TENETの冒頭について仮説を立て考察してみた(ネタバレしてます)


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TENET。それは……






 スタイリッシュに極振りしたぶん、説明不足気味な映画ですよね。この映画の面白いところは「タイムラインが逆行したときの現象を客観的および主観的に映像化したもの」「鶏が先か卵が先かを延々と考えさせる」ところで私はそこにハマりました。
 冒頭ストーリーを理解を後回しにしてスタイリッシュな映像を楽しく見ていたけど、逆行の思考実験から始まりテネットの世界観にハマったからにはできるだけ背景や登場人物の動機を想像して理解したいと思うようになりました。理解したすぎて、考えを文字で書き出して考察しました。
(※映画見た回数は2回です。早くブルーレイ欲しいです)
(※公式スクリプトは読んでいません)


※以下ネタバレしています。













 ほとんどのレビューにおいて最初のキエフのオペラハウスで何が起きたか記述されていないのはやはり冒頭描写が説明不足でどゆこと?状態なんだと思います。私もそうです。めっちゃかっこよくて好きなシーンなんですけども。そこで、「TENETたぶんこうだったんじゃないか劇場」な感じでやります。

 お話しするのは、冒頭で「アメリカ人を起こせ」で主人公が起こされるところ~フェイに「テスト合格ですわ」と主人公が起こされるところまでのシーンです。

 各要素で考えられる可能性と私が支持する仮説を提示します。
 

 


【1:主人公側のメンバーについて】

 まず押さえておくべきは主人公と3人の同僚、計4人のメンバーはCIA特殊部隊。協力者のバンの中で待機しています。
→既にこの中に1人以上、セイターのスパイが紛れ込んでいる可能性があります。容疑者は彼らとは別にあと1人います。

根拠1:セイターはオペラハウスのテロを知っている。
 「オペラ好き?」と主人公にカマかけされて反応。(新聞沙汰になっていないので、関与していることが示唆される)
・根拠2:セイターはCIAをよく知っている。
 セイターの船に乗った主人公が逆行金塊を目撃しボルコフに掴まったシーンで、セイターは「CIAは武器を売りはしない。買いはする。なぜプルトニウム241の名前を?」と主人公に訊く。「黄昏に生きる?」と仲間同士の合言葉まで知っています。(CIA相手に武器を売る関係であること、およびCIAにセイターの息がかかったスパイがいることが分かる)

 ちなみに、バンの運転席と助手席で待機していた二人のスタッフもセイターの手下。CIA特殊部隊がプルトニウム241を持って戻ってきたら、横取りするつもりでした。

【2:オペラハウステロの背景と計画】

 これには4つの組織が関わっているとみています。
 各組織の思惑と把握している情報もそれぞれ異なります。

①セイターの部下たち
 →CIAに潜り込ませたスパイと、バンで待機していた男たちです。
 セイターは世界各国の核施設に未来から送り込まれたアルゴリズムを入手するために、核兵器ディーラーをしています。核兵器を取引していることは表にせず、天然ガスを秘密裏に取引している設定を用心深く用意しています(これがCIAが知る情報です)。
 映画冒頭時点で8つまで集め、「最後のアルゴリズムであるプルトニウム241はウクライナ政府が所持している」というところまで突き止めていますが、彼の力だけでは手出しできない状況です。なのでひと騒ぎ起こしてもらう必要がありました。


②CIA
 →主人公たちと、オペラハウスにいるウクライナの政府関係者の男(CIAのスパイ)です。

 スパイが「何か」をウクライナ政府機関で入手したことにより、そのスパイが偽装テロで始末されようとしていることをCIAは知っています。主人公と3人の同僚は、CIAのスパイを彼の持つ「何か」と共に救出する命令を受けました。

