日本が航空母艦を建造する理由
日本が、航空母艦を建造するのは、日本の食料とエネルギーのサプライチェーンを守るためだ。
風が吹けば、桶屋が儲かる。
アメリカで新自由主義が支持を失った結果、日本は軍事大国化せざるを得ない。
増加する防衛予算
日本が防衛予算を急拡大させている。今まで、5兆円程度だった防衛費は2030年ごろには10兆円になりそうだ。
皆さんは、この防衛予算の拡充をどう思われるだろうか?
僕は、日本の防衛省の仕事ぶりに感心している。
防衛予算を増やすのは、必要不可欠だ。
海上自衛隊は、護衛艦 「いずも」、「かが」を改修して、航空母艦として運用する予定だ。「いずも」は2027年度、「かが」は2028年度に改修が完了となり、航空母艦としての運用が可能になる。これで自衛隊は、世界中の海へ空母機動部隊を展開できるようになる。
日本が航空母艦をもつことに対して、反対する意見がある。空母は、完全に攻撃のための兵器である。自衛隊が専守防衛、日本近海だけを守るのであれば、日本の空港から航空機を飛ばせるのだから、空母は不要である。
・・・一体いつから、日本近海だけを守ればいいと錯覚していた?
日本の食料自給率は4割だ。石油・石炭・天然ガスのほぼ100%が輸入である。
自衛隊が日本近海だけを完璧に防衛できたとしても、食料とエネルギーが入ってこない。飢饉が発生する。
国内に食料、エネルギーが不足した状態で、自衛隊が、日本の領海・領空には、敵をいっさい通していません!完璧に防衛しています! といったところで、国民は納得するだろうか?
このような事態になれば、国民は間違いなく、自衛隊に食料とエネルギーを(力ずくで)取りに行くよう要請するだろう。それどころか、国民は、なぜ(食料・エネルギーの)サプライチェーンを守らなかったのか、と自衛隊を非難するだろう。
日本政府と自衛隊は、それがわかっているから、全力で防衛予算を増やし、ヘリ専用護衛艦などと偽りつつ、航空母艦を建造し、空母打撃部隊を拡充させているのである。
(マスコミと国民の理解不足に対する、自衛隊の努力に涙が出る・・・)
防衛予算の増加を快く思わない連中は、21世紀にサプライチェーンが脅かされることなんてあるわけない! と、根拠のないことを思い込んでいそうだ。
自由貿易で世界中の人たちが豊かになるのだから、自由貿易は維持されるに決まっている! と考えている人間は、現実がみえていない。
彼らは、自由貿易を誰が、何のために構築したのか、理解しているのだろうか?
アメリカ 新自由主義の失敗
世界中のサプライチェーンを整備し、維持してきたのはアメリカである。
アメリカ合衆国は、世界中にアメリカ資本を投資し、企業を通じて、世界中の富を吸い上げた。アメリカ合衆国がさらに豊かになるために、自由貿易を推進した。
アメリカの投資家が、投資した企業の利益を増やすため、世界中のサプライチェーンの安全を確保したのだ。
自由貿易で一番大儲けしたのは、基軸通貨をもち世界一の経済力を持つアメリカ合衆国である。アメリカが合理的に行動するかぎり、サプライチェーンの安全は確保される。
だが、、、
アメリカは、自由貿易により得た ”富” を公平に分配しなかった。金持ちが富を独占し、大衆は自由貿易によってビンボーになった。
1990年代はまだ、共産主義との冷戦に勝利したこともあり、新自由主義者のストーリーに説得力があった。
エリートに高い報酬を与えることで、エリートがより一層働くことになり、社会全体の富は増大する。
エリートは、高額報酬を消費にまわすため、低所得層にも時間差でおいしい仕事が発生し、最終的には低所得層も豊かになる。これがトリクルダウン理論である。
だが、現実はエリートが高額報酬を消費せず、他国への投資に回してしまった。その結果、アメリカ社会の富がエリートにどんどん集まっていく結果になった。
アメリカの上位10%が占める富の割合は、1989年には6割だったが、2023年には7割に拡大した。上位1%が持つ富は3割だ。
このデータによると、アメリカ人の上位 30万人 (0.1%)は、平均68億円の資産を持っているにもかかわらず、下位5割は平均250万円しか資産を持っていない。
下位50%と、上位 0.1%の差は2700倍である。
アメリカは、軍隊を世界中に展開している。
人権を守るため、自由貿易を守るため、正義を守るため、立派なタテマエをいっているが、本当はアメリカの金持ちの利権を守るためだ。
アメリカの大衆は、世界中に展開するアメリカ軍のため、たくさんの税金を負担してきた。だが、アメリカの主張する正義は、あくまでアメリカの金持ち(投資家)を豊かにするためであり、ビンボー人は貧しくなるだけだ。
むしろ、自由貿易により発展途上国から安い製品が入ってくるから、ビンボー人は失業し、賃金を抑えられ、より貧しくなる。一方で、世界中の投資機会にアクセスできる投資家(金持ち)は、より豊かになる。
このことに、アメリカ人は30年かけて気がついた。
金持ちが主張する、トリクルダウンは何年たっても起こらない。むしろますます貧富の差は大きくなる。
アメリカは新自由主義で豊かになったが、アメリカ人の大半は新自由主義で貧しくなった。
