無罪

昨日のnoteに書いたドラッグストアがある道には街路樹がある。
舗装された歩道が、木の根元だけ四角く切り取られて土が覗いている。

冬になったら、木の根元にパンジーが咲いていた。元々あったのではなく、突如既に花が咲いている大きなものが植えられていた。
近所の人が植えた?小学生が家に持ち帰るのが面倒で埋めていった?(私が通っていた小学校では毎年パンジーを育てていた)
理由はわからないが深く考えることも無く「パンジーがあるな」と思っていた。

現在、花は増え続けている。6本の街路樹の根元が彩られている。庭の飾りにする、小さな犬の置物まである。
先日通りかかったら、1人の女性が木の根元を掘り返して球根を植えていた。恐らく春になればチューリップとかクロッカスとか、そういった物が育つのだと思う。

歩道は私有地ではない。都道府県か市が管理していると思う。
少し調べたところ、やはり管理者の許可を得るか、道路占有許可とやらが必要になるらしい。

多分許可はとっていない。彼女のしていることは誰かが咎めたら罪になるのだと思う。
しかし咎める人は今のところ居ない。誰かの邪魔にもなっていない。「花があるな」と思っているだけだ。

これが花ではなく全て置物だったら?使い古した家電だったら?植えているのが近所の女性ではなく、車でわざわざやってくる見知らぬ男だったら?すぐに誰かが通報しただろう。自然のものならよし、綺麗ならよし、ご近所の知り合いがやっているからよしとしているのは、私たちが共通で持つ見えない力だ。

彼女が帰宅しているところを偶然見たことがある。街路樹沿いの家だった。庭には鉢植えが溢れていて、季節になったらバラ等が咲き乱れそうなアーチが3本もある。
本当はダメとわかっているけど、家にはもうスペースがなくて植え始めたのだろうか。それとも「見て!綺麗でしょ!」という気持ちなのだろうか。もし後者だとしたらその精神で日々生活出来ることが羨ましい。嫌味ではなくそう思う。自分の好きな物を皆も喜んでくれるはずという思いで生きているのは楽しそうだ。実際、花が嫌いという人間はあまりいないわけだし。

昨日その道を通ったら、小さな木の苗が植えられているのを見つけた。オリーブだ。実家にもあったのでわかる。結構大きくなることも知っている。
元々ある木の邪魔にならないのだろうか。そんなに広い歩道でもないし、枝が伸びたら道を塞ぎそうだ。彼女が手入れをするだろうから大丈夫だろうか?
花→犬の置物→木
じわじわと、見えない力に許される範囲を越え始めている気がする。


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