侮辱罪の法定刑に懲役が加わった件
こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。
ご覧いただきありがとうございます!
今回の記事では、侮辱罪の法定刑に懲役が加わった件をお話しします。
あなたの生活には1mmも役に立たないかもしれません(前回も同じこと言ったような)。
そもそも、お前誰やねんという方は、こちらの記事をご確認ください。
この記事の内容
この記事では、侮辱罪という罪がどんな行為を対象にしているのかと、何が変わったのという内容です。
法律って面白いシリーズ第2弾。
侮辱罪ってナニ
一言で言うと、「この馬鹿野郎」とか「ちびデブ!」とか、「死ねこのクソガキ!」みたいな暴言を、みんなが見える場所で行う行為です。
一応、条文も載せてみましょうかね・・・
保護法益(この罪が守ろうとしているもの)
ところで、刑罰ってなんであると思います?
悔しいから?
ひどい奴は罰しないといけないから?
目には目を?
この部分は、専門家の中でも、超深遠な議論があるところなので、興味がある方は調べてみてください。「刑法(刑事罰)の存在意義」についての議論です。めっちゃ難しいし、頭おかしくなりますので、嫌な方は辞めといてください。
ただ、この理解は共通なのですが、少なくとも、刑法は、「道義的に悪い行為」という類型ではなくて、「その罪によって守ろうとする利益(保護法益)」という類型を念頭に作られています。
侮辱罪の場合、名誉感情(悔しい、ひどいという気持ちが害されないこと)が保護法益です。
つまり、侮辱という行為に刑事罰を与えることで、そのような行為を抑止して、名誉感情を守ろうという価値判断です。
「侮辱」って
国語辞典では、「侮辱」とは、「ばかにして、はずかしめること」と定義されています。
刑法上は、「侮辱」とは、「他人の人格的価値を否定する判断を表示して、その名誉感情を害するような一切の行為」のこととされています。
え、なんで違うの?
ところで後者むずかしすぎひん??
という疑問は、とりあえず棚の上にあげておいてください。苦笑
「公然と」って
「公然」は、①特定多数に対して、又は②特定少数でも他に広まる可能性がある場合、③不特定に対して行うことです。
①は、たとえば会社の同僚100人に言った
②は、たとえば飲みに行っている1人だけに言ったが、おしゃべりだった
③は、Twitterに鍵なしで書き込んだ
などです。
(①や②の人数やデティールは、状況によって判断が異なるので、人数が絶対とかではありませんよ!)
と、なると、夫と喧嘩して「この馬鹿野郎」と、家の中で、本人に対してだけ言い放った場合には、対象外になると思われます。
「事実を摘示」って?
具体的な事実を伴わないということです。
「名誉毀損罪」という別の罪が、「事実を摘示して、名誉(社会的評判)を害する」行為を罰しています。
たとえば、「A部長は、同じ部のBさんとW不倫しているようだ」という内容のメールを同僚にたくさん送りつけたり、飲み会で叫んだりした場合には、「侮辱罪」ではなくて「名誉棄損罪」が成立します。
いったんまとめ
ここまで読んでくださった辛抱強いあなたにまとめです。
侮辱罪は、「ばーか」とか「このくそはげ」みたいな行為のことで、ポイントは、たくさんの人か、不特定の人、たくさんの人に伝わる可能性があるところで行われた、名誉感情(悔しい)を害する行為に成立します。
「A部長はBと不倫している」みたいな、事実の指摘があって、それが伝われば社会的な評判も落ちる行為は、別途、名誉毀損罪という罪が用意されています。
うーん、分かりやすい!!!(自画自賛)
で、何が変わったの??
端的に、刑罰が変わりました。
これにつきます。
以上終わり!
・・・と言ったら怒られそうなのでちゃんと解説します。
①懲役・禁錮が追加!
上記が、刑法上準備されている、身体の自由(移動の自由)を奪う刑罰の種類です。
いままでは、拘留しかなかったのですが、懲役・禁錮が追加されました。
簡単に言うと、侮辱罪を侵しても、最大29日で解放されていたのが、1か月~1年の範囲で、拡大されました。
※「勾留」は、読みは同じ「こうりゅう」ですが、全く別の制度です。今回は省略。
②罰金が追加!
科料 1000円以上1万円未満
罰金 1万円以上
上記が、刑法上準備されている、財産を奪う刑罰の種類です。
いままでは、科料しかなかったのですが、罰金が追加されました。
簡単に言うと、侮辱罪を侵しても、最大9999円を納付すればよかったものが、1万円~30万円の範囲で、拡大されました。
※「過料」は、読みは同じ「かりょう」ですが、全く別の制度です。今回は省略。
ちなみに、「若しくは」が3回、「又は」が1回出てくるのですが、これには理由(法則)があります。これを見破った天才は、コメントするか、直接僕に自慢してください。
サンプル動画
僕は、今回の記事のように、全く法律を勉強したことがない人にも、法律の面白さを伝えたいと思っており、今、クリエイター向けの著作権講座を収録中です。
こちらの記事もご覧ください。
で、そのサンプル講義動画を載せちゃいますので、見ていただいて、感想や気づいたところがあれば教えてください!
前回見ていただた方、今回は別の動画ですー!!
記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。