 冒頭、主人公はバンの運転手に仮眠から起こされ、ワッペンを渡されます。用意されていたワッペンは4種類ですが全部は覚えてないです、すいません。
 主人公が受け取ったワッペンは「ウクライナ警察特殊部隊 Chevron of KORD」のエンブレムです。
(CIA側は、どの組織がテロ制圧に来るのか分からなかったので4種類のワッペンを用意していたと見れます。)
 主人公たちは、テロリストを制圧する彼らに紛れて侵入します。


③ウクライナ政府
 →ウクライナ警察特殊部隊とVIP席の軍人、そして雇われテロリスト集団です。

根拠1:通報もされていないのに特殊部隊が到着
 テロリストが入った瞬間に普通のパトカーではなくウクライナ警察特殊部隊が待ち構えたように到着するのは事前に打ち合わせ済みだからです。
・根拠2:軍人が政府関係者を逃がす気がない
 政府関係者(CIAのスパイ)と軍人たちがVIP席に座っていましたが、テロが起きた瞬間軍人は椅子に腰かけたまま拳銃を取り出して静かに待ち構えます。政府関係者を守り脱出させようとはしません。押し入ったテロリストを射殺するのではなく、混乱に乗じてCIAのスパイを暗殺しようとしていた可能性があります。
・根拠3:テロ行為を保持しようとするウクライナ警察
 テロリストが座席に取り付けた爆弾を除去しようとした主人公が、黒い特殊部隊衣装を身に纏った男に「何をしている?」と訊かれています。主人公を仲間か見分けようとしているのはこの男がウクライナ警察特殊部隊員であり、政府所有物を奪還するための偽装テロを成功させコラテラル・ダメージを黙認しようとしているからです。


 ウクライナ政府はプルトニウム241やらアルゴリズムやら以前の前提として、政府所有物がCIAのスパイによって持ち出されたことを問題視しています。

 政府が管理すべき重要な代物をスパイに盗まれるとあってはならず、スパイひとりを暗殺すると足跡がつくため「国内のオペラハウスで起きたテロに巻き込まれてスパイが死んだ」ということにしてプルトニウム241を取り返す計画を立てます。
 ちなみに、テロリスト側は準備良く防毒マスクは持っていますがそれ以外に特別な行動をしていないので詳細をなにも知らされていません。

 なお、「盗みを働いたこいつはCIAの犬だ」とウクライナ政府に教えたのはセイターであり、CIAに送り込んだセイターのスパイにプルトニウム241を横取りさせようと目論んでいたと私は考えています。

(ちなみにプルトニウム241という名称はプルトニウムの同位体で、プルトニウム240(240Pu)が中性子を捕獲しガンマ線放出することで生まれます。ウクライナ政府には核兵器の原料として認識されていそうでもあります)。


④TENET
 ニールやフェイ、プリヤ、ほかのテネットの仲間たちです。
 数年後の未来からやってきたこの組織は国家の境界がなく、地球が普通に住めないレベルになってしまった世界の未来人と戦っています(何年先の未来人かは不明です)。テネットはおそらく現在の多くの組織と連携していると思いますが、劇中ではCIAと陰で連携していることが語られ、現在のタイムラインを生きる人間(バーバラ博士など)もスカウトして仲間に入れています。

 全てのアルゴリズムが揃え起動されるとこの世が対消滅するので、プルトニウム241をテネット管理下に置く必要がありました。そのためCIAに「ウクライナが持っている『とある物』を入手してほしい」と依頼し、CIAからスパイをウクライナ政府に送り込ませたのはテネットと思われます。
 CIAが潜入したという情報がCIAにいるスパイからセイターの耳に入り、彼はウクライナ政府に告げ口します。
 政府による偽装テロが仕掛けられ、スパイを特定され消されそうになっていることをテネットはCIAにチクります。
 チクりのイタチごっこです。

