COVID-19


 
 
 適切な距離を保つ
 物理的な距離の分だけ連絡が途絶えた

 あの夜
 首元にハサミを突きつけられて
「きみならいいよ」といった唇
 責め立てる文章でしか話せないわたしの
 唯一の受容する愛だった
 のに
 きみの見えない日々にやり切れなくて
 別の人と口づけで交わる

 髪を撫でてくれた夜の分だけ
 何だって頑張れる気がしていた
 少しずつきみを蓄えて
 神様にだってなれる気がした

 きみと同じ病で
 数日違いの同じタイミングで
 死ねるなら
 それはとても希望だなって
 わたしはひとりきりの部屋の中で
 ずっとずっと思っていたんです。
 会わないことよりも
 きみが無い生活よりも
 生きていようが死んでいようが
 きみが側にいてくれるほうが
 わたしはとびきりしあわせだったんです。
 そんなこと頭が狂ってるって
 嫌われるのがこわくて
 言えなかったんです。
 きみが死んだらわたしも死ぬよ
 それがきみへの愛でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?