ギ道楽

ブラジリアン柔術の特徴として柔道よりもユニフォーム(以下、ギ)が自由・奇抜であることが挙げられる。
最近は試合出場の際のギのチェックの厳格化が進み、白・黒・青の三色のみ、バッチ(ワッペン)や刺繍の位置の指定が厳しくなってしまい、競技志向の人間からは派手なデザインが敬遠される傾向にあるが、練習で着用する分にはどんなものギを選らんでも良いというのはブラジリアン柔術の楽しみの一つだと思っている。
さまざまな国にBJJ用のメーカーがあり、EC全盛の今日は日本の個人ブランドから欧米の大手ブランドまで、懐具合が許す限り難しい手続きなしで購入ができる。

趣味の道具としてそこまで高いものではない(とはいえ軽々に購入できるほどではないし、何より着数が増えていくと家人の視線が痛みを伴うようになるものではある)ので、気に入ったものは手の届く範囲で購入している。

あらゆる商品に言えることだがあまり在庫を抱えていてもしょうがないことと、限定品として購買意欲を高めるためかギは売り切りで再販がされにくいものではあるのだが、各ブランドの定番品で自分が購入したことがあり、ネット上でまだ購入可能なものについて簡易的なレビューを書き連ねてみる。
発売年度により細かな仕様の差はある可能性があるので、あくまで参考として活用いただければ幸いである。

BULL TERRIER ウルトラライトZeroR 

自分がはじめて袖を通したのは国内最大手のブルテリアのウルトラライトシリーズ
軽量で装飾が少なく、厳格化した試合のユニフォームチェックにも対応可能なので試合出場の際は予備として持参するようにしている。
装飾はまったくなく、補強も最低限。

最初に購入したものであることから自分の柔術着の基準になっているので、生地感や着用感に特筆すべきところはない。
洗濯による縮みはほぼない。
ブルテリアは他ブランドに比べてサイズ設定が細かく、BJJをはじめたてで身長は平均的だが胴回りがふくよかな人や、逆に細身で手足が長めの人にも対応するサイズがあることと、実店舗で試着できない代わりに自身の体型を伝えると近しい体型のスタッフが着用したイメージを教えてくれるという親切さがあるので、これからBJJをはじめようという人はとりあえずブルテリアにしておけば間違いないと推薦できる。

INVERTED GEAR 400 Gi

アメリカ ペンシルベニア州のINVERTED GEAR
昨年まで東京イサミが輸入していたので店舗で試着の上購入できた。
2024年モデルもイサミが取り扱っているので、店頭で試着ができる。

会社として高価な限定版商法に反対し、一年中定番品を販売し続けるという方針なのが非常に共感できる。

洗濯による縮みはほとんどない。
生地厚はしっかりしているがブルテリアのものより柔らかさがあり着心地が良い。
他のブランドでまだ見たことがない仕様として、パンツの内側にマウスピースを入れられるポケットが付いている。

装飾はシンプルで試合用としていたが、袖口にロゴ入りの補強があるため最新の試合のレギュレーションには非適合の可能性がある。
送料を考慮しなければ価格は安価で、セールも頻繁にやっている割にあまり着ている人を見かけないのでもっと購入者が増えて国内代理店ができることを祈る意味でおすすめしたい。

INVERTED GEARはロゴマークのパンダにあやかってか竹繊維のギも販売しているが、そちらは未購入。
着用経験のある人間からコットンと比べるとややゴワゴワし、重みがあるとの聞いており踏ん切りがつかないがセールの条件が良いときがあれば購入しようと思っている。

ATAMA クラシック

こちらは現在もイサミが取り扱っている。
自分が購入した時は定価が18,000円のセールかクーポンの割引で15,000円くらいだった記憶があるので、近年の円安・物価高の恐ろしさを感じる。
サイズチャートをいくら確認しても実際届いた製品のサイズに違和感ある場合はあるので、試着してサイズ感を確認できる実店舗があるというのは非常にありがたいことである。

