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「事業計画書」はなぜ必要か?

先日、「事業計画書の書き方と作り方」について書いて欲しいと依頼を受けて、次のようなコラムを寄稿しました。

■起業に事業計画書は必須ですか?

僕が起業創業時における事業計画書の作成に、それほど高い価値を見出していないのは一部の人にはばれています。そういう人から見ると「よくこんなことを書くな」と思われたかもしれません。

そもそもイノベーティブな事業の発想は、机を前にうなっていても降りてくるものではありません。必死に考え続けることは必要ですが、考え続けた先で、力を抜いた場面、リラックスした時に出てくるものだと思います。だから結果的に「イノベーティブな発想はコースターの裏に書かれる」ことになると思っているわけです。

ただこれは「発想」の話であって、もっと言えば「直観」です。直観はとても大切ですが、直観は自分だけの世界に留まります。それでは周囲の協力者を得ることはできません。僕自身、起業希望者に事業計画書を見せられて「こんなものでみんなが協力してもらえると思っているのか。金を借りられると思っているのか」と叫んでしまったことがありました。
直感を周りの人に理解してもらえるように論理に落としていかなくてはいけない。そのときには「事業計画書」は必要になると考えています。

■「事業計画書」の作成理由

上野千鶴子さんがある本で次のように述べていました。

「直観は文節される前の論理である」
「学問は直観を論理的に分節する後追い作業である。」

(直観は「私が蓄積してきた情報の無意識的な使用」、文節は「私がなぜそう思ったのかを私自身で点検する行為」を意味します)

こう考えると、事業計画書を作ることは「直観を論理的に分節する後追い作業」と言えるのではないか、とずっと考えてきました。

以上を踏まえると、事業計画書の役割は「自分の仮説(発想)を深掘りして検証し、協力者に理解してもらえるようにする」ためのものだと思います。発想を生み出すために作るものではありません。ですから、使い方は次のようになります。

まず、ステークホルダーとのコミュニケーションツール、として使う、です。計画書を見せて理解を得るとともに、アドバイスをもらいブラッシュアップすることも可能になります。

さらに言えば、異なるステークホルダーに対して異なる事業計画を見せてもいい、と思っています。もちろん、核心部分が全く違うものを作ってしまえばそれはほとんど詐欺です。嘘はいけません。しかし、ステークホルダーによって、重視するポイントは違うでしょう。それぞれの人が重視するポイントに力点をおいたそれぞれの計画書を見せることは悪いことだと思いません。
もう少し丁寧に言えば、Aさんには計画書のこの部分を読んで欲しい、Bさんには別な部分を読ませたい、というのはあると思います。協力してもらいたいポイントが違えば、理解して欲しいことも変わるでしょうから。そういう意味で「異なる事業計画を見せてもいい」と考えています。

そして、計画を硬直的に考えないことです。ステークホルダーからのアドバイスや実際にやってみた結果を受けて、繰り返し書き直すこと、ブラッシュアップし続けることです。「計画を立てた以上はこの計画通りのやるのだ」と頑なになってしまうなら、計画書など作らない方がマシ、と思います。

創業時の事業計画ということで書きましたが、これは個人にも落とし込める考え方だと思っています。
自己啓発の世界ではバックキャスティング的な考え方が正しいとされがちですが、僕はそれが絶対だと思っていません。バックキャスティングが有効になるのは、目指すゴールが明確にある場合です。不確実性が高いといわれる現代、さらに人間は基本的に移り気なのだということを前提にするなら、なんでもかんでもバックキャスティングで考える訳にはいかないと思うのです。とりあえずやってみることで、見えてくるものもあれば協力者も現われてくるかもしれません。

■「エフェクチュエーション」という実効理論

以前から漠然とこんなことは考えていたのですが、最近、明確に考えるようになったのは、『エフェクチュエーション』という思考法について学び始めたからだと断言できます。

この考え方は、創業希望者は絶対知っておいた方がいいと思いますし、個人のキャリアを考える上でも有効なものだと思います。とはいえば僕も、まだ身についたと言えるような段階ではありません。そのうち披露できるようになるように精進したいと思います。

エフェクチュエーション(Effectuation)の提唱者であるサラス・サラスバシー先生によるプレゼンテーションです。日本語字幕が付いていますのでぜひ見てください。

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