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米津玄師〈LADY〉直感的に好きになった曲。他の曲との違いは?

米津玄師さんの、最新曲。
聴いた瞬間「あっ、明るい」と、大好きになった。

米津さんの曲は、そんなにたくさんは知らない。聴いたのは「Lemon」以降のシングル曲と、アルバム「STRAY SHEEP」くらい。ライトファンともいえるかどうか。

でも新曲が出ると、いつも気になってしまう。
米津さんは、本当に才能豊かで、いろいろな曲を作る。
「Lemon」「Pale Blue」のような美しい曲、「馬と鹿」「M八〇七」のように壮大な曲、「感電」「KICK BACK」のように、かっこいいけどどこか挑発的な曲。

どの曲にも共通していることが、根本にどこか「哀しみ」を感じるところ。ところが「LADY」には、それがなかった。

明るく軽やかなジャズ調のサウンド、優しくまっすぐきこえる、米津さんのボーカル。ミュージックビデオでは、子どものように無邪気に横断歩道の白線を歩く米津さん。
何より、後半で見せてくれる最高の笑顔!
彼のこんな笑顔を見るのは、初めてかもしれない。

前シングル曲は「KICK BACK」。実はこれをミュージックビデオで初めて聴いたときは、「うーん・・」と思ったのだ。

モーニング娘。の「そうだ!We're ALIVE」をサンプリングして鮮やかにアレンジし、アニメ「チェンソーマン」とタイアップし、King Gnu 常田大希さんとの共作でもあり・・話題性十分、緻密に作りこまれているのだけど。

昔、別のアーティストで似た感じを受けたことがある。
1994年の暮れ、ミスチルが出した「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」だ。

1994年のミスチルは、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
6月「innocent world」が大ヒットし、9月にアルバム「Atomic Heart」も空前のヒット。興奮冷めやらぬ間に、あの「Tomorrow never knows」がリリースされたのは11月。

そんな大大ブレイクの年の締めくくりに出たのが「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」だった。
聴いた瞬間、私は「・・えっ?」となった。
激しいロック調、しゃがれた声。それだけ取れば、今までにない新鮮さを感じることもできるのだけど、違和感を覚えたのは、なんとも投げやりな歌詞。しがないサラリーマンを揶揄したり、さえないグラドルが”枕営業”するような描写まで。そして締めくくりの「みんな病んでる」。
桜井さん、病んでるの?と心配になったのだった。

私はミスチルや桜井さんのインタビュー記事などをひもといたことはないので、彼らの内面などは何もわからない。だが知る事実だけでいうと、彼らがこの2年後に出したアルバム「深海」は、「Atomic Heart」とは打って変わった内省的な作品だった。そしてさらに1年後、約1年半の活動休止に入った。

そんなことも、今や30周年を迎えたミスチルの歴史からすれば、ほんの1ページにすぎない。でも休止当時、世間は、けっこうざわついていた記憶がある。
その活動休止にいたる前の最初の違和感が「everybody goes」だったように思う。

ミスチルの話が長くなってしまった。
私はなんとなく米津さんの「KICK BACK」に、「everybody goes」的なものを感じていた。投げやりな、世間の期待感に背を向けるような。
嫌いなわけではない。かっこよくて、完成度が高いとは思うのだけど。(国内だけでなく、海外での評価も高いらしい)

でもここからさらに、米津さんは厭世的な「哀しみ」をただよわせた曲を作っていくのかな、と思っていた。

そこに「LADY」のような曲。今までにない満面の笑顔。
とてもいい意味で裏切られた。
何も知らないのだけど、あぁ米津さん幸せそう、よかった、と思ってしまった。

あるアーティストが哀しい曲を歌っているから不幸せで、ハッピーな曲を歌っているから幸せにちがいない、なんて、我ながらワイドショー的だ。
とても才能豊かな米津さんだから、自分の中の様々な引き出しを、曲にして表現しているだけかもしれない。

私は彼の曲をそれほどたくさん知らないが、そんな風に何かと気になってしまうのは、彼がいまのJ-POPを語る上で、とても重要な人だからだ。J-POPが好きな私にとっては、ほとんど「恩義を感じている」といってもいいくらい。

そんな米津さんへの「恩義」については、次回また。

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