クラシックというだけあってか、洗濯すると上下とも縮む。
初回の洗濯時だけでなく、日々の洗濯の中でも少しずつ縮んでいく。
試着した際にはぴったり、やや余裕のあるくらいだったが最終的にパンツは脛が見え始めるくらいまで、ジャケットの袖も手首が隠れないくらいまで縮んだ。
パンツがリップストップではなく、コットンのいわゆる道衣という生地感。
480gmsと現在主流のギよりも重めでゴワゴワとした肌触り、厚みがあるので寒い時期はジャケットが乾かない。
と、欠点に思える部分を並び立ててしまったが非常に気に入っているギである。
黒地に上品な金色のロゴだけのシンプルなデザインで、洗濯を重ねると黒が褪せてグレーに近くなっていくのも味があって良い。
サイズ感が合わなくなってしまったので人に譲ったものの、円安が落ち着いたらもう一度購入しようと思っているくらい愛着がある。
1着目としては難しいが、ギ選びに慣れてきた人には一度クラシカルなものを経験するという意味ではおすすめしたい。

adidas アディゼロBJJ

超軽量をウリにしており、ライト・ウルトラライトの商品名を冠する既存の他社品の軽量モデルと比べても圧倒的に軽量。
ブルテリアのウルトラライトA0サイズが1.15kgに対し本品は800gと缶ビール一本分も軽量。
しっかりめのバスタオル程度の持ち重りで、生地も薄手のためかさばらない。
薄手のため酷暑の時期でも熱がこもらず、洗濯後乾くのも早い。
adidasがサポート選手に着用耐久試験をさせて一年以上破損しなかったということで頑丈さも謳っている。
個人的にも週一半年程度の着用で特別傷んでいないので、すぐに破れるということはなさそう。
サイズ小さめを選んだが、洗い縮みはほぼなし。

デメリットは3つあり
①試合用レギュレーションにはまったく適合していないため、試合には使えない。
②ウリの生地の薄さのせいで、白色だと下着がモロに透けて見える。
汗をかく前から透けており、汗をかけば下着は丸見え。
③ポリエステル・綿の混紡でポリエステルの比率が高いためものすごい量の毛玉がつく。
エリも繊維が皮膚からアカをこそぎ落とすのか、すぐに黄ばみ・茶々けてくる。

上記のデメリットが気にならないくらい安価で機能的な柔術着なので、練習用の二着目の柔術着を探している方には黒・青のモデルをおすすめしたい。
折に触れておすすめしているが、着用者をあまり見かけないのでadidasのマーケティングが悪いかもしれない。
機能性柔術着の開発の礎になるために、皆さんぜひ購入してほしい。

FUJI SPORTS All Around 

格闘技用品の老舗FUJI Sportsの定番柔術着、北米ストアではNo.1セラーモデルとのこと。
柔道着が祖業のメーカーだけに重厚な550GSM生地のジャケットとみっちりした目のツイルパンツ、脇から袖先にかけて極太の補強が入っているので毎日練習で着ていても破れそうにない安心感があり、畳んでも嬉しくなるくらい厚くかさばる、重い、着ると室温に関係なく暑い。
エリが他メーカーの柔術着とくらべても手触りがよく、ふかふかしており新品のときは小動物の背中のような得も言われぬ心地よさがある。

以前はブルテリアが国内代理店だったようだが、商品の更新は止まってしまっている。
北米ストアから個人輸入しようと思っていたが、なぜか岡山県の自動車部品屋さん「TRUCKS」が代理店をやっているようで輸入の手間が省けた。
店舗関係者の方がBJJを趣味にしているのだろうか?

ATAMAのクラシックと同様、現在の主流の軽量モデルではないが練習用としてとにかく丈夫なものが欲しい場合はおすすめしたい。
重量の問題で試合レギュレーションは不適。
洗い縮みもほぼなし。
重い代わりにとにかく着心地がよいのでメインの練習着はこのモデルにしようと思う。

TATAMI Nova Absolute

英国のブランドTATAMI
INVERTED GEARと思想が近く定番品を常にストックしているが奇抜な限定品も出すブランド。
自分はこの定番品にカスタムで刺繍が入っているモデルを購入したが、先日このモデルを着ている人のものを触ったらほとんど一緒だったので紹介する。

ジャケットもパンツもかなり軽量で、特にパンツのお尻周りがダボっとしないシルエットで非常にフィット感がある。
パンツのヒモがTATAMIシグネチャーのもので、しっかりしていて高級感がある。

縫製がやや粗雑で、脇の下あたりがケバケバしてくる。
刺繍はしっかりしていてほつれてくることはない。
布地もほかのブランドでは経験したことのないケバ立ちをするが、生地がもともと柔らかいので着用感は悪くない。
洗い縮みはほとんどない。

とにかくいつも30%オフのセールをしているイメージがある。
ホリデーシーズンはさらに割引をしてくるので、円安でも送料込みで2万円以下で購入できる。
こちらもブルテリアに少しだけ在庫があるが、色味など本国ECサイトのほうがたくさんあるので個人輸入のほうが選択肢は多い。

軽量なので普段の練習着としては一番着用率が高い。
他人におすすめブランドを聞かれたときに一番に勧めるようにしている。

2024年8月修正・追記

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