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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第43回]


鬼灯 礒部晴樹・画


鬼灯

尋ねられ 尋ねて 共にいまは こころ 深
き愁いをわかつ   ──あわれ われ等のこい
も古りにしかな 青ひといろの空のなかにひ
とり劇しく日の病むごとく 避けがたく 癒
しがたく ふかみどりこころごころに狂おし
きかな 暗く木立ちをめぐりて 油蝉しきり
に啼き悲しめども かたみに 己が悲しみの
みなもとを知らず 柱の片影に ひと立ちて
われよこたわる   ──あわれ きみ その頬
にふくめる鬼灯を鳴らしたまわずや

菱山修三


*鬼灯=ほおずき

ハート型をしたちょうちんのような袋の中の丸い実をとりだして、
小さな穴を開け、中の細かい種を出したものを口にふくんで、
ふくらまし、舌で(歯で?)つぶすと、キューと鳴ります。
昔の女の子の遊びでした。

古風な詩です。
なんとなく恋の詩だとわかります。
昔、子供のころ、父の本棚の泉鏡花の本をこっそりのぞいて、
文語体の古風な文章をたどり、半分は読解不能ながら、
なにか幻想的な物語と感じたのを思い出しました。
日本の古い白黒映画の、ワンシーンのような詩です。

真夏の、油ぜみにぎやかな、緑濃い日差しの屋外と、
薄暗く静かな屋内の対比で、心理的葛藤を暗示できたらと
画面の明暗を強調しましたが、どんなものか…
しかし、詩から絵をつくるのは楽しい作業です。





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