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今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今日から、数回に分けて、いつもより少し真面目な企画を開始します。

今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)です。

さて、なんか難しそうな言葉が出てきましたよねぇ。

でも大丈夫です。わかりやすく解説します。

少し込み入った話をしてる部分は網掛けがかかっていますので、難しいの嫌!という方は、網掛け部分を読み飛ばしてください。

まず、スポーツ団体ガバナンスコードの大きな成り立ちと、作られた理由をおはなししておきます。

こちらのURLをクリックしてもらえると詳細が分かります。

スポーツ団体ガバナンスコード(以下、略して「GC」と表記しますね。)とは、要するに、スポーツに関係する団体が守るべき約束事をまとめたものになります。

GCは、2種類存在していて、①中央競技団体と呼ばれている各競技の統括団体向けと、②それ以外のスポーツ関係団体向けがあります。

①の具体例は、日本サッカー協会、日本バスケットボール協会、日本ハンドボール協会、日本パデル協会などです。

②の具体例は多岐にわたりますが、川崎フロンターレ(サッカー)、千葉ジェッツ(バスケット)のようなプロチームや、大田区テニス連盟のような任意の団体、コナミスポーツクラブなどのジムやレッスンの提供団体も対象になると考えられます。

※②については、対象について、ガバナンスコード(一般団体向け)の前文に、言及があり、【「スポーツの振興のための事業を 行うことを主たる目的とする団体」(スポーツ基本法第2条第2項)であるが,スポー ツ団体は,法人格の有無,法人形態,規模,業務内容等において極めて多種多様である】とされています。

このような区別は、団体の性質によってなされているのです。

※①が国内で当該スポーツの最高峰、トップの統括団体であり、システム上、ステークホルダー(利害関係者)が非常に多く、また不正やトラブルが起こる場面が想定されやすいことから、より厳格に定められたものと思われます。

さて、ではなぜ、GCができたか?というと、一言で言うなら、スポーツ団体における不祥事やトラブルが相次ぎ、しかもそれを適切に解決できなかったからです。

※GC前文にはこうあります。
「一方で,スポーツを愛好する人々の善意やボランティア精神に支えられた組織運営 は,責任の所在を曖昧にし,コンプライアンス意識が徹底されず,組織運営上の問題 が見過ごされがちになるなど,ガバナンスの確保がおざなりになってきた面があると 考えられる。実際,近年,NF を始めとするスポーツ団体のガバナンスの機能不全に より,スポーツの価値を毀損するような様々な不祥事事案が生じたり,スポーツ指導 の現場における暴力行為等が度々報じられたりしており,スポーツ基本法の理念が実 現に向かっているとはいい難い状況にある。」
結構辛辣ですよね。

GCが公表されたのは、2019年ですが、その前年である2018年だけを見ても次のようなトラブルがありました。

【カヌー】
ライバル選手への禁止薬物混入事件で出場停止

【レスリング】
榮強化本部長から選手へのパワハラで辞任

【アメフト】
日大タックル問題で、監督ら懲戒処分

【ボクシング】
助成金不正流用疑惑で、山根会長含む理事ら全員辞任

【体操】
塚原夫妻パワハラ疑惑

【バスケット】
代表選手遠征先での買春報道

なんとなく記憶、蘇りましたか??

そうなんです。こんな調子で、トラブルを未然に防ぐための仕組みづくりや、トラブルが起こった際の対処・対応が問題視されたのです。

※なお、上記の例の中でも、初期対応を誤ったアメフト、ボクシング、体操の例は大炎上騒ぎとなりました。
他方、バスケットは、当時のバスケットボール協会会長自ら、到着便が来る深夜の空港に赴き、謝罪の上で裁定委員会(懲罰についての諮問機関であり、弁護士らにより構成)の判断を待って処分すると会見したことで、炎上騒ぎにはならずに収束。

初めの1手が明暗を分けた「スポーツ界不祥事対応を考えるイヤー」となってしまいました。

こんなことを契機に、団体としてのガバナンス(統治の仕組みのこと)を健全化する方向に拍車がかかりました。

そこで、スポーツ庁が外部有識者と検討して作り上げたのがGCです。

具体的な内容の詳細は次回に譲りますが、団体内部の構成メンバーが偏らないようにする工夫や、会計法務などの適切な助言を得られる工夫、不祥事を未然に防止する仕組みや事後の懲罰についての仕組み作りなどが内容となっています。

次回は、②一般スポーツ団体のGCについて、内容を見ていきますね!

以上、今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)でした。

では、また。

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。