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所属意識には強い副作用がある

さて、今日はだいぶ昔の話。
僕が若かりし日の頃のことだ。

当時、所属していた組織では、強烈に競合企業を意識していた。
最初のうちはそれこそ「意識していた」程度のレベルだったのだが、競争環境が厳しくなっていくにつれ、徐々に自分の中でその感情がエスカレートしていった。
具体的には、組織内で事あるごとに競合サービスの批判をしたり、時には競合企業のトップが書いたブログを嘲笑ったりしたこともあった。

「まだこんなレベルのことを書いてますよ。これ、相当時代とずれてますね」
みたいな感じで。

若き日のあの頃の気持ちを振り返ると、競合を批判したい気持ち以上に、そうすることによって組織への忠誠心を見せたい気持ちがあったような気がする。
当時の組織のリーダー陣は競争心がとても強く、競合のことを忌み嫌っていた。
だから、その空気を読み取り、同調していたという保身的な打算も少なからずあったのだ。

実際には僕自身はその憎き競合のサービスを使ったこともなかったし、批判するだけの根拠はこれっぽっちもなかった。
冷静に考えれば、おそらくそんな悪いものではなかったはずだ。

でも、当時はいろんな感情によって、僕の競合を見るレンズは歪みまくっていた。
競合のサービスはダメでなくてはならなかったし、競合企業の社長は時代感覚のズレた人で、そのサービスを使っているお客さんは見る目がなくてはならなかった。

不思議なものだ。
繰り返すが、その根拠はなかった。

その競合憎しの感情は、「絶対に負けられない」という思いになり、自社のサービスを高める原動力になっていた部分もあっただろう。
また、組織としての一体感を醸成していたようにも思う。

しかし、それと同時に、副作用があった。
少なくとも冷静な競合分析は疎かになっていたし、打ち手が顧客に向かず、競合との短期戦を意識したものばかりになっていた。

そして、何よりも、競合に向けられていた嫌悪感が、いつ自分に向くかもしれないという恐怖を感じていた。
一度「組織の外」だと認識されてしまったら、自分もリーダー陣からあのような言われ方をするのだろうか…。そんな想像は、自分の思考を強く縛っていた気がする。

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