ジュブナイル

コンカフェのあるお客の話だ。

18歳の青年だった。

TikTokで見つけたうちの店の他のキャストの子を目当てにテスト期間の合間にやって来た彼。その日は何も食べずあまり眠らずハイになっていたらしく「今日ならいける」と思って勇気を出して来てくれたらしい。

彼の目当てのキャストの子は結構人気で、その時も他のお客について接客していたため、少しの間暇だった私が代わりに接客を引き受けていた。

その際「折角来たんだから、チェキは撮って帰りなよ!」と宣伝すると「いやぁ、ちょっとそれは…」と言う。理由を聞くと、親に女の子に興味がある素振りを見せたことが無いからチェキなんかが見つかると大変なのだ、という。私は「そんなことがあるか?」と思ってその後も二度くらいしつこく勧めてみた。

彼はカラオケのドリンクバーのようにコーラをよく飲み、結局はチェキも撮ってくれた。しかしやはりそれを持って帰りはせず、チェキの写真をスマホに撮り、喜んで帰った。


営業終了後に、彼は某目当てのキャストの子に唆されたためかわざわざTwitterアカウントを作り、私のことをフォローしてきてくれた。本当にその為だけのアカウントという感じで。そして丁寧なことには感想とお礼までDMで送ってきてくれた。


その日から数日経ち、またDMが来た。夏休みが来たからパーマを当ててみようか悩んでいるということらしい。「周りに意見を聞ける女の子もいないので…営業外のことで気を悪くされたらすみません……」と丁寧に断りを入れてくれたが、全然カワイイしおばさん応じちゃうゾ!という感じだ。そしてこの口ぶりから、本当にきっと彼女に浮気がバレるからチェキを持って帰らなかったとかいうわけではないのだろうなと思った。「折角はじめての大学の夏休みだし、やりたいことはやっちゃえ!」みたいな感じで返したと思う。


それからまた半月くらいが経ち、なぜ今日このnoteを書いているかというと、その彼のアカウントがさっき見た時に消されてしまっていたためだ。きっと飽きた、というのが一番あり得る要因に違いないだろう。しかし本当にもし親に監視されていて一悶着あったなら可哀想にと思うし、パーマが成功してバイト先の女の子にモテたならそれもそれで良いなと思う。

18歳という社会的に大人と子どもの狭間くらいの年齢に真っ暗なバーのような造りのお店に一人踏み入れ、チェキをお店に残していった経験を、そんな非日常を少しでも彩られていたらいいなと思った。




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