 ただテネットは自分たちが経験した未来に繋がる過去を変更することはできないと信じているため、現在のCIAにはあまり詳細を教えてくれません。そういう過去を経験したからでしょうか。鶏が先か卵が先か理論を投げかけ続ける映画ですね。
 そのおかげでフェイからテネットの任務を受けた主人公はふんわりと予言めいた指示しか受け取れず「俺の任務って何?敵は誰?」と関係者に根気強く尋ねる羽目にあいます。


 さて映画において最初に登場するテネットはニールです。
 オペラハウスに忍び込んだ彼は主人公のピンチに現れ敵を倒しました。
 このテネット実動部隊の任務について2種類の仮説を立てます。

仮説1:この時間、この場所で、主人公を救いテネット創設までの歴史を守るという指令が飛んでおり、ニールが遂行した。
仮説2:テネットもプルトニウム241をどさくさに紛れて確保するため、CIAの応援をしていた。

 仮説1が最も支持を得やすいとは思います。仮説2も十分にあり得ると考えたのは、敵が倒れて主人公と目があったニールの態度が理由の一つです。

・根拠1:ニールが主人公を助けた後しばし固まってから去る。
 テネットはCIAを助ける側でありますが、ニールは助けた相手が「主人公」だとは知らなかった→顔を見て動揺したからと考えます。
 こうすると「誰」を助けるのか明確な指示を受けていないということになり、テネット創設の未来を守るという責務とは別の指示でオペラハウスに居た可能性が高くなります。
 ニールは任務のために未来からやって来ました。それゆえ未来で起こった出来事とベストな対策手段を知っていてもおかしくなく、その方がテネットに有利に働くはずですが、未来の出来事をもとに行動を決定することは(スタルスク12戦以外)ありません。起きたことはどうしようもないが何もしない理由にはならないのがニールの主義です。ムンバイで主人公と合流してからは、その場その場でリアルタイムに思考し行動しています。

・根拠2:テネットのテネット(主義)
 映画後半プリヤは、逆行で未来からやってきた主人公に「自分はセイターにプルトニウム241を差し出す役目だったというのか」と言われ、彼女は「そうだ。それで任務は完了した」と答えています。
 プリヤは歴史をすべて知っているのではなく、経験した過去は変えてはならないとするポリシーをハッキリ明示したというふうにすると、ニールたちは「CIA特殊部隊のバックアップをしろ」とだけ指示された可能性は微粒子レベルで存在するのです。

 なのでこの仮説2を支持した上で続けます。


(※脱線しますが、順行ニールが持っていた銃(もしくは弾丸)が逆行物質だった理由について考えていました。演出上の都合じゃん?というのは置いておいて…タイムラインの向きは同じである方が使いやすいからです。
 『主人公を助けた武器が逆行物質だったから』という歴史を守ったのか、それともたまたまだったのか想像の余地があります。
 スタルスク12のような挟撃作戦はスケールが小さけども何度も遂行していた可能性があります。逆行兵士が落とした武器を順行兵士が拿捕した場合、持ち主と武器のタイムラインの向きが逆となるからです。
 そういう混乱状態の繰り返しでニールは逆向きの銃を手にしていたのかもしれません。
 関連に順行ニールと逆行銃の思考実験メモを書いてます。)


 以上4組織の関係でした。
 続いてオペラハウスでのCIA特殊部隊の動きを追います。


【3:CIAが二手に分かれたのは誤算】

 主人公がクロークからプルトニウム241の入ったケースを手に入れ、政府関係者(CIAスパイ)は特殊部隊の着ていた装備を着てウクライナ警察の一員に変装します。
 この時CIAチームは5人になりました。そのうち3人が部屋を出て同じ方向へ走り出し、主人公は一般人の大量犠牲を回避させようと1階席に戻ります(この時一般人変装男も応援に付いてきます)。

