見出し画像

アメリカ旅行記④ The Grand Circle(後編)

12月は師走とはよくできた表現で、非常に忙しい月だった。

散々溜めてきた様々を片付けることに時間を沢山使っていたため、更新に時間が空いてしまった。細かい部分は記憶も薄れつつあり非常に焦らされる。忘れたくないので、書く。

前編は移動だけになってしまった。ただ、それほど移動が大変だったことを察して頂きたい。ラスベガスから殆ど1日かけての大移動だった。

後編はいよいよ渓谷を巡る。簡単に後編の流れを要約すると、[ホース・シューベンド→アンテロープ・キャニオン→グランド・キャニオン]のようになる。長い、濃厚な1日だった。

アメリカ5日目・Pageの朝

画像1

(↑早起き組は優雅に朝日を浴びながらコーヒー)

起きれた。この日も快晴。天気に恵まれる旅だ。

8時頃には起きて朝食を食べていたと思う。予定が詰まっている1日の朝にしっかりと起きれたのは大きい。シャワーを浴び、用意を済ます。いつもどおり用意の早い3人で一足先に朝食を取った。

無料の朝食にはベーグルやフレーク、トーストや茹で卵、林檎などがあった。コーヒーは相変わらず薄かったけど、もう慣れてきていた。

部屋に戻るとマイペースな友人2人はベッドでスマホを眺めていた。食べてきた朝食を自慢し、準備をするよう促した。いつもの朝のやりとりだ。

無料の朝食、WiFi、シャワーなど付いて1人20$弱だった。大満足である。ベッドは相変わらず足りなかったけど。

車に乗り込みPageをあとにする。大きな都市でもないし、もう訪れることはないのだろうか。年老いてから偶然訪れたりしたら、どんな気持ちになるだろう。

ホースシュー・ベンドまでは車で10分もかからないくらいだ。昨日頑張って進んでよかった。この日はでっかい関西人が運転していた。彼はまだアメリカでは運転していなかったため、これが最初の運転だった。

アメリカ5日目・ホースシューベンド

画像2

みんなのテンションが上がり始めた頃、ホースシュー・ベンドの駐車場に着いた。車から降りると乾いた風が心地よかった。

駐車場から、小高い丘を乗り越えて15分ほど歩くと、かの有名なホースシュー・ベンドだ。

駐車場には必ず水を持つよう注意書きと、天候が崩れると大変危険との旨が書いてあった。確かに、荒野で起きる嵐は凄く強そうだ。

友人はなぜかリンゴを丸々1つ持っていた。今まで見たどの映画やドラマに出てきたリンゴを持っているキャラは、大抵サイコパスか、変態だった。

画像3

(↑小高い丘の前でリンゴを持って謎のポーズ)

有名なので写真を見たことがある人は多いだろう。コロラド川が馬の蹄鉄(horseshoe)状に湾曲して削った地形のことだ。その渓谷は高さが300m程もあるらしい。東京タワーと殆ど変わらない高さだ。

日本が技術力を結集して作った、国を象徴するテレビ塔ほどの高さの渓谷。言葉を失うのも仕方がないことだ。

ようやく5人が発した感想は殆ど2文字で、「すご!」「でか!」「ふか!」「こわ!」などだった。表現力のなさにがっかりした反面、この景色を見て冷静に長文の感想を述べる人とは10日間も過ごせないだろうと思った。

画像4

(↑そこでは頼むからあんま動くな)

自分は軽い高所恐怖症だ。友人が崖の淵で座って写真を撮るのも、自分が座るのも、とてつもなく怖い。特に今回の友人たちは落ちそうなので怖かった。崖はだ砂岩であり脆いので柵のあるところからの見学がお勧めだ。絶対物足りないと思うけど。過去には死亡事故も起きている。

正直、馬の蹄鉄の形なんてどうでもよかった。ただただ広大な景色に感動していた。いつまでも見ていたいところだったが、アンテロープ・キャニオンの予約時間に遅れるのが怖いのでホースシュー・ベンドをあとにした。ばいばい。

画像5

(↑意外と遠いよ)

帰り道は長い登り坂と砂の足場、強い日差しが我々を苦しめた。小高い丘から見下ろす荒野は綺麗だった。その頃には友人が持っていたリンゴはもう手元にはなかった。

車に乗り込み次に目指すはナバホ族の居住地にある、アンテロープ・キャニオンだ。

アメリカ5日目・アンテロープキャニオン

画像6

(↑駐車場着いてわくわく)

ホースシュー・ベンドからアンテロープ・キャニオンまでは車で10分程度だった。予想より早く着いたので一本早いツアーに参加できることになった。

画像7

アンテロープ・キャニオンはナバホ族の土地にあるため、公式のツアーでなければ入ることができない。ツアーの集合場所ではナバホ族がスピーカーで音楽を流して、伝統的とみえるなにかを踊っていた。てか音楽スピーカーなのかよ。

