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良性と悪性とを行ったり来たり

僕はTwitterやFacebook、そしてInstagramもTikTokをやっていない。というよりもその波に乗り遅れてここまでズルズルときて諦めてしまった(なんだか昔のバンドブームに似ている)。今やっているSNSの類はLINEだけだが、そんな自分がnoteをやろうと思ったのは、“東京オリンピックが開催されるはず”だった記念すべき2020年7月に自分が人生初の入院を経験し、しかもまさかの癌告知を受けたから、人生初の日記のようなものを何かに残そうと思い立ち、noteを始めることにした。

さて、人間ドックで腎臓の要精密検査という判定を受け、安直な発想で恐る恐る泌尿器科を受診する。これは僕の勝手な想像だが、泌尿器科=性病というはイメージが先行し、行くだけでなんだか恥ずかしい思いがするのだが、僕が行った病院は泌尿器科と内科、皮膚科と混合診療なので待合室には様々な年齢の方がいて、恥ずかしい思いが希釈される。
診察室に呼ばれて先生に経緯を話すとすぐに上半身を脱いで、人間ドックと同じエコー検査をもう一度やったのだが、このエコー検査がとにかく苦手だ。くすぐったくて笑いを堪えるのに必死で、奥歯をぎりぎりと噛み締めたりベッドの端っこを強く握ったりとあれこれしている。たいてい「はい、リラックスしね~」とやんわり注意されることが多い。そんなこんなで脇腹や腰、お腹をぐりぐりやること数分、その場で画像結果がプリントアウトされ、先生から告げられたのは「左の腎臓にあるのは腫瘍の可能性がとても高いね」ということばだった。

腫瘍。

人生で初めて受けたことば。過去には肋骨骨折や靭帯断裂、帯状疱疹を経験したが、それらと比べものにならない破壊力があり、すぐに状況が飲み込めなかった。頭が真っ白になるとはこういうことか。そんな僕の気持ちを察したのか先生は続けて、「腫瘍の大半は良性だから、今後の安心を得るために総合病院でもっと細かい検査をしてみよう」と勧めてくれて紹介状書いてくれた。
病院の周辺は個性的なラーメン屋が多く有名なとんかつ屋もいくつかあり、ちょっと足を伸ばせば緑の多い大きな公園がある。そういえばドン・キホーテもあったな。病院のある場所は街ブラをするのにいい場所だが、『腫瘍』ということばの破壊力に街ブラをする気力をダイソンのごとく完全に吸い取られ、どこにも寄り道をせずバスで帰宅した。家に着く前での間はずっと「自分の腫瘍も良性のはず」と信じ、窓の外を見たり紹介状が入ったかばん意味もなく開いたり閉じたりと落ち着かなかった。

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