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XIIX の2ndアルバム『USELESS』の話をさせてくれ


※CD自体はもちろん、今日までに公開されているあらゆるメディアのインタビューについて触れています。ラジオや雑誌などまだの方はご注意ください







USELESSを聴いた第一印象、詞の強度がめちゃくちゃに上がっている…………。

何より韻の踏み方があまりに良くて、White WhiteではAnswer5がめちゃめちゃそういう意味で好きだったのですがUSELESSは全曲Answer5か?というぐらい(そんなことはない)に詞がリズミカル。
曲順感想フェーズでも触れるんですが、ついつい口ずさみたくなる、なんというか……口触りの良い(?)歌詞のオンパレードです。何言ってるかわからなかったらとりあえず聴いてくれ。


この2nd AL 『USELESS』、ラジオや雑誌、あらゆる媒体でのインタビューで「ポップに歩み寄ったアルバム」と紹介されていて、その路線はYouTubeにMVが公開されている『Helloween Knight』『おもちゃの街』『ユースレス・シンフォニー』の3曲からも感じ取れることかと思います。

というか、わたしはこの3曲があまりに『わかりやすい』曲すぎてアルバム全体を通してこんな感じの、White Whiteとはまた違った路線なのかと思っていたのですが、アルバムを聴いてあらびっくり、普通にめちゃくちゃ "XIIX" じゃん…………

このアルバム最初に聴いたとき、想像よりずっとXIIXらしいいろんなジャンルの格好良い個性溢れる曲たちが襲ってきて完全にわたしは混乱させられてしまったのですが、これ事前に公開されていた3曲のミスリードがあまりに上手すぎる……と思った。いやわたしが勝手に読みを外しただけかも


……なんですけど、その『XIIXらしい』音楽が今回のアルバムでは明確にリスナーに心を開いてくれているんですよね。何度も聴いているうちに、このアルバムが『ポップに歩み寄ったアルバム』と言われている理由が掴めてきたというか。

音楽の知見が浅すぎるので『ポップな音楽』と言われるとどうしても音楽性とかジャンルに意識が向いてしまっていたんですが、USELESSがポップな理由というのはそういうところではなくて(もちろん、いろいろな一癖あるジャンルの音楽を聴きやすく王道的な路線に昇華している面もあると思う……が、わたしは音楽的な知識が一切ないのでそういう分析は詳しい方の言語化におまかせしたい)。
わたしはWhite WhiteとUSELESSの決定的な違いが『曲の裏にあるテーマが見えやすくなっている』というところにあると思っています。

White Whiteリリース時のインタビューで「全曲にテーマがあって」という話をされていた気がするんですが、今回も恐らくそうで、でもUSELESSは前作以上にそのテーマが歌詞や曲から自然に浮いてくるというか。そういう『わかりやすさ』が『聞き手に寄り添う』であったり『心を開く』であったり、『ポップに歩み寄る』であったりするんだなという。



前置きの時点でめちゃ長くなったけど曲順に感想を並べていきます。前述の通り音楽的知見がなさすぎるので歌詞の話が多くなってしまっている気がしますが……



1. Halloween Knight

去年の10/20に公開された曲。正直今更語るべきことは何も……と思っていたんですが、「宣戦布告」と語られているのを聞いてマジやべえと思いました。

USELESSについては各メディアのインタビューで度々「元々人に聴いてもらうための開けたアルバムにしたいと思って作り始めた」「ポップな方向に振れたアルバム」と言われていますが、そのポップなアルバムの1曲目がこの曲であることに意義があるな…………とわたしは思います。

例えばUSELESSがこのHalloween KnightではなくNo Moreで始まっていたら、それは多分もう全く違う印象のアルバムになっていた気がして。

インタビューで「ベースソロとボイスパーカッションで始まる曲なかなかない」みたいなことを言っていましたが、その「なかなかない」をもってポップなアルバムが幕を開けるというところに計り知れない安心感を覚えます。


2. No More

タイアップをイメージして作って、「人のために作っても自分なんだ」と気付かせてくれた曲……とキンプレで言ってましたね。それだけでオタクは泣きました。

個人的には

振り絞って砕け散って それだってできることなら
誰かにとっての幸せを願いたい
立ち止まって息を吸って その刹那不意に気がついた
最初から僕は僕のまま 何一つ変わってはいなかったこと

という歌詞がありえないほど好きで、XXXXXで「どっか他人の幸福は願えないし」と歌っていた人がこんなこと言うんだ……とドキッとしちゃいましたね。
この歌詞、No Moreを書いていたときの斎藤宏介の気持ちがそのまま出ているのかなとか思ってしまう。


3. フラッシュバック

White Whiteの後ろから2曲目に収録されたilaksaはインタビューで「White Whiteを表した楽曲」「アルバムの総括、締め括り」という風に言われていましたが、それに対してこの3曲目フラッシュバックが今作USELESSの「アルバムのテーマ曲」なんじゃないかなと思っています。

揺るぎない信念掲げて 偽りなく声を荒げて
ガッデムこんなにもやってる
bad day レッテル貼られてる

むむ……?