アンテロープ・キャニオンは鉄砲水や雨水、風が長い時間をかけて侵食した狭い渓谷で、非常に滑らかな地層となっており幻想的だ。特に、太陽が真上に出る昼頃は差し込む光芒がスポットライトのように渓谷内を照らす。

ツアーは10人1組程度で、それぞれスタッフが1人付いて案内してくれる。20代後半程度に見える我々の担当の青年は挨拶をすると、「今日は朝からツアー続きで疲れたよ」と言っていた。

確かに、多国籍な観光客を連れて渓谷を案内するのは非常に骨が折れるだろう。彼にはこの美しい渓谷も、近所の公園を歩くような感覚なのだろうか。

画像8

(↑荒野に関する諸々の注意書き)

集合場所からは荒野を歩いて移動する。相変わらず日差しが強いが、カラッとした空気に通り抜ける風が気持ちよかった。遮るものがない荒野で、風はどこまで吹き抜けるのか気になった。

荒野を進むとやがて岩のドームのようなものが見えてくる。アンテロープ・キャニオンだ。ツアーが列をなして渓谷に入っていく。なんだか捕虜となって盗賊のアジトに連れていかれているような気分だ。

階段を降りていくと徐々に左右の岩が波の模様を描き始める。アンテロープ・キャニオンに来たという実感が湧き始めた。

渓谷の下まで梯子か階段かはっきりしない何かを下っていくと、太陽の光が渓谷の天井から差し込んでいることに気づいた。差し込む太陽の光は渓谷内の赤を基調に幾重も重なるグラデーションの見え方をより幻想的にしている。

時間によって変わる、差し込む角度と光量は、アンテロープ・キャニオンに様々な表情を付け加えるのだろう。

画像9

(↑綺麗に撮れた)

我々が渓谷に入ったのは11時半ごろで、太陽がほとんど真上にくる、見頃の時間帯だった。ほとんど垂直に入る光は、光の着地点から同心円状に明るさをグラデーションしていて、渓谷内には色彩と光彩が溢れていた。非常に幻想的だった。

画像10

(↑でっかい関西人)

また、地層の滑らかさに驚いた。ヤスリがけを何十にも細かくしたのではないかと疑ってしまう。自然のチカラでここまで繊細な侵食が行われるものなのだろうか。きっと人間からは想像もできない悠久の時間をかけて生成されたのだ。

そんな自然が作り出した環境で、多くの観光客であふれる渓谷内は違和感があった。

自然が悠久の時間をかけて作り出した渓谷に数十年しか生きていない人間が大量に踏み込みそれらを壊してしまうのはなんだか悲しい気分になる。世界中で世界遺産が観光客によって破壊されているというニュースはよく見るが、この時までまるで実感や危機感を持つことはできなかった。

画像11

(↑みんな裂け目から出てくる)

だんだん天井が低くなり、やがて地面の裂け目のようなところから地上に這い出た。日差しが眩しかった。集合地点まで荒野を歩き、戻ると水が配られた。いや出発のときに配ればいいのに。

すでにお腹いっぱいの気持ちで駐車場に戻り、次なる目的地はグランド・キャニオンだ。流石に誰もが知る、アメリカを代表する観光地だろう。ばいばいアンテロープ。車に乗るとフロントガラスは埃まみれだった。

アメリカ5日目・グランドキャニオン

画像12

グランドキャニオンを目指し出発したのは昼下がりだ。ここまではいいペースで来れている。

ここからはまた、広大な大地をポツンと1台のバンで暫く走った。遠くに長い長い貨物列車が連なって走っていた。長すぎて動いているのか、止まっているのか分からなかった。

途中、皆空腹で騒ぎ始めた。周りには街もなかったため当分昼食にはありつけないだろう。今日も朝が早かったのにこの時間まで空腹を忘れていた。(14-15時くらい?)空腹を忘れるくらいの景色が我々を圧倒していたのだ。

ハイウェイにはたまに街の看板が出る。街の名前と近くにある店のロゴだけが描かれた小さな看板だ。日本でいうとサービスエリアみたいなものだ。

大抵の場合、その看板は街に入る分岐の直前に現れるため看板を見た一瞬で街に入るか判断して運転するのはかなり難しい。

看板を吟味し2、3の街を走り抜けると街が現れなくなってしまい、絶望した。結局暫く走ったのちにバーガーキングに入りアメリカンな昼食を取った。日本より美味しかった、気がする。

そこからは睡魔に襲われ後部座席で眠ってしまい、記憶がない。起きるとすでにグランドキャニオン国立公園に到着していた。みんなありがとう。

グランドキャニオン国立公園は、アリゾナ州の標高2100mの高原にある。意外と標高が高い。

様々な色の濃淡でグラデーションがかった地層は11層ほどあるそうで、これは20億年もの地学史を遡れるらしい。

最も古い地層は先カンブリア時代のものだそうだ。先カンブリア時代とは、およそ46億年前〜5億4100万年前までの約40億年の期間を表す地質時代だ。先カンブリア時代は明らかな化石が見つからないため、詳しいことがあまりわかっていないらしい。

