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甲斐よしひろ Billboard LIVE & Blue Note 2018 EAST with WEST

イントロが流れても曲名がわからない。「ああ、この曲か」と気づいても、まるで違う曲のように聞こえてきた。一緒にいた友人は「こんな曲だったっけ?」と繰り返し口にしていた。もちろん、いい意味でだ。

「港からやってきた女」以降、ずっとそんな感じでラストまで進んでいった。失恋ソングのはずの「観覧車」は、祝婚歌に聞こえてくるほど明るかった。
圧巻は「汽笛の響き」。オリジナルもいい曲だけど圧倒的に今回のアレンジが良かった。この曲を聴けただけでも、この日、Billboardに足を運んだ価値はある。そのくらい凄い演奏だった。

4年目を迎えたBillboardでのライブ。編成は、ギター・鈴木健太、ダブルベース・木村将之、フィドルは昨年の磯部舞子から山田拓斗へ。 昨年までと同様である。こうした編成だからこそ、という曲がある。3年やっていてある程度、定番ともいえる曲もあった。「吟遊詩人の唄」や「破れたハートを売り物に」、「円舞曲」といった曲である。

しかし4年目で、そうした予定調和はぶち壊してくれた。過去、Billboardで演奏されたことがあるのは「冷血(コールドブラッド)」と「.風の中の火のように」だけだ。いままでとはまったくテイストの違う構成になっていたと思う。

もともと甲斐よしひろは、自分の曲を使って斬新な実験的なエンターテインメントをする人ではある。90年代後半、新宿のパワーステーションを中心に開催された『ROCKUMENT』。2000年に行われたアコースティックライブツアー『一人きり甲斐よしひろ・My name is KAI』。押尾コータローとのコラボライブ『MEETS』など。Billboard LIVE & Blue Note もその流れの上にあると思ってはいるのだけれど、今回は特に凄すぎて言葉が見つからない。

もう本当に新曲を書かなくてもいいとすら思える。昔の唄にこれだけ新しい息吹を吹き込めるなら、昔の唄なのに現在を切り取った風景を見せてもらえるなら、それで十分ではないか、という気すらしてきている。
来年は4DAYSになる。すでに、来年の5月の予定を調整し始めている。

〈セットリスト〉
1.あいのもえさし
2.涙の十番街
3.昨日なる鐘の音
4.ブラックサンドビーチ
5.ユエの流れ
6.ラン・フリー
7.港からやってきた女
8.汽笛の響き
9.デッド・ライン
10.冷血(コールドブラッド)
11.観覧車'

EN1.サンキュー
EN2.風の中の火のように

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