 チーム分けは以下の通り。

①主人公と一般人変装隊員の2人チーム
 まだ時間があると希望を持つ主人公は、1階席に設置された爆弾を回収し(ウクライナ警察に狙われてニールに助けられつつ)爆弾を詰め込んだリュックを空の2階席に投げ1階席観客の救出に成功します。
 オペラハウスを出て元のバンに乗り込むと、そこでバンの男たちに2人とも不意打ちワンパンで沈められ、他のCIAメンバーの所在を拷問されます。
 →ここから伺えるのは、『変装で入れ替え』作戦はシナリオになかったCIA部隊独自のもので、バンに待機していたセイターの手下は知らなかったということです。
 そもそも冒頭から主人公は運転手に冷たい視線を送ります。これ、眠かったんじゃなくてバンの協力者をあまり信用していなかったんですね。
 「別の男だ!」というバンの男のセリフは、「CIAのスパイじゃない!バンに連れて帰らなかった。俺たちに隠したな」という考えが見えます。
 拷問シーンでのセイターの部下はバンに乗っていた2人だけだったと思うんですが、別のセイターの仲間へ合流せずに線路でチーム①をボコボコにしているので「プルトニウム241を回収できなかった不測の事態に対処しようとしている」ことが分かります。
 以降出てくるセイターは主人公の素性が分からず「誰だ?」と主人公に尋ねているので、バンの男たち2人は救出に来たテネットに倒されセイターに報告できなかったということになります。
 

②ウクライナ警察特殊部隊に変装した残り3人チーム
 →この3人のうち1人以上が、セイターのスパイです。
 彼らがプルトニウム241を持っており、結局最初のバンには戻ってきませんでした。その後プルトニウム241はウクライナ保安庁が所有するので、この偽装テロの結果としては政府所有物を取り戻したウクライナ政府の勝利です。
 セイターもCIAもプルトニウム241を入手できなかったということは、逃げたこの3人は待ち伏せされ…多分助かっていません。

 スパイが助かっていないので、セイターにも報告できていません。よってセイターが主人公の素性を知らないもう一つの根拠となります。

 チーム②の誰がスパイでもストーリー上違和感はありません。

容疑者1:主人公の同僚
 仮に全員シロだった場合、プルトニウム241と政府関係者を連れた4人全員でバンに戻ってきた場合、セイターの部下は2人の力で5人の大の男を無力化させる必要があります。
 それは少々無理があるので、バンに戻った瞬間主人公の同僚1人~2人が寝返り、人数差で劣勢になったCIAを袋叩きにしてプルトニウム241を横取りする方が早い。嘘は常套手段です。

・容疑者2:政府関係者(CIAのスパイ)
 命を救われたのに寝返るという最悪の展開ですが、この男がCIAにとってシロだったかどうかは劇中明らかになっていないので否定できません。
 この男がスパイであればセイターの意のままに行動できるわけで、オペラハウステロの御膳立てに最適な人材です。バンの男たちはプルトニウム241を持った政府関係者がバンに乗った時点で他のCIA特殊部隊を置き去りにすることができます。
 バンに戻った手ぶらの変装男が「別の男だ!」と言葉を浴びせられた理由として、「政府関係者を捕まえるつもりだった」も考えられますが「政府関係者の顔を知り彼からの取引を待っていた」としたら、政府関係者が内通者ということになります。
 政府関係者だった男の居場所を吐けと拷問されたらその男がシロになるかといえばそうでもなく、CIAが男の正体を見破り確保している場合もあります。

・全員シロだった場合
 容疑者12両方ともクロでも成立しますが、両方ともシロだとセイター側にとって不利になり横取り成功率が下がることになります。セイターがCIAのことを熟知しているという伏線を活かせなくなります。
 主人公たちを拾ったバンがCIAの拠点に行かず敵が待ち構えてる別の場所へ行くとしても、荷台部分から運転席がきれいに見えるので進路が異なっていることに気づいた主人公が無双して暴れると思うんですよね。