ステイバック邪魔しないでよ 今旅の途中
すぐに掌返すだろうけど 仲良くしてあげるから

「意識的に」人に聴いてもらうために作った、USELESSというアルバムを表現している気が……しませんか?わたしはします。
3枚目のアルバムはまたもっと濃いものを作りたい、という話もしていたし。

これが3曲目に来ているところに感じるものがあって、White Whiteでは好き勝手やりたい放題したあとにilaksaで「自分たちはこういうアーティストだけど、どうだった?」と投げかけているのに対してUSELESSではアルバムの頭にフラッシュバックを持ってきて「自分たちはこういうアーティストなので、どうぞ聴いていってよ」と開けているような。そういう印象の曲と曲順。
今回のアルバムの曲順には「時系列順」以上の意味がないとわかっていますが、時系列順だからこそ作り手の思考をトレースしたくなっちゃいますね(オタク)。

曲の話をするとグルーヴ感ヤバすぎラップヤバすぎの癖の強い入りからサビでポップになって、「世界を変える偶然と〜」でコーラスが入るのがめちゃくちゃ良い。ここのコーラスをユニゾンにするのって編曲の領域になるんですかね?天才すぎるだろ、須藤優さん……


4. ブルー

早くこれになりたい。聴けば聴くほど最高。

ナタリーのインタビューでLight & Shadowの系譜と言われていたけど、全体的にもうその通りだな〜〜〜っていう感じで最早何を語るべきかわからないんですけど、人は『無機質だけど温かい曲にしたくて』というところからこんなに鮮やかな詞が書けるんですね……

曲から受ける印象も詞から受ける印象も正しく「ブルー」だし「無機質」なんですけど、「無機質」と「鮮やかさ」を紐付けようという発想少なくともわたしからは出てこないです。
「白い息」「刃」「真っ白な雪」「月冴ゆる」とか、「ブルー」以外の色を連想させる言葉は全部無彩色なんですけど、その彩りのない世界に「藍色」や「水色」、それぞれ違うニュアンスの「ブルー」が鮮やかに描写されているの、まさに『"1人と花"の世界』だな……


5. Vivid Noise

XXXXXの系譜だと思っています、Vivid Noise。

XIIXの曲の歌詞の中では飛び抜けて砕けた言い回しをしているなと思う。そして韻の踏み方がめちゃくちゃに気持ち良い。前置きにも書いたんですが本当にUSELESSの楽曲は歌詞のリズム感が良すぎてつい口ずさみたくなる力があるなと思います。
White Whiteの曲はどれも好きだけど「これは斎藤宏介が歌うからかっこいいんだよな」と思ってしまって、つい歌いたくなる、とかとは真逆のところにあった曲たちだと思っていて。そういう意味でも『聞き手のための音楽』なのかなという。

で、口ずさんでいるとわかるんですが2Aのラップ調になるところとかほんとに息継ぎするとこなくて、そもそも全体的にありえないぐらい早口だし、歌えないんですよね。それを「口ずさみたくなるほど気持ち良く」歌ってみせる斎藤宏介、すげえな……


6. ZZZZZ

タイトルからしてXXXXXの路線かと思って聴いたら真逆じゃん。これはfantomeの系譜だな……と思った。確かに曲聴いてから曲名見れば「ZZZZZだわ……」という感じなんですが、前作を知っている人ほど引っ掛かるのでは。ウワやられた〜感。

USELESS HOLICだったかな、須藤優さんが「寝起きイメージの曲の歌い出しが欠伸を思わせる高い声なのに感動した」みたいなことを言っているのに対して「歌い出し素っ頓狂な音で始まるの好きなんだよね」と話していましたが夕映えに紛れて、もその類の歌い出しだなあと思ったり。これは完全に余談でした。

