新横浜とドトール珈琲農園と神奈川近代文学館と高麗博物館と崎陽軒とテアトル梅田と『あのこは貴族』と

 前回の記事に書いた通り、13日に新幹線で新横浜へ。ひさびさの新幹線だったが、新幹線てアイドリング音うるさすぎるなと思った。関西方面は雨上がりの晴れ、関東では雨が降ると聞いてはいたが、傘は現地調達でいいだろうと判断して手ぶらで向かったところ、静岡に入ったあたりから降雨地帯がはじまり、神奈川県に差しかかるとだいぶ強い雨になっていた。新横浜に着いてみるともはや豪雨。このまま東京へ足を運ぶのもありかと一瞬考えたものの、強度の差はあれ、天候にそんなに大きなちがいはないだろうと、ビックカメラ内を歩きまわるなどした。しばらくして予約しているホテルのチェックイン時間になり、適当にいちばん安いビニール傘を購入して雨の中を歩きだす。10分ほど歩いてホテルに入り、無事に部屋でひと息。夕飯に入ったドトール珈琲農園という店がなかなかよかった。関西では明石と伏見にしかないらしい。新幹線で金達寿『わがアリランの歌』(中公新書)、ドトール珈琲農園でアントン・チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)を読み終えてしまい、持ってきていた本をすべて読んでしまったことになる。新横浜駅まで行けば駅ビル最上階に本屋があることを確認しており、イェリネクの『光のない。』白水uブックス版でも買いに行こうかと思ったが、面倒くさくなってやめてしまった。夜に作品を書くが、思っていたよりも早く、資料にあたりながら書いたほうがいい部分に差しかかり、あえなく中断。
 翌日は入館予約していた高麗博物館へ向かおうと東京は新大久保を目指すが、途中、せっかくなので今回のそもそもの目的だったはずの神奈川近代文学館へ行ってみた。なかなかの階段を昇って遠まわりした先に建物があり、これはGoogleマップを参考にしたせいなのか、ほんとうにこのルートしかないのかはわからない。まさに閉館状態の建物をしばらく見て引き返す。この日の午後に金達寿関連のイベントがあり、クレインのアカウントのかたが私と入れちがいにここを目指していた。「生誕100年 金達寿展」が再開して、機会が合えばお会いしましょうということになった。
 新大久保に着いたところ、予約の時間までまだ余裕があったので、周辺を散策。黄英治作品から私の作品に使わせてもらっている名前で言うところのZTグループによるあの醜悪な映像でお馴染みの風景だったが、今回は平和そのものでよかった。時期が時期だけに、あの人混み自体が恐ろしくもあったが。ぐるりとまわってちょうどいい頃合いに高麗博物館に入る。東京都内にある朝鮮絡みの石碑などの案内やら、いろいろ。軍艦島の世界文化遺産登録に関連した問題を提起する、約20分ほどのVTRが流されており、じっくりと観させていただいた。帰りに歌舞伎町内を10年以上ぶりに歩く。なるほど、『龍が如く』の神室町だな、としみじみ思う。バッテイングセンターやらコインロッカーで感動するのであった。ほんまにあんなふうにコインロッカー並んでるんやな。秋葉原で行なわれる予定となっているヘイト街宣のためにカウンターが集結していると情報が入ったが、ここから向かってカウンターに参加したら、そのあと新横浜へ行って飯食って新幹線間に合わせるのはだいぶきつくなるな、いやもはや無理ではないかと考え、あえなく断念。もうちょい遅めの車両にすべきだった。新横浜で石焼ビビンバを食し、崎陽軒のシウマイ弁当を購入して新幹線へ。
 新大阪に到着し、床が抜けて鯉が泳いでいるというハプニングに見舞われつつ、テアトル梅田の日曜夜割りに間に合うなと考え、2回目を観たくなっていた『あのこは貴族』を観にテアトル梅田へ。オーディオコメンタリー上映がここでもなされていたのでさっそくアプリをインストールするも、なぜかネットに繋がってないので繋いでくださいと。スタッフのかたに相談しつつ時間ぎりぎりまで対策を講じてみたものの無理で、オーディオコメンタリー付で観たかったなあと思いつつ観賞。帰宅してからいろいろ試してみたもののiPhoneではまったく駄目で、iPad proなら問題なく作動したので、休みを取っていた翌日、12インチある重いやつを抱えて楽しんだところ、ちょうどその前の回で『カム』の田中氏がいたらしいという。
 ふとしたときに思い出してはまた観たくなる映画というものがたまに存在するが、『あのこは貴族』はまさにそんな映画だった。西森路代氏の記事がやはりいつもどおり最高なのだけれど、女性同士のさりげないシスターフッドを描きつつも、保守的な家父長制の中での男性の生きづらさも丁寧に描かれている。某コンカニ氏とのメールでも話したが、3回出てくる2人乗りシーンがいずれも最高だったし、よくよく考えてみればあまり出てきていない逸子の人となりがさりげなく、かつ巧妙に描かれていて、とても印象深い人物に仕立て上げているのもさすがだし、何度観ても前のときには見えていなかった細部がそのときどきで粒立つようで、これは油断してると何回も観てしまうやつだ、となった。思えば『はちどり』もそんな映画だった。

さいきん読み終えた本
金達寿『前夜の章』(東京書林)
金達寿『わがアリランの歌』(中公新書)
アントン・チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)
『沙流川──鳩沢佐美夫遺稿』(草風館)

さいきん観た映画
『あのこは貴族』(岨手由貴子)2回目。テアトル梅田
『あのこは貴族』(岨手由貴子)3回目。オーディオコメンタリー上映。テアトル梅田


過去のブログ記事
略歴と作品


投げ銭はかならず創作の糧にさせていただきます。よろしくお願いします。