【4:テネットは主人公の救助が遅れ、主人公は逆行世界で治療を受けた】

 主人公が変装男の差し出した自決薬を飲んでタイトル画面が出ます。その後目覚めた主人公が「あれは偽薬だった?」とフェイに尋ねていますが、本物の毒でしょう。

・根拠:主人公の鼻にある酸素チューブ
 船の中で目を覚ました主人公は弱りきっていて酸素供給を受けています。自力では呼吸が難しい状態にあるということです。
 主人公が飲んだ毒物が中枢神経系に影響が出るようなシアン化物だった場合、細胞内のミトコンドリアにあるシトクロム酵素と結合し、この結果息を吸っても内呼吸ができなくなります。それによる呼吸困難と痙攣が主人公の身にも起こっていました。
 睡眠薬のオーバードーズでも呼吸不全に陥る場合があるので睡眠薬だったかもしれませんが、致死量であることに変わりはありません。
 →主人公は毒物による呼吸不全を起こし、それに対する治療を受けていることが分かります。


 フェイが主人公に「他の仲間はどうなった?」と尋ねられ「全員ダメだった」と答えます。フェイの言葉が本当なら、主人公の3人の同僚、政府関係者(CIAスパイ)も助かりませんでした。主人公が受けた任務は失敗したことになります。

 未来のテネット創設者が過去に経験したからといって、テネットの部下たちに「自分ともう1人のCIAが機密保持で死のうとする予定だからただ見ていろ」と言うのでしょうか。
 他のCIAはもちろん、主人公について来て危険を顧みず爆弾回収に尽力してくれた変装男を見殺しにするのを主人公は許容できるんでしょうか。変えられない定めだとしても、仲間思いの主人公は「できるだけ早く助けに行ってくれ」とテネットに頼みそうなものです。
 テネットが間に合わなかったのでは?

 テネットの実動部隊はもっと早い段階でCIAを助ける手筈だった。しかしCIAの特殊部隊は2チームに分かれてしまい慌てて追跡しますが、チーム②はウクライナ警察特殊部隊に捕まり、チーム①がどこに連れて行かれたか分からず現場到着が遅れ、結局主人公が毒物を飲む歴史は変わりませんでした…という背景が、あったかもしれません。

 現場に来たテネットはバンの男たちを始末。
 変装男は既に死亡(生きていたらCIAの味方であるテネットは彼も救うでしょう)。
 かろうじて生きている主人公を逆行世界へ連れて行き治療します。

 なぜ主人公は意識が無い間に逆行したという仮説を立てたのかというと…

根拠1:歯はそんなにすぐには治らない
 抜かれた歯を元に戻すとして、どれだけ慎重で完璧な治療をしたとしても、組織をくっつけるため器具を使った固定期間に3週間は必要です。盛大に炎症も起こり得ます。差し歯は歯の根が残っていないと適用できませんが、主人公の歯は根元から抜かれています。
 オペラハウステロからほんの数日程度で風車内筋トレして、炭酸バチバチのダイエットコークを飲んでバンジージャンプしたり、キッチンでチーズおろしを鈍器にしたパンチの反動を受け止めたりできるでしょうか?戻した歯がしみたりグラグラしたりして気になって仕方がないはずです。
 順行世界だけでは手に負えない大怪我です。

根拠2:主人公が船の上で目覚めた
 映画後半に登場するテネットの実動部隊が乗っている船には数多くの回転ドアが積まれています。そして1隻だけじゃありません。
 ただ単に任務を課すため風車へ向かう船にフェイは主人公を乗せたのではなく、容体が安定するまで船で逆行世界へ行き船で治療し、順行へ戻したのではないでしょうか。船の上にいれば何日戻ろうが過去の主人公と出会すことはありません。
 逆行世界に行くとただタイムラインが逆転するだけではなく、治療になにか有利にはたらく要素があるんじゃないかなと思いますがそれが何かは分かりませんでした(キャットの負傷とは状況が違うからです)。

