思い出の試合たち その1
Jリーグが世の中に産み落とされてから、サッカーはずっと好きだった。
ただ見るだけでは飽き足らずにα6000というミラーレス一眼を購入したのが2014年の秋。
「仮に落したら立ち直れないなぁ」ということを考えながら向かったのが熊本県山鹿市の山鹿カルチャースポーツセンター。
鹿本高校と熊本工業が対戦したのは全国高校サッカー選手権熊本県大会の4回戦。
先制したのは6月の総体でベスト4に躍進した鹿本だった。1点を追う熊工は長身の背番号3が1トップの位置で体を張りゴールに迫る。
ボールを巡ってピッチの至るところで肉弾戦が繰り広げられる試合は後半の半ば、背番号3のCF、カイマと呼ばれていたキャプテンがセットプレーのこぼれ球を仲間がつないだボールを蹴り込み同点に。
負けたら終わりの選手権。走り、跳び、競る。ぶつかり合う、倒れてもすぐに立ち上がる。そしてまた走る。飛び込む。こんなのが80分保つのだろうか、と息を飲みながら時間が過ぎていく。
後半も残り5分を切った頃、当時の試合の様子を記録していた過去のブログにはこう記してあった。
『残り10分を切る。鹿本。中央に走り込んだ8番がフリーでシュート。
ボールは、クロスバーの上を越えていく。
熊工。前半30分から入っていた中盤の17番が、こぼれを拾って裏へ。
7番に渡る。
ネットを揺らす音。熊工側の応援団から、保護者から、爆発する歓喜。
残り5分での逆転弾。』
カメラを買って1週間も経っておらずシャッタースピードの調整も、ISOの何たるかも理解していない。落とさないように気をつけながら、ズームだけ調整しておまかせオートでひたすら連射していたに過ぎない。
それでも。
爆発する喜びを抑えきれない選手と部員たち。
当然ながら怒られるので急いで応援席に戻る部員たち。
初戦敗退という結末に打ちひしがれる鹿本高校の選手たち。
カメラを手に一瞬を切り取ることを覚え、歓喜と絶望が紙一重で訪れるサッカーというスポーツによりはまり込むようになり、気付けばカメラを手放せなくなってしまった。
月日が経っても写真を見ればその日のことを思い出す。
ウイルスによって日常が変わってしまったいま、再びサッカーのある風景を撮ることができる日が戻ってくることを信じて、できることを行っていきたい。
2014年10月25日(土)
全国高校サッカー選手権熊本県大会4回戦
鹿本 1-2 熊本工業
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この試合について余談がひとつ。
熊工の同点ゴールを決めた背番号3のカイマという選手。
彼のことを意外な形で知ることになったのは2019年のこと。
千葉県リーグの江戸川大学に進学ののち、Jを目指すいわきFCに入団。いわきFCのJFL昇格に大きな貢献をするもののいわきFCを退団し、2020年は同じくJFLに昇格した高知ユナイテッドSCに移籍したCF。
試合を見ていたときはメンバー表などなかったので出場していた選手の名前もまったく分からず、ゲキサカで見た記事の選手が「熊工の3番」だと分かったときは本当に驚いた。
どんな努力をしてきたのだろう。
どんなプレーをするようになったのだろう。
コロナとの戦いを乗り切ったのちに、躍動することを楽しみにしている。
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