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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第62回]


江村 礒部晴樹・画


江村         こうそん

清江一曲抱村流    清江一曲 村を抱いて流れる
長夏江村事事幽    長夏江村 事事しずかなり
自去自来梁上燕    おのずから去り おのずから来る 梁上の燕
相親相近水中鴎    あい親しみ あい近づく 水中の鴎
老妻画紙為基局    老妻 紙に画いて基局をつくり
稚子敲針作釣鈎    稚子は 針をたたいて釣鈎を作る
多病所須唯薬物    多病 まつ所は ただ薬物
微躯此外更何求    微躯 このほかに 更に何を求めん

杜甫


澄んだ水の川が 大きく曲がって 村を抱くように流れる
日ながの夏の一日 川辺の村は 事もなく静かだ
天井の梁に 燕が行き来する
川で遊ぶ鴎が きままに こちらにやって来る
老妻は 紙に碁盤を描き
こどもは針をたたいて 釣り針を作っている
私は病気がちで ただ薬だけ必要だ
この衰えたからだ あとは何もいらない


*憂愁の詩人杜甫の詩です。
夏の盛りの 時の止まったような静かな午后の情景でしょうか。
私が最初にこの詩に接したのは 高校生の頃でした。
最初の2句が大好きで これだけで一幅の絵になります。
私の絵も、この部分を絵にしています。
余計な要素は ぎりぎりそぎ落とし、
最小パーツで構成した絵画です。

最初 手前の二そうの舟がなかったのですが、
下半分の空間がちょっと間がもたなく感じたので
詩にはないのですが 描き加えました。
絵としては このほうがまとまったように思ってます。





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