見出し画像

出会ってしまった

出会ってしまった、男性ブランコに。

わたしはお笑いに詳しくないけれど、でもこれだけはわかる、男性ブランコに落ちた多くの人たちが通ってきたであろう「あぁ、出会ってしまった。」と思うこの気持ち。

「出会ってしまった」のと「初めての出会い」はちょっとことなる。

初めての出会いは季節を少し遡って、いつかの夏の寄席だと思う。むせ返るような灼熱の太陽の下、自転車で劇場に行っては寄席を観ていた。

日常のあれこれと夏の尋常ではない暑さに、「また死んだ魚みたいな目してるよ〜」と言われながらかろうじて生きていたわたしは、ポップにただ笑いたくて合間を縫っては劇場に足を運んでいた。映画でも演劇でもなく、人の息づかいを感じながらただ人と笑うことのできるお笑いの劇場は、行きすぎる思考のスイッチを切り替える場所にぴったりだった。

それは長引く猛暑が落ち着いて、ようやく呼吸ができるようになってきた頃。ふと気づく。あれ?男性ブランコのコントの一コマが、言葉が、情景が、そっと心に残って、消えない。。

しげしげと寄席に通っては、様々な芸人さん達の織りなす目の覚めるような勢いのある笑いに、時を忘れ、お腹を抱えて笑う日々を過ごして。閉じていた喜怒哀楽を、えーいっと引っ張り出してもらった。

そんな暑い夏の日も、決して押しつけることのないじんわりと沁み渡るような笑いで、男性ブランコはそっとそこに居てくれた感じがする。不思議な確かさで、少しずつ少しずつ、男性ブランコが何かの栄養素みたいに血液にのって身体を巡って。落ちていた。あぁ、出会ってしまった。


男性ブランコのコントは、わたしにとって音楽みたいな存在だ。街で流れてくる音楽に、ふと眠っていた記憶が思い起こされるような、心がきゅっとなる感じに似ている。

二人はほとんど普段着みたいな衣装で舞台に上がって、ほぼ小道具も使わず、一瞬の呼吸で、舞台を客席を、不思議な世界へ連れて行ってくれる。

こんなにすごいこと、舞台に立ち続けた人にしかできない凄みなのだと想像するし、丁寧に作り上げられた世界観、これまで重ねた長い長い時間を思うと、とても尊い気持ちになってしまう。暗転後に深くお辞儀する二人をみていると、何か大きなものに感謝を捧げているのかなと感じるほど、、(大げさじゃないとおもうの)

男性ブランコ、好きだなぁ。

これからもずっと大切に愛してゆきたいと思える出会いに恵まれたことの、幸せよ。

この記事が参加している募集

#推しの芸人

4,407件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?