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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第63回]


江亭 礒部晴樹・画

江亭

担腹江亭暖       担腹すれば 江亭暖かに
長吟野望時       長吟 野望の時
水流心不競                     水流れ 心競わず
雲在意倶遅       雲ありて 意ともに遅し
寂寂春将晩       せきせきとして 春まさにくれなんとし
欣欣物自私       きんきんとして 物みずから私す
故林帰未得       故林 帰ること未だ得ず
排悶強裁詩       悶えをはらわんとして 強いて詩を裁す

杜甫

川辺の亭で寝ころがれば 春の日ざしが暖かい
ゆっくりと詩を吟じ 野原をながめる時
川の水は流れているが 心は静かで
雲がじっととどまっているが 私の気持ちもおなじだ
春の日は おともなく暮れてゆき
皆楽しげに 思い思いに生きている
私は故郷にまだ帰れない
気晴らしに 詩を書きつけている


*前回の「江村」と同じころの作品でしょう。
杜甫、成都の草堂でのしばしの平安のひと時。

絵は、詩の気分を考え、草、鳥、雲、日を、
亭のまわりに点在させ、
もの皆、好きに生きている様子を、
やわらかく、まったりと造形してみました。






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