初めにも書いた通りUSELESSは全曲通してWhite Whiteよりもずっと「楽曲のテーマ」が見えやすいアルバムで、この曲はその中でも特別情景をイメージしやすい曲だなと思っていたのですが正直聴けば聴くほど12曲の中で一番意味がわからん曲な気もしてきます。

ふわふわと寝起きのぼんやりとした思考を歌っていると思いきや「アルカトラズ」って調べたら「世界一脱獄の難しい監獄」と呼ばれていたとか、そりゃ出口ないだろ。
単純に「ぼんやりとした思考」の比喩かと思いきや「行方知れずのユビキタス」とか「空を翔けるアルバトロス その姿に憧れます」とか、本当に「不自由から抜け出せなくて身動きが取れない人」みたいなこと言うじゃん。

ナタリーのインタビューでも「心地よく眠りについたと思ったら、とんでもない夢が襲ってきた」と語られていましたが、本当にこの曲が一番わからない。聴けば聴くほど初めに聴いたときの印象と違うものを感じるというか、それこそXIIXの公式Twitterアカウントで斎藤宏介が言っていた「呪い」みたいな。何なんだろう、この後味の悪さ。考えすぎかも。


7. おもちゃの街

これもHalloween Knightと同じく以前から公開されていた楽曲ですが、これはこれで「聴けば聴くほど初めに聴いたときの印象と違うものを感じる」曲だなと思っています。

MUSICAのインタビューで斎藤宏介が「この曲の最初のテーマは『死ぬこと』だった」「それを人に聴いてもらうための音楽として昇華した」みたいなことを言っていたのを見て「はい…………?」となり聴き返し、本当にひっくり返った。

斎藤宏介、元々特別自分の内面を曝け出すような表現をする人ではない……と取れるような発言をしていたはずで、それもあってわたしはこの曲のこと「やさしい曲だな」以上の感想持っていなかったんですが、MUSICAのインタビュー読んで印象が180度変わった。もしかしてめちゃくちゃ素直な歌詞ですか?

この歌詞、わたしは「ミュージシャン斎藤宏介が今の社会で生きる『音楽が好きだった人』に向けた気持ち」だと思っていて、「おもちゃの街」ってライブハウスのことを言っているのかなっていう。望まなくても無情に時間は過ぎていくし世界が変わって音楽が不要不急とされるようになって「この手の体温」が奪われて、でも「見たことない人が笑って手を振っていた」景色も「響くサラウンド」が「嬉しくて夢中」だったことも忘れてほしくない、っていう、めちゃくちゃ純粋で素直な気持ちなのかもしれないって思うと急激に泣けてきて

初めて聴いてからずっと「おもちゃの街」がわたしたちを守ってくれるような、逃げ場になってくれるような……みたいな印象を受けていたんですが実際この曲の根っこにあるのははそうじゃなくて「おもちゃの街」から離れていく人たちに向けた悲しみとかそういう、後ろ向きな気持ちだったのか……っていうのに、MUSICAのインタビューを読んで初めて気付いた(というか、そういう捉え方もできるのか……とおもった)。良い曲だな……

この曲もある種の「込めた呪い」なのかもしれないですね。音楽から離れていかないで、っていう……


8. ユースレス・シンフォニー

初めて聴いたときマジで震えた。こんな明るくてポップで直接的にリスナーの背中を押してくれる曲がXIIXの新しいアルバムのリードトラックなのかよ。そんなことある?ないよね(※ありました)

最早語ることすらないぐらいまっすぐでわかりやすい曲だと思います。

1サビでは「最高だ」が落ちていく、噛み締めるような音程なのに対して最後の「最高だ」は吹っ切れたような、爽やかで清々しい笑顔が目に浮かぶようなメロディになってるのが好きです。

わたしは個人的にMVって楽曲に対するひとつの解釈、味付けのひとつでしかないと思っているのですが、この曲ばかりはMVがあって初めて完成する曲だとすら思える。MVを見て。


9. ホロウ

「惹かれ合って通り過ぎていく」、そんな綺麗な表現あって堪るかよ…………

この曲、キンプレで「昨今の情勢を受けて楽器を手放す人を見て『これって失恋だな』と思って、それを歌にした」と言っていたのもうその感性自体が最高に素敵なんですが、確かに歌詞じっくり見ると前半は音楽に関連したワードが頻出しているのに対して後半一切音楽の話をしないっていう。
そこに「薬指からライトニング」ってきっと結婚指輪を言っているのだろうと思うんですが、「から」ってところがかな、結婚指輪が指から抜け落ちていくような情景を連想するんですよね。切な…………。

