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スーパーマーケットを乗り切る

渡米当初はスーパーに行くだけのことが大冒険だった。

なにしろ英語がわからない。
元々TOEICの点数は決して悪くないし、渡米前にオンライン英会話も少しやって、
まあ生活のための日常会話ぐらいはなんとか…となめてかかっていたのに。

ネイティブのすさまじいスピード、
そこら辺のおじさんのちょっとくぐもった声、
さまざまな訛り。
想像以上に何も聞き取れないので、最初はすっかり怯えてしまっていた。

もちろんスーパーで売ってるものなんて日本とさほど変わらない。
でも売り場はどこもむやみに広くてバリエーションが選びきれない。
カゴから出してベルトコンベアに商品を並べる必要があることにも、
最初に挨拶とご機嫌伺いをすることにも慣れない。
レジで聞かれる「How are you?」が恐ろしくて仕方なかった。

ついでに最寄りのスーパーまで徒歩20分かかる始末なので、結局休日に夫と車で買い物に行くことになるのだが、
彼もこれまで日本国外で生活なんかしたことがない、ドメスティックな生い立ちの日本人なので、慣れない英語での生活に疲れ果てている。
結果、「今日疲れたからお会計お願いしていい?」と任されてしまったり。
そのときは元来のとんでもない人見知りも手伝って、しばらくはレジ付近の棚を眺めながらオロオロする羽目になってしまったような記憶がある。

それで疲れているとついセルフレジに入ってしまうのだが、品数が多すぎるときはレジ監視スタッフが渋い顔でチェックに入ってきたり。
こんなに山積みのカートでセルフエリアにいる人は周りに一人もおらず、そのことに気付いたときは顔から火が出るかと思った。

そういう小さな失敗を積み重ねながら、夫との買い物で飽きるほどレジを通って、最近ようやく一人で歩いて買い物に行き、動揺せずに有人レジを通ることができるようになった。
スーパーなら、挨拶をして、買い物袋が必要かどうか・会員カードを持っているか、ぐらいしか基本的には聞かれない(……ということがわかるまでにもずいぶんかかったが)、慣れてしまえば大したことはない。
わからなかったときに「Sorry?」と聞き返す反射神経も随分鍛えられた。

外国人の多いエリアでもあるので、店員が相当変な人でなければ、何度も聞き返すような人にはなんとか通じさせようと向こうも努力してくれる、ということもわかった。
(何度も同じトーンで低く決まり文句を繰り返す”変な人”にも当たったことはあるけれど。)

周囲に甘えて暮らすにあたって、たぶん愛嬌というのがとても重要だと思い、外では極力笑顔で過ごすように心がけている。
レジが終わったらひとまず笑って、"Thank you so much! Have a nice one. "と伝えれば悪意のないことだけは伝わる、はず。

ESLに通ったり独学を続けたりして、もう少し話せるようになったら世間話が盛り上がったりすることもあるかもしれないけれど、
言葉が不自由な外国人であることをあんまり恥じすぎず、しばらくはお店の人の厚意にすっかり甘えてしまうつもりでいる。

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