46億年分の地層を、コロラド川は悠久の時間を掛けて削り続けたのだ。その結果が巨大な渓谷となって、現れている。

グランドキャニオンの平均の深さは1200m、最大で1800m程度になるらしい。だいたい東京スカイツリー2本分である。

谷の幅は6-19km。驚くことに、その長さは446km程あるそうだ。これは日本で東京-琵琶湖間の距離に該当する。

東京から琵琶湖まで、スカイツリー2本分の亀裂が走っているスケールに想像がつくわけがない。これは本当に、行ってみないとわからないだろう。是非、一度は訪れてみてほしい。

国立公園内は、車で移動する。様々なビューポイントがありそれらを自由に回る形でグランドキャニオンを楽しめる。

画像13

(↑写真では伝わらない。)

我々は先ず有名なビュースポットに行ってみて、言葉を失った。彼方まで広がる山脈のような渓谷は、映画で見る火星や原始の地球のようだった。自分がいた世界とは異なるという違和感で一瞬頭の中が真っ白になった。

赤みがかった地層から成る景色は、壮観であった。渓谷は大きすぎて、ひと目では見きれない。段々と視線を遠くの渓谷へと移していくと、やがて地平線に吸い込まれた。その作業を繰り返してるうちに悩んでいたことは大抵小さいことに感じた。すごくありがちだが本当にそうだった。

遥か下の方に見えたコロラド川はとても小さく見えた。あんな小さな流れがこの大きな渓谷を作ったのか。

画像14

(↑本当に写真では伝わらない)

高いところが苦手なのでとても怖かったが、グランドキャニオンは本当に凄かった。いつまでもみていられる。崖に腰かけ、渓谷を駆け抜ける風に当たりながらみんなで話した。人生であと何度、こうして友と話せるんだろう。歳を取ると色々あって難しくなるのだろう。若い時代に仲間と過ごす時間は貴重だ。

ビューポイントをずらして、グランドキャニオンに沈む夕陽を見た。もうお腹いっぱいだ、勘弁してくれというくらいの景色だった。

画像15

(↑この直後、真っ暗闇になる)

グランドキャニオン周辺は、当たり前に街灯が全くない。そういったところで夕陽が沈むと、一気に世界が夜になる感じがある。

心地の良い軽いアーチになった地平線に夕陽がかかるその瞬間、夕陽を中心に地平線に光が走っていく。そして一気に暗くなる。今日も夜が来た。

ビューポイントから駐車場に帰った頃にはすっかり夜だった。辺りは一面闇に包まれた。ふと顔を上げて、満点の星空に驚いた。

数えきれない数の星、肉眼でも見える天の川、惜しみなく流れ落ちる流れ星、図鑑のように様々な星座。口を開けて立ち尽くした。

やはり友人の1人はこういう時に最初に寝そべるのだ。(誰かは想像に任せる)寝そべって見たら最高だろう。それ最高だなと思う事が度々あって嬉しい。体をよこにすると、駐車場のアスファルトはひんやりと応えた。

割と寒かったがかなりの時間星を見ていた。最後は流れ星を見つけた人から車に帰ることにしたが、流れすぎてすぐに全員が車に入った。

帰りの山道は完全に真っ暗で恐ろしかった。こういう時の運転は大抵自分だ。みんな眠そうだったので、優しい運転をした。

こういう時、何人寝かせられるか自分の中でチャレンジしたりする。アクセルを早めに抜いて減速、回転数を変えずに少しずつ踏みながら加速、一定速度での旋回。意外と楽しいものだ。

このメンバーだとパーフェクトはすごく難しい。大抵の場合気を遣って起きていてくれる奴がいる。気を遣って起きているように感じさせないように話してくれているのも伝わってくるが、普段気を遣わない間柄な分、嬉しい。

話し合いの結果、この日はルート66の直前の街で泊まることにした。Williamsという街だ。登山家にちなんで名付けられたらしい。

ウォルマートで買い物をし、モーテルを探した。もう慣れてきた生活の一部だ。シリアルじゃんけんではふざけて選んだ俺が勝ってしまい、全員で文句を言っていた。じゃんけんは絶対なのだ。

この日のモーテルは二つの部屋が扉で繋がっていた。嬉しい。カフェテリアスペースに一つしかない電子レンジを駆使して冷食を食べた。4つしかないイスを無理やり使って。

遂に1人が体調を崩した。当たり前である。

平均4-5時間の睡眠、崩壊した食生活、毎日の飲酒喫煙、はっぱ。逆にみんなタフだ。今日は彼が早めに寝て、他の4人で宴会となった。

画像16

(↑まんちー。)

車の床下にしまっておいたアレがまだ残っていたので4人で楽しんだ。意味のわからない言動を繰り返したのちにベッドに倒れた、らしい。幸せな日々だ。また意識を失うようにして眠りについた。アラームは、つけていなかった。

アメリカ旅行記⑤に続く

コメント、いいね、投げ銭が糧になります