マガジンのカバー画像

職人弟子入り日誌

6
学生時代から京都の染め職人に弟子入りし、新卒で染色工房に転がり込んだ23歳の体験記です。
運営しているクリエイター

記事一覧

職人弟子入り日誌 1日目

「やめておけ」 工場への初出勤の日、予定していた時間よりも随分と早く起きてしまった僕は、いつもは飲まないはずのコーヒーを飲みながら、出発までの時間を過ごしていた。ちらちら時計を確認するが、なかなか時間は進まない。そんな状況に僕はしびれをきらして、「だいぶ早いけど、まあいいか」そう思って家を出た。家から工場までの道のりは自転車で30分ほどかかる。いつもは中須さんと一緒にバスで工場まで行っていたので、

もっとみる

職人弟子入り日誌 0日目⑤

~職人に弟子入りするまで~

⑤職人との出会いと決意

 まわりの人の話し声がどんどん聞きとれるものになり、看板や景観も見慣れたものに変わっていく。そうやってまた長い時間をかけて、僕はトーゴから日本へ帰ってきた。帰国するとすでに大学の夏休みは終わっていたので、僕はあわてて履修登録を済ませ、いつもの大学生活に戻っていった。ただ、いつものような生活に戻っても、僕の生活態度はトーゴに行く前とは異なってい

もっとみる

職人弟子入り日誌 0日目 ④

~職人に弟子入りするまで~

④トーゴで学んだこと

 ドタバタしながらも様々な手続きを済ませ、僕は中須さんとトーゴ共和国へ向かった。片道30時間くらいのフライトを経てトーゴに到着すると、照り付ける日差しの中、空港にはガソリンのにおいが漂っていて、なんとなくではあるが「アフリカに来たんだ」と実感したことを覚えている。そこから相席タクシーに乗りこみ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で目的地のホテルへ向かったの

もっとみる

職人弟子入り日誌 0日目 ③

~職人に弟子入りするまで~

③トーゴへの出発

 中田さんに「ちょっと来て」と呼ばれ、連いていった先にいた感じのいいお兄さんの正体は、アフリカのトーゴ共和国と京都をつなぐ事業をしている中須俊治さんだった。中田さんが「この子、就職活動で悩んでるらしいで」と言って僕を紹介すると、中須さんは「僕も学生時代シューカツで悩んでたんです」と返して、僕と話し始めた。

僕:「はじめまして!立命館大学の越本大達

もっとみる

職人弟子入り日誌 0日目 ②

〜職人に弟子入りするまで〜②学び場とびら

 勢いで就活塾をやめることにしたのはいいものの、そこから何をしたらいいかわからなかった僕は「就職活動で悩んでて…」と、いろんな大人に相談してみることから始めた。相談に乗ってもらった人のなかに「1か月間、ごみ拾いでもしてみたら?」と提案してくれる人がいたので、「せっかくアドバイスをもらったし、ちょっとやってみよう」と思い、友達を誘ってゴミ拾いをした。そんな

もっとみる

職人弟子入り日誌 0日目 ①

〜職人に弟子入りするまで〜①就活塾をやめる

 今回、就職活動をやめて京都の染め職人さんに弟子入りすることにした。同級生の多くがリクルートスーツを着て名の知れた企業を目指す中で、僕は染め職人を目指すことに決めた。

どうして僕がこの決断をするに至ったのか、染色について知らないことだらけで、きっとこれからたくさんの壁にぶつかっていくと思うが、その時の自分を少しでも励ませるように、まずはそこから記録し

もっとみる