輪郭

部屋を出て行ったのはわたしのほうだった
日曜日の朝早く 泣きながら
それはもう別れましょうだよ と言い放った
言葉だけが部屋を浮遊して
音だけが部屋に残った

あなたがシャワーを浴びている音を聞きながら
部屋に置いてあったテディベアを抱えて
電車へ乗り込んだ
俯いたままベアを抱えた女は まだ19歳だった

遅い夜泣きながら電話をして
初めてあなたが聞きたがっていた過去の生い立ちを話した
それは俺じゃなくて 家族に話すべきだ と あなたは言った
嫌われたくなくて
突き放されたくなくて
話せなかったこと

いとも容易く わたしの問題だと線引きをし
いとも容易く 境目と輪郭を色濃くする

部屋を出て行ったのはわたしだけれど
心を引き離したのはあなたでした

本当は
出て行ったのはあなたのほうで
とどまってしまったのはわたしでした

部屋に残った言葉の 音の 反響を聞きながら
何を思ったのか
シャワーの水滴の中 泣いてくれたでしょうか

うそつき と言い放ったわたしに
あの時は本気でずっと好きでいると信じていたんだ と答えたあなた

わたしとあなたが他人である輪郭だけが
最後に残った

#詩 #現代詩 #ポエム

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