良い関係をつくるという感覚が大切だと思います。

そのためにも、自分がどうしたいかがまず第一です。
自分の心の声に耳を傾け、自分の思いを職場に伝え、職場と良い関係をつくっていきましょう。


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