この現実をみて、アメリカ人は、新自由主義を信じることをやめた。
これは、日本人にとって、非常にまずい。日本は、アメリカの新自由主義者がつくりだした、自由貿易体制に完全に依存している。
世界中の人たちにとって悪いことに、アメリカ人は、貿易がなくなっても困らない。なぜなら、アメリカではすべての資源を自給できるからだ。少なくとも、メキシコとカナダを加えれば、外の世界は不要である。
アメリカの大衆にとって、世界の平和、世界の人権、世界の正義は関係ない。大衆は、単純に可処分所得を増やしたい。目の前のカネが足りてないのだ。
アメリカの大衆には、世界中のサプライチェーンの防衛費用を負担する道理がない。アメリカ人の半数は、資産をほとんど持っていないのだから。サプライチェーンの維持により儲かるのは、世界中で投資を行っているアメリカの金持ちだけだ。
アメリカの撤退に対して、日本の、特に左派系の人たちが、正義が~、人権が~、経済効率が~ とかなんだかんだと文句を言うだろう。
だが、アメリカ人は、こう言い返す。
自分のことは、自分でやれ。
日本の戦争 「補給戦」
多くの人が、将来起こる日本の戦争でイメージしがちなのは、台湾有事や尖閣諸島をめぐる紛争だろう。だが、中国軍と真正面から戦うような戦争は本命ではない。
日本が戦う戦争の大本命は、「補給戦」である。
アメリカ軍が去った後の日本は、他国ともめ事を起こした瞬間に包囲された要塞となる。なにせ、日本は食料の6割、エネルギーのほぼ100%を船で輸入しているのだ。
たとえば石油タンカーは、中東ペルシャ湾から、インド洋を通って、シンガポール沖のマラッカ海峡を通過して、日本の港にたどり着く必要がある。
もし、中東、インド、東南アジア、そして日本のどこかで、たった一人の工作員が携帯武器で輸送船を攻撃したら?
ロシア・ウクライナ戦争では、人ひとりが持ち歩ける携帯武器が非常に効果的であることがわかった。
たった一人の工作員が、携帯武器でタンカーや輸送船を攻撃する。
それだけで、日本は詰みかける。
日本の船(タンカー)が、1回でも襲撃され撃沈されてしまえば、もう日本の民間船会社は、輸送ができなくなってしまう。
(工作員は、北朝鮮、ロシア、中国、韓国、パキスタン、イラン、東南アジアなど、日本と利害関係をかかえる、すべての国が派遣する可能性がある。)
大日本帝国時代であれば、輸送船が1隻沈んだところで、影響など無視できただろう。だが、令和の人手不足ニッポンでは、輸送船が1隻沈むダメージはシャレにならない。
船会社に輸送を再開してもらうには、自衛隊(護衛艦や哨戒ヘリ)をタンカーの護送につかせることが絶対条件となる。でなければ、日本の船会社は仕事を受注できない。敵が襲ってくるかもしれないけど、護衛もないけど、命がけで船に乗って輸送してこい!などと人手不足の日本で、ただの会社員に強制はできない。
ひとたび、襲撃事件が起きれば、自衛隊の護送は最低条件だ。
日本政府は、自衛隊が責任を持って護衛するから、どうか輸送を引き受けてくださいと、船会社にお願いするしかない。
だからこそ、世界中に展開できる強力な艦隊が必要なのである。
また、シーレーン上の国が不安定化し、日本の輸送船を襲撃するような、海賊の拠点ができた場合、敵拠点をせん滅しなければならない。そのためにも強力な地上攻撃能力を有する空母打撃軍が必要になるのだ。
(これらは、すべてアメリカの金持ちが、自分たちの利益を確保するためにやってくれていたことだ。)
リソース不足
日本は、ただでさえ高齢化により、経済や人的リソースに余裕がなくなっていく。その上、アメリカ軍が抜けた穴を埋めるため、日本のサプライチェーン(補給線)を維持するため、防衛予算も増額しなければならない。
日本のリソース不足は、深刻だ。
政府は、防衛予算の増額理由に、北朝鮮の脅威や台湾有事など、大したことない脅威を挙げるべきではない。本命は、補給戦だ。日本人の生活水準は、薄氷のうえにある。
アメリカの金持ちが富の再分配に失敗し、アメリカの下層階級が世界の秩序に興味なくし、アメリカ軍が世界中から撤退したがっている。アメリカが、日本の補給線を守ってくれなくなる。
だから、日本政府は、日本の補給線をまもるために、あわてて自衛隊を強化していると、防衛予算を増額している理由を正直に発表すべきだ。
自衛隊が守らなければならないのは、日本の領土・領海・領空だけではない。中東の油田から日本までの海上までの、シーレーンすべてである。
防衛費の増額に反対する人たちは、日本国が包囲された要塞であることを本当に理解しているのだろうか?
世界に興味をなくしたアメリカと、輸入なしでは生きていけない日本国、この構造を理解したうえで、それでも自衛隊の軍備増強に反対するのか?
まとめ
日本は、以下の問題に、同時に対処しなければならない。
・高齢化に伴う社会保障負担の増加
・人手不足による人件費高騰とインフレ
・それに加えて、サプライチェーンを守るための軍備増強
結局のところ、未来に待っているのは、より一層の増税しかない。
日本には、時間が経つごとに、貧しくなっていく未来しかない。