本物 1 俺は本物の人間ではない。彼の発言力や佇まいを見ていると、そう感じさせられてしまう。 彼の名は秋元光一という。さわやかな笑顔と少しはねたくせっ毛が柔らかい印象を与え、ふるまいは常に洗練されている。その細い瞳は多くを映さないかのように見えて、大事な場面で細かいことにも気が付く。感情に素直かつ冷静で、おかしいと思ったことは積極的に発言してくれる。誰とでも仲良くできるため常に人が集まってくる。ああ、とても人間らしいではないか。 コップの底に溜まったコーヒーは俺の顔を