・根拠3:拷問シーンで逆行フラグをアピール
 主人公の背後のディーゼル列車が後ろ向きに動きます。
 拷問するバンの男が7時になった時計を戻します。
 →これらは主人公がこれから身を投じることになる戦いを示唆していますが、テネットがやって来て本当に時間を戻すことになるという予兆かもしれません。

・根拠4:フェイの意味深なセリフ
 フェイが「アフターライフへようこそ」「もう以前の状態には戻れない」みたいなセリフを主人公へ告げるシーンがあったかと思うんですが、もし言っていたら、「逆行したのだから元のタイムラインへ君は戻れませんよ」という事実報告だったのかもしれません。
 →一度逆行を経験すると、自分がいるべき時代から遅れをとることになるからです。
 アフターライフって言ってるあたり主人公一回心臓止まったんじゃないですかね……。


【5:フェイは絶望する主人公を励ました】

 フェイがベッドにいる主人公に告げる台詞はこうです。
「You chose to die instead of giving up your colleagues.」
「That test you passed, not everybody does.」

①You chose to die instead of giving up your colleagues.
 ①のセリフは、そのまま「同僚の居場所を吐くより死を選んだね」です。
 オペラハウスの任務を失敗し、同僚まで失っている主人公は悲しみ絶望しています。上司の立場にあるフェイは、機密を保持し続けた主人公を讃えています。
 (仲間たちはウクライナ警察に捕まったので真実はわかりようがないのですが、ランデブー地点も吐かなかったのは強い意志だったと思います)



②That test you passed, not everybody does.

 そして②のセリフ。「テストに受かった」というよりは、「試練を乗り越えたんだ」という意味合いが強いと感じます。
「君は他の人間ができないような大きな試練を乗り越えたんだよ。」
 →任務自体は失敗したが、オペラハウスの観客を救い、拷問に屈せず、治療に応えた体は回復した。
 全てテネットが仕組んだ入試であるという説は考えにくいです。
 主人公はそのまま引退できたかもしれませんが、フェイに労われ励まされてテネットの任務を引き受けることを選びます。

 なんとか蘇生して起き上がれるようになったら、フェイから「大事な言葉はテネット。慎重に使いなさい」とふんわりとした指示を受けることになります。

【6:TENETたぶんこうだったんじゃないか劇場(まとめ)】


 それでは、ここまで書き出したストーリーを時系列でまとめます。

①CIAはテネットに依頼されてウクライナ政府にスパイを送りプルトニウム241を入手させた。
②セイターがウクライナ政府に密告し、CIAのスパイを特定させた。
③ウクライナ政府は政府所有物を取り返すため、暗殺の証拠隠滅を狙いテロ現場を用意。
④主人公たちは政府関係者(CIAのスパイ)を救出しに行く。彼の同僚もしくは政府関係者の一方もしくは両者が既にセイターの手下であった。
⑤ウクライナ政府が用意したテロ現場へ行く主人公たちを密かにバックアップするため、テネット部隊も行く。
⑥CIA部隊が二手に分かれ、一方はバンで待機していたセイターの部下から他の仲間の居場所を教えろと拷問を受ける。もう一方はバンに戻る前にウクライナ警察に捕まり、プルトニウム241はウクライナが取り返した。
⑦テネット部隊が現場にいたセイターの部下を倒し、ギリギリ生き残っていた主人公を救出して逆行世界へ連れていき治療。
⑧CIA上司のフェイが、何もわからず目を覚ました主人公を励ましテネットへ勧誘。

 ということになります。

 いかがでしたでしょうか?!(このセリフ書いてみたかったんです)
 これは解説でも真実でもなくてあくまで仮説を並べてストーリーを書き出してみただけではありますが、このシーンはこういうことかな…という感じに書き出して考えていく作業が楽しかったです。
 冒頭を自分なりに整理できれば、さらに複雑に絡むストーリーと各登場人物の意図が見えてくると信じて、なにせブルーレイ早くほしいです。

 

 ここまで読んでいただきありがとうございました。



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