東洋文庫と明石書店と阪神教育事件と「突然、目の前がひらけて」と京都市立芸術大学作品展と『花束みたいな恋をした』と朝鮮学校美術部展と

 前の記事にも書いた『白鴉』32号編集作業は順調に進んでおり、私の掲載作品が早水氏による校正を経て返ってきた。音読も交えつつ何度も読み返しては修正していたのだが、それでも書き漏らしていることがあるので不思議。これでしばらく、それまでに書いていた作品のつづきに着手できると考えていたのだが、仕方ない。その作品に関連して岩波新書の『近代朝鮮と日本』を読んだり、阪神教育事件について調べたりしているのだけれど、『近代朝鮮と日本』に出てきた資料、フレデリック・アーサー・マッケンジー『朝鮮の悲劇』が平凡社東洋文庫で出ていたことを知った。さすが東洋文庫。というか東洋文庫、やはりいいな、すごく。あと、阪神教育事件について直接書かれた本ってなかなか見つからないなと思っていたところ、明石書店から『在日朝鮮人民族教育闘争資料集』というのが出ていたことを知る。さすが明石書店。948頁で26000円しますが。まあその前に品切れ状態で買えませんが。ちなみに全2巻で、第1巻がこの値段。第2巻は932頁で26000円。値段一緒でしたね。なにかを試されている気分ですね。明石書店もいい本出してるなあ。

 11日に京都へ向かい、京都市国際交流会館で催された京都朝鮮中高級学校美術部&OB・OG展。現役生とOBとOGが出展している割には寂しい印象ではあったものの、楽しめた。そのあとすこし歩いて京セラ美術館。まずは「平成美術 うたかたと瓦礫(デブリ)」展。目当ては2015年に東京で開催されたけど行けなかった、武蔵野美術大学と朝鮮大学校美術科による合同展「突然、目の前がひらけて」。橋の再現がなされているほか、各メンバーの作品や、企画段階からの進みかたがわかるアーカイブ資料もあって、かなりの充実度。武蔵美と朝鮮大学校の壁越しにボール遊びをする映像作品がなんだか楽しかった。いやまさか6年後に観られるとは。生きてみるもんだ。そのあと、京都市立芸術大学作品展。なんとなくずっと相互フォローさせていただいているかたの卒業制作が展示されているとのことで。じつにバラエティ豊かな展示で、目的の日本画以外も楽しんだ。昔、古井由吉を介して知り合った、この大学の音声芸術研究の院生がいたのだけれど、彼女はいま、どうしていることか。
 移動しながらなどにtwitterを眺めていたところ、西森路代氏によるツイートで『花束みたいな恋をした』観たさが募り、京セラ美術館をあとにして、まだ間に合いそうだったので、地下鉄と阪急を駆使してテアトル梅田へ。正直なところ、20代のうちから恋愛など自分には無縁なので恋愛物語など必要ないと考えてきているので、このいかにもなタイトルの映画はスルーでいいだろうと思っていた。そのわりに『愛がなんだ』やら『本気のしるし』やら観てるし評価もしているのだが、まあそれも単に「恋愛映画」として観に行くのではなく、「恋愛」を介して描かれているものごとを確認するために行っているのであり、今回もそうだった。西森氏のツイートでも言及されているように、麦が途中から悪しき男性性に基づくとある価値観に縛られだすあたりがなかなかリアルに描かれており、すごいなあと思うと同時に、平成生まれもこの価値観に苦しめられるのかと。それなら私にもまだまだほかに書けることがあるなあと。いろいろと勉強になった映画観賞であった。「粋な夜電波」聴いて「ウィークエンドシャッフル」聴いてないとなると私とは合わないなとか、出してくる日本の作家全部わかったけど海外文学皆無かよとか、そこ指摘するのって人間的にどうなんだと思うほどのこまかい指摘はいくらでもできるものの、この脚本家の坂元裕二氏はすごいなと。調べたら『東京ラブストーリー』時で23歳。なんだただの天才か。観てないけど。あと、そうそう、「萩原みのりの無駄遣い」というツイートも観る前に見かけてて、たしかにその通りだった。なんて贅沢な。
 そういえばこの日、私がmixiで知り合って白鴉に誘ったことでおなじみの美月麻希氏がnoteをはじめていたのだった。

 13日は楽しみにしていた『ノンストップ』を観に行ってから鶴橋へ向かい、商店街を抜けてギャラリーKONOMURAの大阪朝鮮中高級学校美術部展へ。点数はややすくなめではあるものの、バラエティに富んでいる。私が自分勝手に朝鮮学校の美術展に求めてしまうのはこういうことだった。絵画のみならずドレスがあり、昨年10月の特別展で楽曲を提供していたかたの新曲が発表されていたり、いい感じの映像作品があったり。満喫したのち、鶴橋うすこし歩いて、なんとかまだ生き残ってくれている「ぶあいそう」や、2018年に閉店した「シェルブルー」跡地をめぐってからジュンク堂へ寄り、ホリーズカフェでコーヒー飲みつつ、こんどの読書会で課題書として指定した河崎秋子『颶風の王』を読み返して第1章を終え、これだけでひとつの作品としても遜色ない出来栄えだなあと感嘆して帰った。


さいきん読み終えた本
趙景達『近代朝鮮と日本』(岩波新書)

さいきん観た映画
『花束みたいな恋をした』(土井裕泰)テアトル梅田
『ノンストップ』(イ・チョルハ)シネマート心斎橋

さいきん行った展覧会
京都朝鮮中高級学校美術部&OB・OG展「Rapport 彩る心」展(京都市国際交流会館)
「平成美術 うたかたと瓦礫(デブリ)」展(京セラ美術館)
大阪朝鮮中高級学校美術部展「おかえり」展(ギャラリーKONOMURA)


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