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最後までAかBが並ぶと信じていたのに

僕の記憶では、父方と母方のおじいちゃん・おばあちゃんは共に老衰で亡くなった。最後に会ったのはいつだったか思い出せないくらい疎遠になっているが、親戚の中で糖尿病や心臓病といった大きな病気にかかったという話を聞いたことがない。そして癌も聞いたことがなく、幼い頃や学生時代に家族で食事をしている時や何気ない日常会話の中で「うちは癌家系やないからなあ」という親のことばを耳にし、中年になってもずっと信じていた。2020年4月までは。

タバコは吸わない。酒は誘われたら飲む程度でなきゃないで全く気にならない。加齢による衰えはあるものの趣味でブラジリアン柔術を続けているおかげか、幸いにもこれまで年一回の人間ドックでは要精密検査は加齢による目の衰えで指摘された一度しか見たことがない。しかし2020年2月に受けた人間ドックの結果は違った。数週間後に届いた封書を開くとAAABABA…とご機嫌な検査結果が並ぶ。よしよし、いいぞ、この調子。ところが突然『E』の文字が目に飛び込んでくる。腎機能に異常あり。

は!? 要精密検査????

正直に言えば検査結果を見た瞬間、それほど深刻に受け止めていなかった。なぜなら以前目の検査で同じようにE判定が出て精密検査をした時に、加齢によるものでみんななる目の異常ですよと言われ、僕の小さなプライドがちょっぴり削られなんだかガックリしたからだ。しかしどういうわけか母親から幾度となく「あんたは腎臓が弱いから気ぃつけや」と言われ続け、夏になれば「スイカ食べや。スイカは腎臓にええんやから」と電話越しで謎の民間療法?を何度勧められただろう。母親が勧める民間療法はいったん置いておくが、長年腎臓を心配する声は無視できない。腎臓→おしっこを作る臓器?→泌尿器科? 文字にするとアホ丸出し、高校レベルの貧相な発想を頼りにとりあえずネットで見つけた泌尿器科を受診することにした。ニュースで桜の開花予想が流れる頃だった。

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