「ありったけの恋を数えてきた」、ずっとずっと弦を抑えてきたであろう左手の薬指からライトニング、そう……(言語化を放棄するな)

最後のフレーズが「憧れを灯す」なのもまた苦しいというか、その、ありったけの恋を数えてきた楽器が「憧れ」になってしまう瞬間、みたいな。そういうものを感じる。聴けば聴くほど切なくて泣いてしまう……歌詞が天才です。USELESSの中で一番歌詞が強い(個人の感想です)。


10. Regulus

キンプレで「White Whiteの頃にできていたけど『狙いすぎたな』と思って入れなかった、このアルバムこの曲順なら入れられる」と語っていた曲。

曲調的にも歌詞的にも、上手く言語化できないんですが一番「White Whiteの流れに近い」曲だなと思ったけど実際にそうだった。ライブでもずっと披露されていたらしいですね(ワンマン行けたことがまだないのでわからず)
「馬鹿馬鹿しい長話 甚だしいから走る息を切らし」に物凄い安心感があります。ここのフレーズ大好き。

「自分のことを決して一番だと思っていない」斎藤宏介が「一等星の中で一番暗い星」に自分を喩えた歌、それだけでもう苦しいんですが、それが『狙いすぎたな』と入れられなかったWhite White、『この曲順なら入れられる』と思えたUSELESS、そこにXIIXや斎藤宏介にとっての「USELESS」というアルバムがどんな意味を持つのかがめちゃくちゃに色濃く滲んでいて……


11. like the rain

須藤優さんがあまりに天才すぎる。

ナタリーのインタビューで「XIIXでこういう曲をやることに意味があると思った」と言われていたけど、本当に天才すぎる。天才すぎて天才すぎるしか発せる言葉がなくなってしまった。

ちょっと歌詞を意識すればするほどまともな文章が書けなくなっちゃいそうなんですが、聴いていて映画のエンドロールを見ているような感覚になるんですよね。
これも推測の域を出ないんですがおもちゃの街、ユースレス・シンフォニーと同列にこの社会情勢があったからできた曲なんじゃないかなとかを思っていて、ナタリーのインタビューやキンプレで「音楽愛を歌った」と言っていたのを見て。

傘は刺さぬまま にわか雨がまた 過ぎていくのを待った
当たり前の日々は 当たり前のことが 起これば良かった
触れた悲しみの数だけ 違った幸せに気付いていた

とか、それって2020年の音楽シーンを歌っているのかなあみたいなことを思いました。
「触れた悲しみ」、ホロウかな…………。

斎藤宏介が、XIIXが、こんな曲にこんな歌詞を乗せて歌うの、もう二度とないんじゃないかとすら思える。ひたすらに名曲だしこの曲と出会えない人がこの世に何十億といるのが悔しい。早く戦争とか貧困とか格差とかなくなればいい。こんなん生で聴いてしまったらライブハウスで正座になってしまう気がする。


12. Endless Summer

後味、良!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

マジでもう何も言うことないんですが強いて言うなら

遠くで走った淡い稲光に
騒ぎ出す胸を押さえている
嵐がもうすぐ迎えに来るよ

ってフレーズがあまりに率直に「非日常にどこか興奮してしまう」心理を映していて好きです。like the rain で「当たり前の日々は 当たり前のことが 起これば良かった」と歌った後に嵐についてこんなことを言うの、なんとも言えない気持ちに。

ちょっと何もかもが好きすぎて、2分ちょっとの曲にこのアルバムのあらゆる何もかもが詰まっているというか、本当に『現在地として旗を立てられた』曲なんだなと思うんですが、

そっと水平線をなぞって
海と空の隙間をこじ開けよう

何食って生きたらこんなフレーズ書けるんだ????????????????????????????????????????????????????????????



USELESSのこと、本当に発表された瞬間からずっと待ちわびて待ちわびて、めちゃくちゃに期待して2ヶ月過ごしてきたんですが、普通に期待の500倍上から殴られて死んだみたいな気持ちになりました。
最高のアルバムなのでXIIXのことを知らない人にも聴いてほしいんですが、XIIXのことを知らない人はこんな得体の知れないnoteを読んでいないと思うので大人しく聴いてくれそうな人にこっそりサジェストする生活を続けていこうと思います。

7300文字読んでくれた人がいたら本当にありがとう。このnoteがUSELESSという作品を楽しむひとつのフレーバーになっていたらうれしいです。

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